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おじさんという生き物が異世界に転生し若返って無双するキモい話  作者: 埜上 純
第六章 ロストダンジョン編

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第215話 シュンタ・ナカガワという日本人

(エデンさん、三人の首輪を切れるか?)


【もちろんです。ただちに三人を解放いたします】


 エデンはそう答えると、何をしたか分からないが三人の首輪が外れた。


「おい! 何やってんだ、コラァ!!」

 ケンスケが怒鳴りながら近づいてくる。


(…………)

「クロ、悪いが彼らを守ってやってくれ」

 ミズトは自分でも驚くほど冷静にクロへ指示した。


「ワン!」

 クロはシュンタたちに寄り添うように近づくと、半透明の防御壁で三人を包んだ。


「ぁっ…………」

 三人の震えが止まった。

 弱々しかったはずの気配も、ミズトには少し強くなったように感じる。


(…………?)


【クロが展開する防御壁は、気持ちを落ち着かせ、精神的な傷を癒す効果もあります】

 エデンがミズトの疑問に答えた。


「そうか、クロ、お前がいてくれて助かった」

 ミズトは笑顔でクロを撫でてから、立ち上がってケンスケたちに向き直った。

 すでに表情からは感情が消えている。


「てめえ、さっきのガキじゃねえか! こんなとこで何してやがる!!」


「なぜこの方々をこのような目に遭わせるのでしょうか?」

 ミズトはケンスケたちに近づきながら言った。


「あ? てめえに質問する権利なんかねえ!」


「もう一度伺います。なぜ彼らにこんなことをされたのでしょうか?」

 血が逆流しそうなほどの感情を抑え、ミズトは無意識にケンスケを睨みつけながら言った。


「?! そ、そりゃあうちのクランに敵対したらどうなるか、見せしめにするためだ! 文句あんのか、コラァ!!」


「見せしめですか……ありがとうございます、よく分かりました」

(エデンさん……加減はするつもりだが、致命傷にならないよう調整を頼む)

 ミズトは持っている杖をマジックバッグに入れた。


【承知いたしました。調整はお任せください】

 エデンはミズトの意図を理解して答えた。


「ああ? てめえ、何武器をしまってんだ!? 頭イカれたのか?!」


「頭がイカれそうなのを必死で抑えているところです」

 ミズトはケンスケの目の前まで来て立ち止まった。


「はあ? 何言ってるか分かんねえが、態度が気に入らねえな! 舎弟にしろとジンさんには言われたが、その前にお仕置きをしといた方が良さそう――――ぐはぁっ?!!」


 ミズトはケンスケの言葉が終わる前に、腹部へ拳を叩き込んだ。

「なるほど、たしかに皆さんに必要なのはお仕置きのようです」


 バタンと、ケンスケは血反吐を吐きながら倒れた。

 意識はあるがあまりの痛みと苦しみに、パラライズの魔法を喰らったようにピクピクと地面で悶えている。

「かっ……!? かっ……!?」


 ミズトの拳が当たった場所だけ発動した小さなマジックシールドがなければ、内臓が破裂し死ぬところだった。

 エデンが抜群の調整を見せていた。


「て、てめえ! ケンスケさんに何してんだ! 殺すぞっ!!」

 様子を見ていた日本卍会の残りメンバーが武器を構えた。

 セーフティエリア入り口で会った、坊主頭とパンチパーマの二人もいる。


「…………」

 ミズトは黙ったまま無防備に一人へ近づくと、顔面を裏拳ではたいた。


「ぶぅへっ!??」

 マジックシールドで守られた日本卍会のメンバーは、首が吹き飛ぶこともなく顔が曲がるだけで済んだ。


「や、やっちまえー!!」

 他のメンバーも一斉にミズトへ飛び掛かった。


 ミズトは相手の攻撃が届く前に、一人一発ずつ殴りつける。

 最初の攻撃から一分後には、全員が地面で苦しみながら動けなくなっていた。


(エデンさん、ナイス調整だ)

 攻撃すべてにマジックシールドが発動していたと分かっているミズトは、エデンに感謝した。


「ミ……ミズト君……」

 背後からシュンタの声が聞こえた。


 ミズトは振り向くと、先ほどに比べると生気が少し戻ったシュンタの顔が目に入った。

 他の二人も、まっすぐとミズトを見ている。


「ナカガワさん……お久しぶりです……」

(くそ……俺は何を言ってるんだ……)

 気の利いた言葉のでない自分にイラついた。


「こんな形でミズト君と再会するとはね……」


「来るのが遅れて申し訳ありません」


「いや、そんなことないよ。それに、これはクロの能力かい? この結界みたいな中にいるだけで、なんだか癒されてる気がする。ステータスが見えないから、ただの子犬かと思ったのに」


「クゥゥゥン」

 シュンタがクロを撫でると、クロは周囲を癒すような声を出す。


(ステータスが見えない?)


【はい、クロは異界人いかいびとの方々でもステータスを表示できません】

 他の異界人いかいびとがブラックフェンリルを見ても反応が薄いと思っていたが、急に合点がいった。


「クロに、こんな能力があったことは、私もたった今知ったところです」


「そっか……。何にしても、来てくれて嬉しかったよ。ここを見つけたのはただの偶然かもしれないけど、ミズト君が俺たちのために怒って戦ってくれるとは思わなかった」

 シュンタは倒れているケンスケたちを見た。


「いえ……当然のことをしただけで……」

 ミズトはシュンタたちのために戦ったというより、ただ感情のままに戦っただけなので、少し申し訳ない気持ちになっていた。


「君がこんなに強いのはさすがに驚いた。でも……ここまでだ。ミズト君、今のうちに逃げるんだ。いくら君でもジンには勝てない」


「いえ、皆さんを連れて帰ります。一緒に帰りましょう」

 どう考えても、このまま置いていく気にはなれない。


「ダメだ。俺たちはこんな状態で動けない。だから、ミズト君だけでも逃げるんだ。さあ、ジンに見つかる前に!」

 シュンタの目は真剣だった。


 ミズトの身を案じて、自分が助かることよりミズトを逃がすことを優先する。

 もし捕まったら、どれほどのことをされるか理解しているからこそ、シュンタはそんな提案をしているのだろうと、ミズトは感じた。


 シュンタは普通の日本人のはずだ。

 普通の日本人なら、同じ普通の日本人であるミズトと同じような行動をとるはず。

 しかし、シュンタの行動はどうだろう。ミズトと同じだろうか。

 ミズトは胸の奥の何かが痛んだ。


「おい、コラ! これはどういうことだ! ゴミチビ、何をやりやがった!!」

 テント内の騒動に気づいたのか、ジンが入ってきた。


「ジ、ジンだ……。ミズト君、逃げるんだ!」


 シュンタはそう言いながら、這ってクロの防御壁から出ようとしている。

 ミズトを逃がすために、ジンに飛び掛かるつもりなんじゃないかとミズトは感じた。


「ナカガワさん、ありがとうございます。でも大丈夫です。ここは、私に任せてください」

 ミズトはシュンタを止めると、優しい声で言った。


「で、でも……」

 シュンタは言い返そうとしたが、ミズトの言葉に説得力を感じたのか、それ以上は言わなかった。

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― 新着の感想 ―
キター。楽しみ。頼むぜ!!
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