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おじさんという生き物が異世界に転生し若返って無双するキモい話  作者: 埜上 純
第七章 千年王国交差編

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第234話 生じる責任

 それから、ミズトとウィルの乗る馬車を先頭にして、『トゥルガイ』の騎馬隊が列を作った。

 馬車はミズトの指示で進み、起伏のある地で止まった。


「あちらの岩陰あたりに、大勢の盗賊がいます。捕まった子供のような人たちもいるようです」


 ミズトは止まった位置からは視認できない部分を指して言った。

 百人以上の悪意ある集団がいるようだ。


「そうか、まさかトゥル・エル湖跡にアジトを構えていたとはな」

 ケイリアスがミズトに答えた。


 ミズトたちが辿り着いたのは、かつてトゥル・エル湖と呼ばれる湖があった場所。

 今は水が枯れ、広大な平地には珍しい起伏の大きい土地でしかなかった。


「案内、感謝する、ミズトよ。あとは我々『トゥルガイ』の問題だ。おぬしたちは関わる必要のない戦いだ」


「待て、ケイリアス。相手が盗賊団とはいえ、全員殺すつもりなのか?」

 ウィルがケイリアスに訊いた。


「当然だ。向こうも我々を殺すつもりで戦うだろう。こちらもそうしない理由はない」


 その通りだ。

 相手に殺意がある限り、手加減をする必要はない。

 ミズトのいた日本でさえ、正当防衛という言葉があるのだ。

 しかし、ウィルの考えは違ったようだ。


「ケイリアス、先ほど言ったように、お前たちを非難するつもりも否定するつもりもない。だが、俺も好きなようにやらせてもらおう。俺の目の前で、お前たちや捕まった子供はもちろん、盗賊を殺すことも俺は許容せん」


「…………好きにするんだな。だが、こちらも先ほど言ったように、邪魔だけはするな」


「ああ、子供の救出の邪魔だけはせん。――――借りるぞ!!」

 ウィルはそう言って、突然目の前の馬に飛び乗って、駆けだした。


「ウィル!?」


 突然の出来事に、誰もが反応が遅れた。

 しかし、元王国騎士だけあってか、ウィルはその間に馬を巧みに操作し、あっという間に盗賊団のアジトに近づいていく。


「く、くそっ! あれほど邪魔だけはするなと! 皆の者、追えぇ!!」

 ケイリアスの合図と共に、『トゥルガイ』の男たちは馬に乗りウィルの後を追った。


「クゥゥゥン」

 一人取り残される形になったミズトに、クロが憐れむような声を出して見上げた。


(…………)


【ご心配には及びません。今のウィルさんは、世界で八人しかいない『到達者』です】

 エデンがミズトの心を読んだかのように告げた。


(いや、心配してるわけじゃないが……)


【ご覧ください、決着まで約三十秒です】


(?)


 エデンがそう言って間もなく、ウィルたちに気づいた盗賊団が現れた。

 ウィルはそのまま盗賊団に向かって駆け続けると、


「はぁっ!!」

 と気合を込めた声をあげた。


 すると、空気が震え、物理的な衝撃波でも走ったかのように、盗賊たちはその場でバタバタと倒れていった。


(………………どゆこと?)


 戦士系のウィルが、スタンやパラライズの魔法を使ったとは思えない。

 実際、魔力を一つも感じなかった。


【今のは戦士系スキル『威圧』を使用しました。『威圧』は、強力なモンスター相手に使用すると、敵意を自分へ向けることができ、弱いモンスター相手の場合は、恐怖で動けなくさせることができます。『到達者』であるウィルさんが使用したため、すべての盗賊が恐怖で動けなくなり無力化しました】


(すべてって……)

 ミズトは、動けそうな気配のある盗賊が、一人も残っていないことを確認した。


「どうだ、ケイリアスよ! これでも戦う必要あると言うのか?!」

 ウィルが声を上げた。


「…………」

 ケイリアスは黙ったままウィルに馬を寄せ、周囲を確認する。


 他の『トゥルガイ』の男たちも、倒れている盗賊の様子を見ながら、辺りをゆっくりと回りだす。


「族長、動ける奴は、一人もいないようです……」

 少しすると、一人の『トゥルガイ』がケイリアスへそう報告した。


「ウィルよ、これはすべておぬしの仕業か?」


「ああ、そういうことだ」


 ケイリアスは一瞬だけ呆然とすると、

「くっくっく…………はっはっは……あーはははははっ!! 想像以上に愉快な奴だ!! まさかこれほどのものとはな!! おぬしの勝ちだ、ウィルよ!! こいつらは殺さず、全員連邦にでも引き渡そう!!」


「そうか、すまんな」

 ウィルが答えると、二人は握手を交わした。


 それから盗賊たちを全員拘束し、盗賊団の持っていた馬車に詰め込んで、『トゥルガイ』の何人かが彼らを連行した。

 連れ去られた子供も、他の民族やどこかの村からさらわれてきた子供と一緒に、無事救出された。


 そして、ミズトたちはケイリアスたちと一緒に一度集落に戻ると、改めて感謝を受けた。

「ウィルよ、ミズトよ。二人には世話になってしまったな」

 ケイリアスは二人に言った。


「何を言ってるんだ、最初に言っただろ? 俺たちは冒険者だ。困っている人々を助けるのが仕事だとな!」

 ウィルが笑顔で答えた。


「はは、そうだったな! 力とは、何かを守るためにあるものだ。私の力は『トゥルガイ』を守るためにある。おぬしたちほどの力があれば、きっと様々な人たちを助け、もっと大きなものを守ることができるのだろうな!」


「ああ、俺たちも、そうであってほしいと思ってる! そのための力だからな!」


「それを聞けて安心したぞ。世の中には、何かを守るためではなく、何かを奪うために力を使う者がいる。もっと許されんことに、持っている力を使わない者さえいる。おぬしたちほどの力を持った者が、そうでないことに感謝する!」

 『トゥルガイ』の族長ケイリアスは笑顔で言った。


 そんな二人を見ていたミズトは、ウィルとケイリアスが抱く信念は、決して間違いではないと感じていた。


 しかし、力を持つことは、その大きさに比例して相応の責任が生じることも理解していた。ミズトの持つ過大な力は、それを行使しないことも、ある意味責任を果たしているのではないのか、と考えていた。

 ただ、それが単なる逃げなのか、それとも賢明な自制なのか、ミズトの中で答えはまだ出そうになかった。

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― 新着の感想 ―
捕まえて引き渡したところで死刑になりそうですがね(余罪を調べるためには必要)。ウィルはそこの所、どう考えているのでしょうね? 力の責任……今分かっている情勢だけだと世界騎士とか言う私情バリバリな正義マ…
おっさんなのに精神が子供だったミズトに変化が…。 部族名はモンゴル語のトルゴイ(頭)から来てるのかな。
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