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おじさんという生き物が異世界に転生し若返って無双するキモい話  作者: 埜上 純
第七章 千年王国交差編

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第227話 仕掛けられた盤上

 雲一つない青空が広がっている。

 城のように大きな建物のテラスで、世界最強の騎士アレクサンダー・ストームハートは無表情のまま眼下を見下ろしていた。

 視線の先には、若者たちが訓練に励む姿がある。


「アレクサンダー様。『洗礼の儀』に、例の冒険者が同行する情報が届きました」

 彼に話しかけたのは、同じ蒼い鎧を装備した女性騎士だった。


「そうか」


「はい。異界人いかいびとのA級冒険者が神楽のように秩序を乱す存在か、これで直接判断できるというものです。それからB級冒険者に昇格した『閃光の天使』についても、うまくハイデルンに誘導できたようです」


「神楽以外の懸念材料が二つ揃うか。神楽と合流する前に、場合によっては処理しておけばよいだろう」


「は、仰せの通りに。して、日本卍会についてはいかがいたしましょう?」

 女性騎士は胸に手を充てながら頭を下げた。


「あれは異界人いかいびと同士の潰しあいに丁度良い存在だ。放っておけ」


「承知いたしました」

 女性騎士は、さらに深く頭を下げると、テラスから去っていった。


「エサは撒いた。さて、何が釣れるか楽しみだ」

 アレクサンダーは誰もいないテラスで、そう呟いた。



   *



「八人目の到達者なんてどうでもいい! それより世界騎士団だ! やつらが来るならカズキの行方が分かるかもしれねえ! ヒロさん! 行こうぜ!!」

 旧エルドー王国の王城内にある議会室で、一番身体の大きなコウダイ・イワミが声を荒げた。


 議会室内には『神楽』のクランマスターであるヒロ・ヤマガミを含め、六人の幹部が揃っていた。

 話題は千年王国ハイデルンで行われる『洗礼の儀』についてだ。


「コウダイさん、発言はもう少しお待ちください」

 有能な女性秘書のような雰囲気のミオ・シライが、コウダイを制止するように言った。


「なんだミオ、てめえはカズキの捜索に反対なんかよ!」


「そうは言ってません。カズキさんは我ら『神楽』を支える四団長の一人。クラン創設からいらっしゃる大事な仲間です。何としても見つけ出さねばなりません」


「ならよお」


「そこまでにするんだ、コウダイ」


 コウダイの言葉を止めたのは、底の知れない痩せた男ヤスノリ・クロカワだった。

 エリートサラリーマンのような知的な雰囲気を持っていたが、他者を刺すような冷たい視線は、善人には程遠い印象を誰もが受ける。


「ヤ、ヤスさん……」


「ミオさんは捜索しないと言っているのではない。話を最後まで聞けと言っているのだ。さあミオさん、続きをどうぞ」


「え、ええ……そうですね」

 ミオは仲間であるはずのヤスノリの奇妙な笑顔にゾっとしながら、話を続けた。

「その『洗礼の儀』についてですが、執り行うのは世界騎士ロードであるアレクサンダーで、他の世界騎士もほぼ全員ハイデルンに揃うようです。また、同時に世界騎士団主催の武闘大会も開催されることで、かなりの人々が千年王国ハイデルンへ集まってくると思われます。紅蓮騎士団と聖銀騎士団はさすがに来ないでしょうが、賢者クローイは例の彼女を連れて来る可能性は高いでしょう。なお、八人目の到達者は冒険者であること以外、何も公表されていません。以上が諜報部隊による報告内容になります」


「アレクサンダーも来やがるのか……どうすんだ、ヒロさん?」


 発言のタイミングを計っていたコウダイが、先ほどよりも低いトーンで言った。

 他の幹部も、発言を待つようにヒロに視線を集めた。


「……これほど捜索してもカズキの行方を、手がかり一つ掴めない。そろそろ世界騎士団と接触するほかあるまい。それにアレクサンダーが珍しく出てくるのだ。俺との差がどれほどのものか、直接試すいい機会だろう」


「ヒロさん!? それは危険です!!」

 ミオが思わず声を上げた。


「大丈夫だ。こちらには奴らの知らないイベントアイテムがいくつもある。いざとなればどうとでもなるはずだ」


「しかし……」


「そう心配するな、ミオ。俺には『神楽』を立ち上げた責任がある。無謀なことはしないさ」


「ヒロさん……」

 ミオは優しいヒロの笑顔に、顔を赤らめた。


「ヒロさん、じゃあ!」


「ああ、コウダイの言う通り『洗礼の儀』が行われる千年王国ハイデルンに、我々『神楽』も向かう。八人目の到達者の顔も拝んでおくのも悪くないだろう」


「よっしゃ、久しぶりの遠征だ! 腕が鳴るぜぇ!!」

 コウダイは左掌に右拳を叩きつけた。


「コウダイさん、まだあなたがメンバーと決まったわけではありません」


「ちょっ……ちょっと待ってくれよ、ミオ」

 ミオの発言にコウダイは怯んだ。


「心配するな、コウダイ。世界騎士団との衝突もありえる。『神楽』の全戦力で向かうぞ」


「だよな! そうこなくっちゃよ!!」

 議会室にコウダイの大きな笑い声が響いた。

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