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第157話 シェリル対ミズト?

 ジェイクの行動は、帝国軍の騎士や戦士はもちろんのこと、冒険者でさえ唖然とさせ、皆の開いた口が塞がらなかった。

 引き留めてはいけない相手を、いつものノリで引き留めてしまったのだ。


「貴様は冒険者だったな。この私に何か用か?」

 何の感情も読み取れない目で、シェリルはジェイクを見た。


「せっかくの余興だ。どうせなら楽しんでいかねえか?」


「何を言うのかと思えば。私には興味ないことだ」


「いいじゃねえか! こっちは、天下の紅蓮騎士が冒険者に負ける姿が見てえんだよ!」

 ジェイクはそう言いながら、察して立ち去ろうとするミズトの肩を捕まえた。


(ジェイク、てめえ……)


 ミズトは思わず紅蓮騎士シェリルの方を見ると、彼女はもうミズトに視線を向けている。

 ジェイクの言いたい事が分かったようだ。

 そして彼女の向こう側に、怒りが頂点に達し顔を真っ赤にしている副隊長ポーラの姿も目に入った。


(本気にすんな! 世界三大騎士だろ! 乗せられんなよ!)

 ミズトは心の中でそう叫んだが、シェリルはその思いを裏切った。


「そっちの異界人いかいびとがA級冒険者だったな……。面白い、たまには余興が必要な場合もあるようだ」

 シェリルはミズトに向かってゆっくり歩き出した。


(は? 嘘だろ? 紅蓮騎士ってのは好戦的なのか? エデンさん、何とかならないか?)


【ミズトさんならどうとでもなりますので、気にする必要はございません】


(何言ってんの?!)

 ミズトはエデンの的外れの回答に苛立った。


「お待ちください、シェリル様」

 皆が躊躇ちゅうちょし、誰も声を挟めない状況で、誰かが紅蓮騎士シェリルを止めた。


(おっ、待ってました!)


 声の主は、冒険者ギルドのサブマスター、エルフのフェルナンだった。

「冒険者の無礼な発言はお詫びいたします。つまらない余興ですので、今夜はここまでにさせていただきたいと」

 フェルナンは頭を下げて言った。


「――――貴公は冒険者ギルドのサブマスターであり、冒険者どもの責任者だ。だが、この鎮圧部隊の隊長は私であり、全ての決定権は私にある。それは理解しているな?」


「はい……おっしゃる通りです」

 フェルナンはシェリルに再度頭を下げた。


「なら貴公は下がっていろ。私のやる余興に口を出すな」


「……失礼いたしました」

 前に出ていたフェルナンは、そう言って数歩後ろに下がった。


(おい? そんな展開ありなのか?)


 紅蓮騎士シェリルがミズトに近づいてくる。

 隣で嬉しそうにニヤニヤしているジェイクを、ミズトはぶん殴ってやろうかと思った。


 集まった人々は、ミズトのように相手の力を察知する能力はない。

 それでも存在感のある若き女性騎士の挙動を、皆が固唾を飲んで見守った。


「と言いたいところだが」

 シェリルはミズトの目の前まで来て足を止めた。

「貴様は魔法使いで私は騎士だ。とても余興になるとは思えん。貴様もそう思うだろ?」


「仰せの通りになります。私は強化魔法での支援を得意とする魔法使い。とても紅蓮騎士様のお相手役が務まるとは思いません」

 ミズトは、近くで見るシェリルはやっぱり人形のように可愛いなと思いながら答えた。


「意外と分をわきまえておるか、異界人いかいびとよ。なら良い」

 シェリルは急に興味を失ったように言うと、ミズトに背を向けて戻っていった。


(どうなることかと思ったな……)


【ミズトさん、あなたは強化魔法を一つも習得していません】


(…………)

 言うだろうと思ったミズトは、エデンの言葉を受け流した。


 それから離れていく紅蓮騎士シェリルを横目に、ふと隣を見上げると、ジェイクがいかにも悪だくみしていそうな表情をしていた。

 こいつはきっと、子供の頃からイタズラ好きだったのだろうと、想像できた。


「おい、待てよ! 逃げ――――」


 ジェイクの言葉が終わる前にミズトは彼を魔法で眠らせた。


「?」


「申し訳ございません、飲み過ぎたようです」

 一瞬足を止めたシェリルにミズトはそう言って、ジェイクの大きな身体を引きずりながら、その場を離れた。


「ふん、品のない。ポーラ、戻るぞ」

 シェリルはすぐ近くに控えていた副隊長に言った。


「はい、シェリル様!」


「それにしても、革命軍の陣地には一般人が随分混ざっているものだな。高齢者や女子供ばかりではないか。周辺の住民でも集まって来たのか?」

 シェリルは歩きながら、顔を動かさずに目線だけ動かした。


「いえ、一般人に見える者たちは、皆革命軍のメンバーになります」


「何……? そうか……」

 シェリルは何かを理解したように答えると、足早に自身のテントへ戻っていった。

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