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第122話 クレアとの再会

 青年と若者たちの口論が少し続いた頃、シュンタがクレア王女を連れて広間に戻ってきた。


「クレア様!!?」


「あら、エドガー。ミズトさんもいるのね。こんなところでどうしたのかしら?」

 クレアはエドガーと真逆のテンションで言った。


「どうしたもこうしたもありません! 行方不明だったクレア様を、ミズトと捜索に来ました!」


「行方不明? たしかに襲撃されて何日か監禁されていたわね。でも大丈夫よ。お父様にも無事の書状は送ったわ」


「そ、そうだったのですね。ご無事で何よりです……」

 エドガーは腰が抜けたように、近くの椅子に座った。


(どうやら入れ違いだったか。電話やインターネットがあるわけでもないしな)


 フェアリプス国王セドリック四世に、クレアの書状が届いたのはミズトたちが船上にいた頃だった。


「ミズトさん、あなたも来てくれるなんて、とても嬉しいわ」

 クレアは何かを探すように、ミズトの足元へ視線を送りながら言った。


「いえ、とんでもありません」

(嬉しい理由は俺ではないようだけど)


「あっ、あぁぁ……!?」

 クレアはクロを見つけ、思わず声を漏らした。


 すぐにでも駆け寄りたそうな表情をしているが、クロがたくさんの異界人いかいびとに囲まれているため、躊躇ちゅうちょしているようだ。


「ところでクレアさんこそ、どうしてこんなところにいらっしゃるのですか?」

 ミズトは疲れ切っているエドガーの代わりに訊いた。


「そちらのシュンタさんという方のご厚意で、わたくしたちの寝泊りする場所を提供してもらったからですわ」


(は?)

「いえ、そういう意味ではありません。クレアさんは親善大使として来ていると伺ったのですが、なぜ宮殿には行かず、こんなところで留まっているのでしょうか?」


「あら、そっちの話ですのね。もちろんそのうち行きますわ。ただ、レガントリア帝国は一筋縄じゃいかないの。小国の王女が皇帝と謁見するには、それなりの根回しが必要なのよ。それに、わたくしたちをさらった野盗をあのままにも出来ないわ。他にもさらわれて戻っていない人たちもいるお話ですし、どうにか拠点を見つけて根絶やしに出来ないか、シュンタさん達に協力依頼をしているとこなの」


(クレアの正義感が炎上中ってことか……。けど親善大使なんだから、さっさと行かないと先方に悪いだろうに)


【クレアさんはレガントリア帝国へ訪問することを通達しているわけではないようです】


(ん……? ちょっと意味が分からん。親善大使で来てるんじゃないのか?)


【フェアリプス王国とレガントリア帝国の親交を深めるために、クレアさんがレガントリア皇帝と謁見するのが目的で訪問していることは間違いありません。ただし、帝国へ何も通達していませんので、待たせていることにはなりません】


(えっと…………前は冒険者ごっこみたいなことしていて、今回は親善大使ごっこしているって意味か?)


【言葉の表現が適切かは別にしますと、ミズトさんのご理解しているとおりです】


(…………)

「なるほど……、親善大使としてよりも、まずはナカガワさん達の力を借りて、野盗をどうにかしようとしていたのですね。ですが、クレアさん達をさらった野盗は、先日衛兵に捕まったようです」

 ミズトは他人事のように言った。


「その情報は聞いているわ。あれだけの人数を捕まえたのなら余程の戦力でしたのね。誰かが捕まえたのなら良かったわ。わたくしが救出された時は、野盗たちに逃げられてしまったから」


(あいつら、女剣士ってのが救出に来た時は逃げて、それからまた戻って人攫ひとさらいを続けたんか。しょうもねえ奴らだな)


【あの屋敷には百名ほどの野盗がおりました。どれほど実力差があっても一人で全員を捕まえるのは不可能と言って良いでしょう。ミズトさんの使用する多数を眠らせる魔法は、とてつもない能力とご理解ください】


(たしかに。言われてみればどんな犯罪でもできそうな能力だな)


【陳腐な発想ですがおっしゃる通りです】


(………………………………)


「ミ、ミズトさん、そんなにおトイレを我慢されなくても、行ってきていいですわよ……」

 クレアは、何か大きな感情を我慢しているミズトの表情を見て言った。

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