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おじさんという生き物が異世界に転生し若返って無双するキモい話  作者: 埜上 純
第六章 ロストダンジョン編

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第205話 忌み嫌われし者たち

「ま…………ま……ぞく……!?」

 地下三階へ降りてウィルたちを待っていると、地下二階から大勢の集団が降りてきた。

 その姿を見た『裂空の槍』のメンバーは絶句した。


 肌はどす黒く、おでこの辺りから湾曲した二本の角が伸びている。

 瞳は赤く、尖った耳と牙も特徴的だ。

 ステータス画面の種族の欄には『魔族』と表記されている。


(なあ、エデンさん。あれが魔族か?)


【はい、ステータスに表記されている通り、世界中から忌み嫌われ、呪われた種族として長きに渡って人間たちと争ってきた、魔族です】


(なるほど)


 ミズトは『裂空の槍』のメンバーを見回した。

 皆、恐怖に震え、腰を抜かしたように動けなくなっている。どんなモンスターよりも、彼らにとっては恐怖の対象なのだろうと感じた。

 そんな彼らを何とか促し、ミズトたちは魔族に気づかれる前に物陰に隠れた。

 こういう時、ただの犬ではないクロは物分かり良く従う。


 降りてきた魔族は、全部で五十人ほど。

 レベルは高い者で78、低い者でも30台前半だ。

 普通の冒険者が遭遇したら、どうにかできるような相手ではなかった。


「ミ……ミ……ミズト様……」

 犬の獣人オレステがミズトにしがみついてきた。

 当然ミズトは不快に思ったが、さすがに振り払うようなことはしなかった。


「だ、大丈夫だ。俺たちにはミズトさんが付いている」

「そ、そうよ。なにせA級冒険者なんだから」

 デイヴとブレンダが声を掛け、六人は寄り添うようにミズトの周りに固まってきた。


「いざとなったら、あ、あたいの盾があるわ」

「オラだって皆を守るぞぉ」

「わ、私の弓も忘れないで」

 声を震わせながらも、必死でお互いを励まし合っている六人を見て、ミズトはなんとなく微笑ましい気分になった。


「申し訳ございません、ヘルラフ様。奴らを見失いました」

 魔族たちの話し声が聞こえてきた。


「まあいい。どうせ奴らの目的は、最下層にあるあれだ」


「やはり、奴らはあれを起動する気でしょうか」


「だろうな。あれが起動し帝国に大きな被害が出たところで、我ら魔王軍には関係ない事だが、やってもいないことを魔王軍のせいにされるのは気に食わん。起動する前に、奴ら全員を根絶やしにするぞ」


「はっ!!」


 魔族の集団は、ミズトたちに気づくこともなく、そのまま『グレイガント大回廊』地下三階の奥へと進んで行った。


「…………」


 『魔王軍』という言葉を聞いてから、『裂空の槍』のメンバーは何一つ言葉を発しなくなっていた。

 魔王軍が去って十分は経つが、呼吸をしてないんじゃないかと思うぐらい身動き一つしていない。

 ただ遭遇しただけで、精神魔法に侵されたようだった。


 しかし、ミズトは何とも感じていなかった。

 もちろん能力的にミズトが警戒するような相手は、この世界に存在しないのだが、そういうことではない。


 そもそもミズトが魔王軍の接近に気づかなかったのは、彼らから強い悪意を感じなかったからだ。

 さすがに善人とは言わないまでも、今までミズトが出会った悪人に比べれば、悪意は遥かに小さい。

 ミズトから見れば、気性の荒い冒険者程度でしかなかった。


 だいたいミズトは、迷惑を掛けられたり、自分へ敵意を向けられたりしなければ、何一つ興味はない。

 『魔族』という種族名には少し驚いたが、すでにどうでもよくなっていた。


「さ、さすがミズトさん……。魔王軍と会ったというのに……落ち着いていますね……」

 デイヴがミズトへの敬意を、なんとか言葉にした。


「いえ、初めて会ったので少し驚きました。見た目はモンスターっぽいところもありますが、そんなに怖くはなかったですね」

 角や牙が生えている獣人だっているので、ミズトには特別な存在には見えなかった。


「怖くない……!? ははは……さすが過ぎて言うことが……」

 デイヴはぺたんと座り込んでしまった。


「よ! ミズト! 先越されたみたいだな!」

 その場の空気を壊すように、ウィル率いる『幻影の方舟はこぶね』のパーティが追いついてきた。


「ウィルさん、お疲れ様です。思ったより差がつかなかったようですね」

 連携力の上がった『裂空の槍』を見ていたミズトは、それが本音だった。


「ミズトって人! 俺たち『転移者』を舐めないでもらえるかな? たしかに『転生者』でレベルを50まで上げたのは凄いと思うけど、こっちはステータスも高くて、天使の加護持ちなんだ! そのうちあんたも追い抜くぜ!」

 反応したのは『幻影の方舟はこぶね』の一人だった。

 『グレイガント大回廊』の入口で怖気づいていた様子は消え、随分と強気になっていた。


「まあまあ、同じ異界人いかいびと同士なんだし、仲良くやろうぜ! ミズトだって悪気があって言ったわけじゃないんだしな!」


「はい……ウィルさんがそう言うなら……」

 その異界人いかいびとは、肩に手を置いてきたウィルに答えた。


(あれ?)

 ミズトは、その異界人いかいびとの態度以外にも変化に気づいた。


 異界人いかいびとに接するウィルからぎこちなさが消え、本当に親しみを込めて話しているように見えた。

 さらに異界人いかいびとである『幻影の方舟はこぶね』メンバーからは、ウィルに対して敬意のようなものを感じる。

 この数日で、しっかりと絆を築いたようだった。


【さすがウィルさんです】


(エデンさん……俺は何も言ってないが……?)


【安心してください。ミズトさんも負けていません】


(だから何も言ってないって……)

 ミズトにとって、魔王軍なんかよりよほどエデンの方が疲れるのであった。

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