第203話 若者たちのいざこざ
その日の夜、セーフティエリアで『裂空の槍』と離れて休憩していたミズトの元に、ブレンダとマルタがやってきた。
「ミズトさん、少しお話を聞いてもらっていいでしょうか?」
(なんかめんどくさい雰囲気だな……)
「ブレンダさん、マルタさん、いかがされました?」
「フェリシーについてです」
(げっ……まじか……)
「どうぞ、座ってください」
ミズトは二人に向きなおると、座るよう勧めた。
「あの子、たしかにパーティ内では一番能力が高いかもしれません。でも、うちらを見下すのは違うと思うんです!」
「あたいなんて、話しかけても無視されたんっす!」
ブレンダとマルタが交互に話す。
(知るか)
「それはまた、よろしくない態度かもしれませんね」
ミズトは顔をゆっくりと上下に振りながら答えた。
「ミズトさんもそう思いますよね! うちらから気を遣って歩み寄ろうとしてるのに、まったく打ち解ける素振りも見せないんです!」
「あたいが話しても、『ああ』『ああ』って、こっち見ずに一言返すだけなんすよ!」
(だから、知ったこっちゃねえんだけど)
「せっかくお二人が気を遣っているのですから、しっかり応えていただきたいですよね」
ミズトは交互に二人を見て言った。
「別に、うちも友達になりたいわけじゃないんです! ただ、パーティであるうちは協力しようって言ってるんです!」
「あたいだって、エルフだからって喧嘩したいわけじゃないっすから!」
(めんどくせー)
「お二人ともパーティのためにおっしゃっているのですね」
ミズトは真剣な眼差しで言った。
「ミズトさんなら分かってくれると思いました!」
「さっすがミズトさんや!」
(なんなんだよ、こいつら……。愚痴を言うために来たのか?)
【ブレンダさんとマルタさんは、ミズトさんに問題解決してほしくて来られました】
(おいおい……。俺は上司ってわけじゃないんだから、そんなこと相談してくんなよ……)
ミズトにとって『裂空の槍』がどうなろうと知ったことではない。
もちろん彼女たちが危険な目に遭えば助けるが、冒険者として階級が上がろうが、仲間割れして解散しようが、ミズトには関わりのないことだった。
しかし、それを態度に出すようなことはしない。
彼女たちは悪人でもなんでもない。ミズトを頼ってきている以上、冷たく突き放すほど子供じみてはいないのだ。
ただ、上辺だけでも協力的な姿勢を見せてはいるものの、会社員の頃のように本音を抑えて親身になっているふりをするのは、とても気疲れするのだった。
ミズトは、とりあえず二人をなだめることだけに専念し、その場をなんとか凌ぐことにした。
*
三日目。『裂空の槍』の苦戦は続いた。
リーダーであるデイヴは何とか気を取り直し、パーティと協力するようになったが、エルフのフェリシーは相変わらずの個人プレイ。
一戦一戦に手間取ってしまい、なかなか進まない時間を過ごした。
そんな中、ある戦闘でトラブルが起きた。
フェリシーがモンスターを倒し切れず、一体がデイヴたちのもとに流れていってしまった。
不意を突かれた形になった五人は、連携がとれなくなり一気に瓦解した。
さらに不運は重なり、最初に遭遇したモンスターを半分も減らせていない状況で、次のモンスターの群れがやってきたのだ。
「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!?」
フェリシーが六体のモンスターに囲まれ悲鳴をあげた。
「フェリシー!?」
「逃げて、フェリシー!」
それに気づいたデイヴとブレンダが声を出すが、距離があり援護には回れず、フェリシーはモンスターの群れに襲われた。
しかし、モンスターの攻撃がフェリシーに当たる前に、魔法壁が彼女を守った。
(!? マジックシールド?!)
ミズトはそれがエデンの発動した魔法だと気づくと、ストーンバレットでその場にいる全てのモンスターを一瞬で消滅させた。
(なあ、エデンさん。もしかして彼女やばかったのか?)
【はい。フェリシーさんは致命傷になる攻撃を受けるところでした】
(やっぱりそういうことか……)
「皆さん、ちょっと集まってもらっていいでしょうか?」
ミズトは、突然モンスターが消滅し呆然としている『裂空の槍』のメンバーに声を掛けた。




