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第148話 ユウマ・サカキ

 声に視線を向けると、青年のユウマとファシリテーターをやっていた中年男性がミズトに近づいてきた。


「はじめまして! 僕はユウマ・サカキ。このセレニア共和国に住む異界人いかいびとだ、よろしくね!」

 ユウマが笑顔で両手を広げた。


「はじめまして。私はレガントリア帝国で冒険者をやらせてもらっていますミズト・アマノです」


 ミズトが答えると、まさかとは思ったがユウマはミズトをハグした。


(こいつ……)

 ミズトは仕方なしに軽く相手の背中を叩く。


「私はウィザードのトオル・コガネイだ」


 中年男性は軽く会釈だけをした。

 中年同士で接触しないで済み、ミズトは少しホッとしながら会釈で返した。


「冒険者ギルドサブマスターの付き添いで来るなんて、ミズト氏は凄い冒険者なんだね! そのステータスでレベル50まで上げるのだって凄そうだしさ! 同じウィザードとしてトオルさんはどう思う?」

 ユウマは隣にいる中年男性に訊いた。


「ユウマ君の言うとおり転生者でレベル50とは、かなり凄いと思います、彼。レベル50でステータスEのウィザードだと、この世界の人間でも少し低いと言っていいので、活躍するのは難しいはずです」


「やっぱそうなんだ! 同じウィザードのトオルさんが言うなら間違いないね! ミズト氏の名前は世界ログでも見た覚えがあるし、転移失敗を努力で埋めてきたんだね、きっと!」

 ユウマは目を輝かせてミズトを見る。


「いえ……ただ運が良かっただけでして……」

 ユウマの名前の呼び方が気になりすぎて、ミズトは彼の言葉が入ってこなかった。


「いやー、謙遜謙遜! 日本人でも、こっちの世界じゃ謙遜はしない方がいいよ、価値観が違うからね!」


「はい、たしかにそうですね……」


「ところでミズト氏はクラン未所属なの? 転生者だってクランに所属した方が良さそうだけど。いや、転生者だからこそ所属すべきだと思うんだけどさ。なんならうちに入らない?」

 ユウマはまっすぐミズトの目を見てきた。


(こいつ、日本人のくせに目を見たまま話すとか、気持ち悪いな……)

「お誘いありがとうございます。ただ、共和国に滞在するつもりはないので、お受けするのは難しいです」


「そっか、そうだよね! ミズト氏ならランク4以上のクランも放っておかないだろうけど、帝国でやっていくなら自分で作るのもありかも。でも、もしセレニア共和国でやっていくなら、ぜひうちに来なよ! ミズト氏ならいつでも大歓迎さ!」

 ユウマは片目をつぶった。


(動きがいちいち日本人らしくない奴だな……)

 ミズトはユウマと中年男性が所属しているクラン『スマイルファミリー』がランク3であることを、ステータスで確認した。


「あ、引き留めて悪かったね! まあ鎮圧部隊はとうぶん国内に滞在するだろうし、気が変わったら声かけてね! 『スマイルファミリー』はミズト氏を待ってるから! な、みんな!!」


「ユウマが言うならもちろんさ!」

「ユウマ君が歓迎するなら私も歓迎するわ!」

「ユウマの意見なら間違いねえ!」

 ユウマが振り返ると、周りの異界人いかいびとが声をあげた。

 全員が『スマイルファミリー』所属のところを見ると、この国ではかなり勢力のあるクランなのだろう。


「ありがとうございます。それでは私はこれで……」

 ミズトは、まったく彼らと仲良くなれる気がしなかった。


【エシュロキアにいたニックさんや、勇者リアンさんのように真っ直ぐな青年ですね】

 エデンが感想のような言葉を言った。


(そうか? ニックやリアンとは違う気がするけどな。あいつらはこの世界の人間だし、エデンさんの言うようにきっと真っ直ぐな奴らなんだろうけど、こいつは日本人だからな)


 日本人だから何なのか。エデンじゃなければそう聞き返すようなことを言いながら、ミズトは会議室を後にした。



 *



 その日、革命鎮圧部隊のメンバーは自由行動となった。

 翌日の朝に革命軍が陣を張っている地域に向け出発するので、それまでは好きにしていて良いとなったのだ。

 と言っても、基本的には共和国議会府の敷地内で夜営するだけなのだが、ミズトは一人で抜け出し宿をとっていた。


(二十日ぶりの町だ。夜営なんて意味分からなくないか?)

 首都セルタゴの人混みを歩きながら、ミズトが言い訳した。


【これまでと同様、千五百人の宿を確保するのは難しいため、引き続き夜営をするという意味になります】


(いや、そうなんだろうけど……)

 ミズトはまともに答えたエデンに苛立ちながら、前を何故かゆっくり歩く男を避けて追い越そうとした。

 すると前から来た男と衝突しそうになり、再度避ける。


(…………)


【ミズトさんの心労が溜まってきております。人通りの少ない道へ行くことを提案します】


(…………歩きスマホがっ!)

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