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おじさんという生き物が異世界に転生し若返って無双するキモい話  作者: 埜上 純
第一章 旅立ち編

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第6話 初遭遇

 川に沿って下り始めてから、ミズトの感覚で一時間ほど経った。

 太陽は最初見た時より高くなっているので、最初はまだ午前中だったようだ。


(なあエデンさん。今、何かを感じとったんだけど、何か分かるか? モヤモヤというか、ムカムカというか、不快な感覚なんだけど)


 ミズトは足を止めた。


【それはいくつかの可能性が考えられますが、もっとも考えられるものは、モンスターの接近を察知した可能性です】


(モンスター!? ははっ……そっか、そんな気はしたけど……)


 全身に緊張が走った。

 のどかな川のせせらぎは、もう耳に届いていない。

 ミズトは剣を強く握りしめ、不快感を覚えた方向に意識を集中した。


 どのスキルによる効果か分からなかったが、モンスターと認識した対象が、段々と近づいてきているとはっきり感じた。

 そして、小さい影が森を抜け、川岸に姿を現した。


 ====================

 フォレストゴブリン LV3

 属性:水

 ステータス

  筋力 :I

  生命力:I

  知力 :J

  精神力:J

  敏捷性:I

  器用さ:J

  成長力:J

  存在力:J

 ====================


 その影のステータスが表示される。


(うわっ、可愛くないなぁ。こういうのって最初はスライムが出てくるんじゃないの!?)


 人間の子供程度の大きさしかないゴブリンだったが、毛のない緑がかったシワシワの肌がミズトの不快感を刺激する。

 ギラギラした眼、尖った大きな耳、隙間だらけの歯。どれも気に入らない。


【この森にはスライムも生息しておりますが、あれはゴブリンの一種です。なお、一般的な可愛いという表現に適合するモンスターはほとんど存在しません】


 訊いたつもりもないのに回答をしてきたエデンに、ミズトは少しイラっとしたが、それよりも初めて見るモンスターへの注意が上回った。

 ゴブリンまでは三十メートルほど離れている。警戒しているのか何かを探しているのか、キョロキョロと辺りを見回しているのが見えた。


「キィーーー!」


 すぐにミズトに気づくと、奇声を上げて突進してきた。モンスターというだけあって好戦的なようだ。

 何事もなく見過ごせたらいいと期待していたが、これでそうもいかなくなった。

 ゴブリンは手に持った木の棒を振り上げて走ってくる。戦うしかない。


「はあぁーーーっ!」


 唐突に訪れた戦闘に戸惑いながらも、それを振り払うようにミズトは声を張り上げた。

 剣を構えると、初めてとは思えないほど様になっている。


 ゴブリンは何のためらいもなく全力でミズトの目の前まで来ると、そのまま木の棒で殴りかかった。

 怖がる余裕すらない。ミズトは生まれて初めて自分へ向けられた殺意に対処するため、必死で肉体を動かした。


 あまり考えずに戦ったのが功を奏して身体が適切に動いた。後でエデンにそう評価された。


 ミズトはベテラン剣士のように攻撃を受け流すと、ゴブリンの胸に剣を突き刺した。


「グエェェーーー!!」


 ゴブリンが悲鳴をあげた。

 剣を持つ手に、生きた肉を裂く嫌な感覚が伝わってくる。

 吹き出る血はゴブリンの肌と同じ緑色。


 ミズトは嫌悪感に耐えられず、剣を抜き、後ろに飛んで距離をおいた。

 また襲い掛かってくるかと警戒していると、ゴブリンはその場で崩れ、数秒もすると消滅していった。


 ====================

 フォレストゴブリンを倒しました。

 あなたは経験値5を獲得しました。

 ====================


(消えた? 死ぬと肉体ごと消えるのか……?)

 ミズトは身体に付着した緑の血も消えていることに気づいた。


【はい、モンスターは魔力によって存在しているため、死亡するとその存在が保てなくなり消滅します】


(そうか、死体が残らないのはありがたい……)


 自分でも聞こえるぐらい心臓の鼓動が早くなっていた。

 全身が重く、呼吸が荒い。

 短時間の出来事だったが、極度の緊張で気力も体力もごっそり持っていかれた。


「あああ、凄い疲れるんですけどぉーー!!」

 ミズトは剣を地面に突き刺し、そのまま河原で寝転ぶと、声に出して言った。


 殴り合いの喧嘩もしたことない。格闘技をやっていたわけでもない。

 それがいきなり命懸けで戦わされたのだ。身も心もリフレッシュするまで、ちょっと動ける気がしなかった。


(なあエデンさん)


 数分が過ぎ、呼吸も心拍数も落ち着いた頃、ミズトは寝転んで空を見上げたまま頭の中で呟いた。


【はい、ミズトさん。どのような御用件でしょうか?】


(さっき、経験値5を獲得したって文字が出てたけど、ゴブリン倒したからって意味だよな?)


【その通りです。モンスターを倒すと経験値を獲得することができます】


 分かってはいたけど、ここはRPGのような世界。

 異世界というのが、宇宙のどこかにある惑星のことであろうとなかろうと、少なくとも地球ではないのだ。

 ミズトは、青空の中にうっすらと浮かぶ二つの月を見ながら、そう実感していた。

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