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第139話 それぞれの理由

「おい、貴様! ギルドマスターの話を最後まで聞かないか!!」


「よい! 彼はA級冒険者だ。それを忘れるな」

 ブルクハルトは後ろから声を出した男に毅然とした態度で言うと、ミズトへ向き直った。

「ミズト殿、理由をお聞かせ願えないだろうか?」


異界人いかいびとをよく思わないために起きている革命というお話しでしたら、異界人いかいびとである私が参加するのは得策と思えません」

(ただ行きたくねえだけだけどな)


【存じております】


「もちろん同じ異界人いかいびとが関わるお話しですので、お力になりたいのは山々なのですが、ここは先ほど申して頂いた通り、あらゆる自由を保障されているのでしたら、その権利を行使させていただきます」

(他の異界人いかいびとなんて知ったこっちゃねえし)


【存じております】


「ミズト殿のおっしゃりたい事は分かりました。しかしギルドにとってあなたが異界人いかいびとであることは何の関係もありません。A級冒険者であるミズト殿へご依頼したいのです。ご再考いただけないでしょうか?」

 ブルクハルトは感情が読めない表情で言った。


「…………」

(だいたい人の食事の邪魔をしたのが気に入らねえんだよ!)


【それも存じております】


(エデンさん、さっきからうるさい!)


【申し訳ございません。しかし、限定クエストが発生していることはお伝えします】


(…………知るか)

「とりあえず私は、革命なんて大きな事象には、関わらない方が良いと思っていますので」


「左様でございますか。ですが補足だけさせてもらいますと、革命の鎮圧はレガントリア帝国騎士団を含む帝国軍と共同で行います。そのため冒険者はあくまで帝国軍の協力者という形になります」


「帝国軍? なぜ帝国が他国の革命に関わるのですか?」

(ひとの国に帝国軍が関わるのは内政干渉じゃね? だいたい共和国内の問題だし、冒険者ギルドがどうこうするもんでもないし。こういうのはどっちが正義かも判断できないぞ?)

 ミズトは色々疑問が湧き、無意識に質問した。


「セレニア共和国は帝国の同盟国です。同盟国政府の危機ですので、帝国は騎士団の派遣を決定しました」

 ミズトは気づけなかったが、ブルクハルトの眼の奥が光った。


「それならそれで、冒険者ギルドが関わる必要はないのではないでしょうか? レガントリア帝国の戦力を考えれば、冒険者ギルドの力を借りる必要がないように思えます」


「それは、鎮圧部隊の参加を冒険者ギルドから帝国へ打診しました」


(は? なんで?)


「当然疑問に思われるかもしれません。我々冒険者ギルドは世界中の人々の助けになる活動を続けてきました。様々な人々から依頼を受け、冒険者がその力になっています。ですが今後は、個人個人の力になるだけではなく、人々の生活を支える国家の力にもなりたいのです!」


「…………」

(全然ピンと来ないけど……)


「だからこそこの事案は冒険者ギルドの威信にかけて、帝国騎士団にも劣らない戦力を揃えたいと思っています。それにはA級冒険者である、ミズト殿のお力が必要なのです!」


「……冒険者ギルドがどうしてもそれなりの戦力を揃えたいのは理解しましたが、私以外でも良いのではないでしょうか。たしかに私はA級をやらせていただいております。しかしレベル50の若輩者です。とても冒険者ギルドの求めるA級の実力とは言えません」

 ミズトは申し訳なさそうな表情を作った。


「ミズト殿がそうおっしゃりたいお気持ちは分かります。しかし、どうしてもミズト殿である理由はいくつもあるのです。第一に、三日後に出発予定の鎮圧部隊集結に間に合うA級冒険者が、帝都内にいるミズト殿だけなのです。冒険者ギルドとしては、A級とB級それぞれ参加させて誠意を見せる必要があります」


(間に合うなら誰でもいいからA級を参加させたいってことか……)


「第二に、ミズト殿はご自分の実力をお認めにならない発言をされましたが、A級冒険者になることはそんな簡単なことではございません。実力のない者が運に恵まれてなれるものではないのです。A級である限り、冒険者ギルドはその実力を確信しております。現に、ミズト殿の参加を推薦した冒険者もいたのです」


「私を推薦……?」

 冒険者にそれほど顔見知りのいないミズトは、少し驚きを見せた。


「はい、ミズト殿はしかとA級として認められている証拠です。そして第三ですが、冒険者ギルドとしては三年ぶりにA級へ昇格した人物の見極めを行いたいと思っております」


「見極め……ですか」


「人格的な意味だけではなく、実力を正確に把握したいのです。今回の鎮圧部隊にはギルド幹部が同行します。その者にはギルドの代表として騎士団や共和国と様々な交渉を行ってもらいますが、ミズト殿の見極めも担ってもらいます」


「冒険者だけではなく、ギルド側の方が同行されるのですね」


「はい、余計な交渉事はすべて引き受けますので、冒険者の方々は戦いだけに専念していただければ構いません」


(戦いって……誰と戦うことを想定してるんだか……)


「そこでミズト殿に一つ尋ねたいことがございます。冒険者ギルドマスターである私からの質問でも、A級冒険者なら回答する義務はございませんが、少しよろしいかな?」


「まあ……聞くだけお聞きします……」


「ミズト殿は世界最難関ダンジョンと言われる『無限迷宮』に行かれましたね?」


「!?」

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