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おじさんという生き物が異世界に転生し若返って無双するキモい話  作者: 埜上 純
第七章 千年王国交差編

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第232話 風詠みの巫女

 宴に出された食事は穀物や野菜を素材とした料理が中心で、ミズトの想像を裏切り美味しいものだった。

 お酒を断り、代わりに出された果実水も、ミズトの予想の上をいっている。


 どれも素材を生かしたものばかりで、逆に都会では味わえない感動をミズトに与えていた。

 ミズトはゴーレムにこれを覚えさせられないものかと思いながら、宴の様子を見ていた。


 一方ウィルは、族長のケイリアスと意気投合したようだ。

 年齢も、本来のレベルも近い二人。元王国騎士の隊長なら、立場も近いと言っていいだろう。


 責任感も正義感も強い二人は、打ち解け合うのに、時間は必要なかった。

 無二の親友のように、楽しそうに語り合っている。

 他の者たちも、宴というだけあって楽しそうに酒を飲み、語り合っている。


 そして、有難いことにミズトは誰にも話しかけられず、ここまで一人静かに食事をすることができていた。

 しかし、その平穏に一人の少女が割り込んできた。


「あなたはどうしたいのですか?」

 喧騒が突然遠のき、少女の周りだけ風が止まったかのような静寂が訪れた。


「…………はい?」

 あまりにも唐突な質問に、ミズトは幼稚な声を出してしまった。


 話しかけてきたのは、十歳ぐらいの少女だ。

 服装は、他の者たちと同系統の装飾をされているが、白を多く使っているせいか、少し格式が高い印象を受ける。


 ====================

 メイリン LV4

 種族 :人間

 加護 :風の精霊

 クラス:風詠みの巫女(熟練度8)

 ステータス

  筋力 :J

  生命力:I

  知力 :H(+C)

  精神力:H(+C)

  敏捷性:J

  器用さ:I

  成長力:E

  存在力:C

 ====================


風詠かぜよみの……巫女みこ?)


「えっと……お嬢さん、こんにちは」

 ミズトは少女に愛想笑いを浮かべた。


「あなたは、この新しい自分の物語を、どうしたいのですか?」

 少女は、幼さを感じさせない表情で、再び質問をした。


「自分の物語を……どうしたいのですか……?」

 ミズトは口にした単語に、一瞬胸が疼いた気がした。


「あなたの紡ぐ物語は、きっと世界の人々を幸せにし、あなた自身も幸せにするでしょう。どうかそれを、お忘れなく」

 質問を繰り返すことしかできないミズトを無視して、少女は深く頭を下げた。


「巫女から話しかけるとは珍しいな。おぬしは余程の運命を持った人物なのだろう」

 族長ケイリアスがウィルを連れてやってきた。


「よ、ミズト! 思ったより飯も酒も旨いとこのようだな!」


(酒は飲んでねえから)

「えっと……あれ……?」

 気づくと、少女の姿がなかった。


「はは、今のは風詠かぜよみの巫女。風の精霊の声を聞き、我ら民族の進むべき道を導く巫女だ。それにしても、我ら民族以外に関する声でも聞こえたのか。まさか巫女から話しかけることがあるとはな」

 ケイリアスは、キョロキョロと周囲を見回すミズトに言った。


「ま、ミズトだからな! 大きな運命を持っているのは間違いないだろう! はははははっ!!」

 だいぶ酒が入っているのか、ウィルはいつもより上機嫌だ。


 別に、巫女に話しかけられたといっても、内容が抽象的すぎて会話としては成立していない。

 如何様にも受け止められる言葉を言われ、助言になるのかは解釈次第なのではないかと感じていた。

 ミズトは何を言われたか酔った二人から色々聞かれたが、適当に誤魔化しながら、残りの宴の時間を過ごしていた。


 それから、宴が終わりに近づいたころ、『トゥルガイ』の一人と思われる男が、慌ててケイリアスの元にやってきた。

「族長、たいへんです! リースんとこの子供が『ザルカン』の奴らに連れ去られました!」


「なんだと!! 奴らめ、まだ懲りずにこのエリアにいたか……。よし、馬を集めろ! すぐに出るぞ!!」


「待て、ケイリアス! 今の話、子供が連れ去られたとはどういうことだ!? ザルカンとは何だ!?」

 立ち去ろうとするケイリアスを、ウィルが引き止めて聞いた。


「聞いての通りだ、ウィルよ。リースの子供が『ザルカン』の奴らにさらわれたようだ。『ザルカン』とは、この辺を根城にしている盗賊団だ」


「盗賊団!?」


「時間がない。話は後だ」


「待て! そういうことなら俺たちも行くぞ! 連れて行ってくれ!」

 ウィルは再びケイリアスを引き止めた。


「……申し出は有難いが、これは我ら『トゥルガイ』の問題だ。自分たちの問題は自分たちで解決してみせる。ここで他人の手を借りるようでは、『トゥルガイ』は生き抜くことはできないのでな」


「ダメだ! 俺らも行くぞ! もうお前たち『トゥルガイ』は友人だ! ここで見過ごすなんて、俺たちにできるわけないだろう!!」


(俺たちね……)


 ウィルとケイリアスは、まるで今から戦いだすのかと思うほど、真剣な目で睨みあっていた。

 しかしそれは数秒ほどで終わると、ケイリアスが先に目を逸らした。


「時間がないと言っただろう。好きにするがいい……。ただし、邪魔だけはするな」


「もちろんだ! 行くぞ、ミズト!」

 先ほどまでの緩んだ表情はウィルから消えている。


 ミズトとウィルはすぐに馬車に戻ると、『トゥルガイ』の騎馬隊に続いた。

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