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第172話 世界を救う勇者①

「んじゃ、勇者リアンの力、見せてやるぜ!」

 リアンはそう言って歩き出すと、金色の光が身体をおおった。


 光の強さと比例して、リアンの能力がぐんぐんと上昇していることにミズトは気づいた。


(なあ、エデンさん。『真の勇者』ってのは、あのまま髪まで金色に光って戦闘力が大幅にアップするみたいな感じか?)


【スキル『真の勇者』の効果は主に二つあります。一つは闇属性の相手へ攻撃する際にダメージが上乗せされます。もう一つは、人々が勇者を応援すればするほど、能力が上昇していきます。髪の色は変化しませんし、逆立ちません】


(聞いてもないこと付け足したか…………? まあいいや……それで最初に檄を飛ばすようなこと言ってたのか。リアンの性格を考えるとピッタリな能力だな)

 自分には向いてないスキルだとミズトは感じた。


 能力上昇が落ち着くと、勇者リアンは一気に堕レイヴンへ向けて駆け出した。

 堕レイヴンがそれに反応し無数の触手で攻撃を開始するが、リアンは難なく盾でかわしながら触手を薙ぎ払っていった。


「あれが……勇者の力……!?」

 その場にいる全ての人々と同じように、紅蓮騎士シェリルも勇者の力に驚愕していた。

 レベル80を越え、帝国の六傑と呼ばれる自分はもちろん、尊敬してやまない紅蓮騎士ロードのドレイクすら凌駕するかもしれない力に、畏怖と羨望をシェリルは覚えた。


「ミズト氏……あれが本物の勇者なんだね……」

 ユウマがミズトに声を掛けてきた。


「はい、まさに世界を救う勇者です」


「はは……世界を救う勇者か……。本当は僕が勇者になって、この世界を救いたいと思っていたんだ。異世界に行って勇者になって世界を救う、そんな物語に憧れてこっちへ来たけど、この世界の勇者は異世界から来た僕たちじゃなくて、この世界の人々の中にいたんだね……」


「そうみたいです。この世界を救うのは、この世界の人々ということなのだと思います」


 ミズトも、ユウマの気持ちが分からなくはなかった。

 ミズトの若い頃も、異世界ファンタジー系のアニメやゲームはいくつもあった。

 それに感化されたミズトだって、異世界に行って世界を救い、お姫様と恋に落ちる、なんてことを夢見たこともあったのだ。


「それにしてもミズト氏は、やっぱりとんでもなかったね。まさか勇者や聖女と知り合いだったなんて」


「……それはたまたまです。冒険者ギルドの合同型依頼というのがあって、そこで偶然一緒になっただけでして」


「またまた謙遜を。ここは色んな不思議な力が働く世界だから、きっとその出会いも何かあるはずだよ」


「そうでしょうか……」

(たしかに限定クエストなんかは、怪しげな何かが作用している気もするけどな)


「それだけじゃないよ。ミズト氏の能力は明らかにステータスと違っている。クランマスターの僕がクラン補正とクランスキルを駆使しても、君には及ばないみたいだ。こういうのは詮索しないのが暗黙の了解だから聞かないけど、ミズト氏は何か特別な異界人いかいびとなのは間違いないね。――――もしかしたら、あいつが探している人物こそが……」


「あいつ?」


「あ、いや、こっちの話だ。それより、余計な話をして悪かったね。今は、この世界を救う戦いに集中しよう。勇者の戦う姿なんて、そうそう見られるものじゃないだろうしさ」

 ユウマは一度笑顔を見せると、真剣な眼差しを戦いに向けた。


 その、勇者リアンは強かった。

 レベルの上限と言われているレベル99の化け物相手に、まったくひけを取ることなく、壮絶な戦いを繰り広げていた。

 レベル75で『到達者』以上の力を見せているのだ。

 あの時のミズトの戦いを彷彿させるように、無数の触手をみるみると減らし、堕レイヴンへ辿り着く。


「はあああぁぁぁぁぁーっ!!!」

 リアンは辿り着いた勢いのまま堕レイヴンに斬りかかった。


 黒い巨大な肉の塊が大きく削れた。

 すぐに堕レイヴンの肉体の再生が始まるが、させないとばかりに追撃を繰り返す。

 勇者リアンの能力は、『魔物堕ち』したレベル99の堕レイヴンを上回っていた。


(もしかして、リアンはあの化け物を解呪しようとしてるのか?)

 ミズトは、リアンがレイヴンの身体を避けて攻撃していることに気づいた。


【はい、リアンさんはミズトさんが行ったように、相手を元に戻そうとされています】


(勇者だから、魔族やモンスター相手でもなければ、無駄な殺生はしないってことかね)

 呪いを解くことが出来ると知っているリアンなら、ミズトと同じように考えることも納得ができた。

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