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第10話 限定クエスト

(おいおい、なんだか物騒な話になってんな)

 ミズトはもう一度木陰へ身を戻した。


 この世界にやってきた日本人と、この世界の住人が争っている。

 まったく想像もしていなかった場面に遭遇してしまった。


 ステータスが表示され、レベルがあり、聞いたことのある名前のモンスターが現れる。

 いつのまにかゲームのような感覚になっていた。人間同士の争いなんて想定していないのだ。


 ところが目の前で起きていることはどうだろう。

 騎士団の二人は、きっと警察や軍のようなもの。実際、とても悪党には見えない。

 日本人の方も、どちらかと言えば好青年だ。

 そんな二組が争っている。街の喧嘩なんかではない。


 ミズトは、色々認識が甘かったと実感しだしていた。

 ここは日本ではない、地球ですらない異世界だ。

 法も常識も違えば価値観だって違う。自分にとっては未知の社会と捉えるべきだ。


 何も考えずに近くの町を目指していたが、この世界で自分や他の転移者たちがどういう立ち位置にいるのか、慎重に見極めながら行動する必要があると感じた。


(あいつらが何を争っているのか知らんが、考える良いきっかけになったな)


 ミズトは近づいた時と同様に、足音をたてないようゆっくりとその場を離れようとした。


【お待ちください、ミズトさん。どちらに行かれるのでしょうか?】


(ん? なんだよエデンさん、そっちから声かけてくることがあんのか?? どちらって、一番近くの町を目指してたはずだが)


【申し訳ございません。そういうことではなく、クエスト発生の通知が出ていますので、先にご確認することを推奨します】


(ん? クエスト発生の通知?)

 たしかに視界の左端にビックリマークの点滅が見える。


【クエストは発生のタイミングに意味があることも考えられますので、可能な限りその場での確認をお勧めします】


(……なんか引っかかるな。まあいいけどな)

 ミズトはクエスト発生の通知に触れた。


 ====================

 ◆限定クエスト発生◆

 クエスト名:カズキの救済

  カズキ・コガの窮地を救ってください。

 報酬:経験値100

    金10G

 ====================


(限定クエスト?)


【限定クエストとは、極めて限られた条件内で達成を求められるクエストです。今回の場合は、この場のみ限定のクエストと推測されます】


(今すぐ助けに入れってか……。カズキって、日本人だよな? ゲームならNPCに関わるクエストはあるだろうけど、他のプレイヤーが関わるクエストなんてない。どういう仕組みになってんだ?)


【ゲームではありませんので、事前に決められたクエストが発生しているわけではございません。なお、クエストには二つの要素があると言われており、一つは転移・転生された方々の支援。もう一つはその後に大きな影響を及ぼす分岐点で発生するとされています。限定クエストはおもに後者で発生します】


(分岐点? この結果次第で、あのレベル98の凄そうな奴の行動が変わるってことか? それともカズキってのが何か大きなことをやるのか)


【それは不明ですが、少なくともクエストが発生したミズトさん次第で、何かが大きく変わるということです】


(んのわりには報酬少なくないか? と言っても別に報酬が欲しいって意味じゃないけどな…………。ええい、くそ!!)


 ミズトは腹をくくった。

 正直どちらも赤の他人だ。関わる理由もないし関わりたくもない。

 元の世界でも、街で争いごとを見かけて自分から割って入るようなことはしないし、興味もなかった。


 しかし、同じ日本人であるカズキが、後で死んだと知ったらさすがに後味が悪すぎる。

 一応、同じ世界からやってきた仲間みたいなものとも言えるので、力になれるならなっても構わないと思った。


(そういえば会社で、同じ都道府県出身は仲良さそうだったな。同郷ってのはこういう感覚なのかもな)


 ミズトは敵意を見せないために剣を地面に突き刺し、両手を上げたまま三人の前へ出ていった。


「誰!?」

 ミズトに気づいて声を出したのは、女性の方の世界騎士だった。


「通りすがりの者ですが、なんだか揉めているようでしたので、ちょっと様子を窺いに来ました。どうかしましたか?」


「え? 君、日本人? レベル2の転生者?」

 カズキは驚いた様子でミズトに向いた。


「はい、私も日本から来ました。転生したみたいです」


「ステータスがオールEって、ポイントを何に使ったらそうなるんだ? いや、そんなことより、そんな新人がどうやってこの新大陸の奥地に……?」


(オールE?)

「ええと、カズキさんの質問の意味が分かりかねますが、私は四日前にこの森からスタートしたばかりの新人です」


「どういうこと? ここ、一番近いスタート地点からもだいぶ離れているんだけど……」


(なんだ? この兄ちゃんと話が噛み合ってないな。俺みたいな新人がいると変なのか?)

「まあ、私の事は置いておいてもらって、皆さんはどうされたんですか? 良ければ事情をお聞かせください」


 ミズトはそう言いながら、カズキとアレクサンダーの中間まで進んだ。

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