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第125話 グリノスミノタウロス

(エデンさん、普通のミノタウロスはどのぐらいのレベルだっけ?)


【だいたい五十前後になります】


(そうか……こいつのレベルもおかしいみたいだな)


【あれはこの世界にとって極めて危険なモンスターです。ここで野放しにすると、どれほど被害が出るか分かりません】


(まあ、戦うしかなさそうか……)

 ミズトはグリノスミノタウロスから、すでに自分へ向けられている殺意を読み取った。


【はい、ミズトさんの力で排除する必要があります。このモンスターが限定クエスト発生の理由と考えてよいでしょう】


(まったく……)

 限定クエストも鬱陶うっとうしいが、それより自分が戦わないと大きな犠牲が出る状況が、選択肢を奪われているようでミズトは気に食わなかった。


【ミズトさん、このモンスターを倒せるほどの威力で『ストーンバレット』を発動すると、その衝撃波でこの辺一体が吹き飛びますのでご注意ください】

 エデンが、エレメントリウムの杖を構えたミズトを制止した。


(…………は? なら俺が使える魔法で、屋敷に被害を出さずにあれを倒せる魔法ってあるか?)


【残念ながら、ミズトさんの使用できる四つの攻撃魔法では、どれも周辺に大きな影響を及ぼします】


(あっそう……使えそうな別の魔法を探す必要がありそうだな……)

 ミズトは装備を杖から剣へ持ち替えた。


「ブォォォォォォォーーーーーッ!!」

 グリノスミノタウロスが雄叫びをあげて、ミズトへと突進してきた。


 しかし、グリノスミノタウロスが数歩も動かないうちに、ミズトは一瞬で距離を詰め、すれ違いざまに真っ二つに斬った。

 断末魔をあげる暇さえなく、モンスターの身体は消滅し始める。


【ミズトさん。今のはかなり過剰な攻撃になります。三分の一程度に力を抑えて問題ありません】


(オーバーキルってやつか……。『無限迷宮』にいた()()と半月も模擬戦してたから、加減が分からなくなってんのかもな……)


【今の戦闘でレベルアップしました。限定クエストも完了したようです。表示しますか?】


(ん? そういえばあそこでの模擬戦中は、邪魔だからレベルアップの表示を止めてたんだっけ。表示は不要だ。レベルアップしようが報酬が出ようが、もうどうでもいいことだしな)


【承知しました。今後、ミズトさんに不要なログは表示しません。クエスト報酬も直接マジックバッグへ収めておきます】


(ああ、それでいい)


「ミズトさん! 先ほどの叫び声は何ごとかしら!?」

 少しすると、クレアが走ってやってきた。

 すぐ後ろにはエドガーも続いている。


おもての方は終わったのですか? こちらにもゴブリンが一体いたので、倒しておきました。その声だと思います」

 ミズトは素知らぬ顔で剣をマジックバッグに入れた。


「ゴブリン……!? そうかしら……もっと何か……恐ろしいものに聞こえたのですけど……。まあいいですわ。ところで、そちらの方は亡くなられているんですの?」

 クレアは横たわっている野盗の遺体を見て言った。


「はい、私が来た時には既に。逃げていた野盗が言っていた、ボスが彼なのかもしれません」


「そう……魔族ではなく、人間のようですわね」

 クレアは恐る恐る遺体の顔を覗き込む。


 生きていない者のステータスは表示されないので、ミズトには種族を確認する術はないが、少なくとも魔族は見た目で判断できるようだった。


(なあ、エデンさん。人間でもモンスターを召喚することはできるのか?)


【人間でも魔族でも、モンスターを召喚するスキルは存在しません。なお、魔族はモンスターを召喚できるのではなく、制御できるだけです】


(なるほどな。それで人間のこの男にはミノタウロスを制御できず、殺されてしまったってことか……)


「遺体はこのままにして、後で帝都の衛兵に任せましょうか。それより、我々は屋敷の中を調べてみましょう」

 ミズトは屋敷へ向かって歩き出した。


「え、ええ……そうね……」

 クレアとエドガーもミズトに続いた。


 事前に気配で察知していた通り、屋敷内には野盗の姿は見当たらず、彼らにさらわれたとみられる人々が、縛られて一つの部屋に押し込められていた。

 ミズト達はすぐに全員を解放し、ミズトの持つ初級ポーションと食料を与えた。


「そなたたち、よくぞこの僕を救出したのだ。ご苦労であったの」

 一人の太った中年男が、体力が戻ると立ち上がってそう言った。

 少し教養がなさそうだが、態度や服装で、高貴な人間なのだろうとミズトでも分かった。


「ご無事でなによりですわ。わたくし、フェアリプス王国の第一王女、クレア・フェアリプスと申します」

 クレアはすぐに男に近づき、丁寧に言った。


「おお、隣国の王女であったか! 僕は帝都に住むチャーリー・バイアット公爵なのだ。救助に来るのは帝都の衛兵か冒険者ギルドかと思ったけど、まさかそなたのような方が来るとはの!」


「実はわたくしも一度、野盗にさらわれていましたわ。一度は助かりましたけど、こんな無法者たちを放置なんて出来ませんので、頭領のいるここを探しあて、信頼できる二人を連れて来ましたの」


「そうか、そうか! 放置せず探しあてるなんて、そなたは責任感があるの! それに、たった二人で野盗どもを倒すとは、そなたには余程の手練れがいるとみえるのだ!」


「はい、最高の二人です」

 クレアは他の救出者には目もくれず、その後もバイアット公爵と話が盛り上がっていた。


 ミズトとエドガーは、クレア達二人のことは気にせず他の救出者の回復を確認すると、使えそうな馬車を探して皆の誘導を始めた。

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