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おじさんという生き物が異世界に転生し若返って無双するキモい話  作者: 埜上 純
第一章 旅立ち編

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第40話 ダンジョン攻略

「うわっ?! …………………………あら?」

 魔法を受けたはずなのに、ミズトは何が起こったのか理解できなかった。


(なんともなくないか?)

 ミズトは身体のあちこちを確認するが、とくに怪我もなく変化はないようだ。


【アークデーモンが使用した魔法は精神攻撃魔法になります。ミズトさんは精神攻撃無効のスキルがありますので、とくに何も起きません】


(そうなのか? そりゃ助かったが、なんだか敵なのに申し訳ないな)

 魔法が効かず戸惑(とまど)っているアークデーモンに、ミズトは少し同情した。


 しかし、すぐに頭を切り替え、

「いただきっ!」

 と剣をアークデーモンに突き刺した。


「っっっっっっっ!?」

 アークデーモンは苦悶の声のような音を発した。


「何だかよく分からないけど、後は任せて!!」

 セシルはそう言って魔法を唱え始めた。


 ミズトは剣を抜き、すぐに離れる。

 アークデーモンは深手を負い、その場に立ち尽くしている。


「アイスインフェルノ!!」


 セシルが魔法を唱えると、冷気の柱がアークデーモンを閉じ込めた。

 セシルの魔力が一瞬で底をつくほどに減った。それほど強力な魔法のようだ。

 魔法範囲外にいるはずのミズトまで、その凍てつく冷気を感じる。


「っっっっっっっ!!」

 柱の中でアークデーモンが断末魔をあげているようだ。


 ====================

 アークデーモン達を倒しました。

 あなたは経験値619,655を獲得しました。

 ====================

 ====================

 ◆クエスト完了◆

 報酬が支給されます。

 クエスト名:初めてのダンジョン攻略

 報酬:経験値10

    金10G

 ====================


「倒しました! セシルさん、やりました!」

 ミズトはログを確認しセシルに向くと、ちょうど彼女が飛びついてきた。


「え!?」


「ミズト、あなたのおかげよ。助かったわ!」

 セシルはミズトを強く抱きしめ、感謝を述べた。


「そ、それは……良かったです……」

 ミズトは無害をアピールするように、両手を上げてどうしていいか分からない状態だった。


【抱きしめ返さないのですか? ミズトさん、なぜあなたが独身だったか分析できました】


(チッ、いいよ、そんなの分析しないで……)

 ミズトはエデンに強く言い返せなかった。


 それから、現れた宝箱に気づくと、セシルはミズトから離れ、ゆっくりと近づいて行った。


「やっとだわ……これをどれほど…………」


 セシルは宝箱から弓を取り出し、大事そうに抱きしめた。


 ====================

 アイテム名:女神の銀弓

 カテゴリ:武器(装備LV65)

 ランク:5

 品質 :高品質

 効果 :攻撃力上昇

     攻撃速度上昇

     命中率上昇

     放つ矢が全て聖銀武器と同様の効果

 ====================

 ====================

 ◆限定クエスト完了◆

 報酬が支給されます。

 クエスト名:セシルへ協力

 報酬:経験値100

    金10G

 ====================


(限定クエストが完了したか。どうやらあれが目的だったみたいだな。それにしても女神の銀弓(ぎんきゅう)って、まさかあの女神の熱狂的な信者なんて言わないよな……)


 ミズトはこれほどまでに彼女が欲しがっていた理由を少し気にはなったが、セシルの嬉しそうな笑顔を見ていると、それ以上はどうでもよくなり、自分まで胸が熱くなるのを感じていた。




 ダンジョンは攻略すると脱出用の魔法陣が出現するようで、ミズトとセシルは『帰還の指輪』を使わずにエンディルヴァンド地下洞窟の入り口まで転送された。


「ミズト、あなたがいて、良かったわ」

 セシルが笑顔で言った。


 陽の光がちょうどセシルの髪に当たり、彼女の長い金髪を一層輝かせていた。ミズトには、その美しさが現実離れして幻想的に見えた。


「いえ……少しでもお役に立てたのなら光栄です」


「最後まで、必要以上に謙虚なのね。まあいいわ。それも、あなたの個性ね」

 セシルはミズトに歩み寄ってきた。


「はは……国民性なのかもしれません…………?!」


 突然、セシルがミズトの頬に触れ、

「ミズト、本当にありがとう。またね」

 と、もう一度笑顔を見せながら、余ったポーションを返してきた。

 そして、いつものように素早い身のこなしで去っていった。


「…………」

(キスされるのかと思った……)

 ミズトはポーションを受け取ったまま、金縛りにでもあったように固まっている。


【あれはミズトさんからキスするシーンなのではないでしょうか?】


(するか!! ったく、彼女だって俺が十六歳の子供だと思って接してるんだろうよ!)


【そうでしょうか?】


(そりゃそうだろ! やっぱ、見た目が十六歳で中身アラフィフとか気持ち悪いな……。間違えて俺に恋心を抱く子とか出てきたら、どうすればいいんだ!?)


【開き直ればいいのではないでしょうか?】


(直れるか!! そんなの詐欺みたいなもんだろ。(だま)すみたいで耐えられんわ。ってかエデンさん、俺の事からかってないか?)


【そんなことはありません。わたしは常にミズトさんの利になる提案を致しております】


(…………どうだかな)


 今さらながら、ミズトは若返ったことを少し後悔していた。身体が身軽に動くのは嬉しいのだが、若者扱いされるのはどうも違和感があるのだ。

 そんなことを考えていると、先ほどまで抱いていた達成感は消え去り、なんだかモヤモヤした気持ちのまま、一人でドゥーラの町への帰路についた。

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