第188話 帰国したミズト
ミズトは共和国首都セルタゴを出発してから、帝都オルフェニアに到着するまで十日ほど掛けていた。
ミズトなら走れば一時間も掛からず辿り着けるのだが、せっかくなので途中にある町すべて、一晩ずつ泊まったのだ。
エデンお勧めの観光地もいくつか訪れ、とても満足した旅行になっていた。
【久しぶりの帝都の喧騒は、懐かしく感じられますね】
帝都の城門を抜けると、エデンがミズトの感想を先に言った。
(まあ……確かにな。他の町の落ち着いた雰囲気も良かったが、こういう方が慣れてるからな)
他の町をいくつも訪れたおかげで、帝都の規模の大きさが圧倒的なことを改めて確認した。
行ったことはないが、帝都の中央にあるメイン通りをまっすぐ進むと、貴族が住むエリアに突き当たる。南門や西門からそこまで歩いて二時間近く掛かるという話だ。
ここは前の世界の大都市に匹敵するような規模感と言って良さそうだった。
それからミズトは屋敷に向かった。
元々、シュンタたち『オヤジ狩り』など四つのクランが、共同で集会所として使っていた屋敷だ。
今はそこに一人で住んでおり、久しぶりの帰宅だ。
(えっと…………?)
屋敷へ向かっている途中、ミズトは帝都を歩くゴーレムを見つけた。
【あれは清掃および素材採取用のゴーレムです。アリヤンさんのお店を訪れた帰りになります】
エデンが状況を補足した。
(はは……ホントにゴーレムが勝手に出歩いてるんか……)
自分で指示したとは言え、街中をゴーレムが歩く姿には違和感があった。
しかも、周りの通行人は驚くどころか、ほとんど気にしていないように見える。
【あちらのゴーレムが歩く姿は日常の光景となっていますので、帝都の方々が驚くことはなくなりました】
(なるほど、人間の慣れってすげえな……)
人々の順応力に感心した。
帰る場所は同じなので、ミズトはその後、ゴーレムを追跡しながら屋敷へ向かった。
ゴーレムが何かやらかしはしないか気になったのだが、ただ歩行するだけのロボットのように歩き続け、途中すれ違う人々は、ほとんどそれに反応することもなかった。
屋敷に戻ると、ゴーレムは布袋を1階広間に置いてあるマジックボックスに入れた。
アリヤンから受け取った売上金なのだろうと、ミズトには分かった。
(それにしても随分と物が溢れてるな……)
ミズトは大量に置かれたアイテムを見ながら嘆いた。
ミズトが屋敷を出発した時、広間はマジックボックス以外何もなく綺麗に片づけられていた。
ミズト一人で住んでいるので、一度片付けてしまえば、ずっとそのままなのだ。
ところが今はどうだろう。
武器や防具、魔法書など、様々なアイテムが所狭しと広間に置かれていた。
【これらは全て、ゴーレムがダンジョンで手に入れた戦利品になります。マジックボックスへ入らない分を外に置いております】
(そういえば素材採取のためにダンジョンに行ってたんだっけ。素材以外も持ち帰ってきたってことか……)
【わたしの方でマジックバッグへ収納し直してよろしいでしょうか?】
(ああ、そうだな、頼む)
ミズトがそう言うと、広間に置かれたアイテムだけではなく、マジックボックス内のアイテムも、ミズトの持つマジックバッグへ移し替えられた。
(ん?)
何故かミズトの目の前に二つのアイテムだけ残っていた。
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アイテム名:正義の盾
カテゴリ:防具(装備LV65かつレアクラス以上)
ランク:5
品質 :高品質
効果 :物理防御力上昇
魔法防御力上昇
体力回復量上昇
受け流し率上昇
精神攻撃耐性上昇
状態異常耐性上昇
全属性耐性上昇
スキル『万能防御』常時発動
装備者の正義感に応じてパーティ全員の防御力上昇
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アイテム名:エナジードレインの魔法書
カテゴリ:魔法書
ランク:4
品質 :高品質
効果 :魔法『エナジードレイン』を習得
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【『正義の盾』は今回取得したアイテムの中で、最も高性能なアイテムになりますので、念のためご紹介します。『エナジードレイン』はウィザードが習得できる魔法であり、帝都内でも購入はできない魔法書のため、習得をお勧めします】
エデンが残した理由を説明した。
(ふうん、たしかに何を持っているか分からなくなってきたから、多少は把握しておくこともしないとな)
ミズトは『正義の盾』を持つと、自身の能力上昇を実感した。
しかし、自分には何の意味もないことを理解しているので、すぐにマジックバッグへ収納すると、『エナジードレイン』習得だけ行った。