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joint class2


 怖い。怖すぎる。


 夏旗君が僕と組もうと言ってくれた瞬間、クラス中の女子から凍てつくような視線が僕を刺した。


 なんであんたが夏旗君と。


 そんな副音声が聞こえてきそうだった。


 ひと通り僕を睨み終わった後、いつまでもペアを組まないでいられないと判断したのか、女子達は次第に他のイケメンへと移って行った。


 全員がペアを組み終わった後、ヨシダンは


 「んじゃ、今日は体育祭の二人三脚クラス合同練習だからな!相手のクラスの力量と自分のクラスの力量をしっかり見極めろよ!そして体育祭での勝利を目指せ!!」


 と、野太い声で叫んだ。


 「「はーい」」


 それに僕達は微妙にやる気のない返事を返す。生徒達はヨシダンの体育祭への思い入れに若干引いている。

 

 体育教師が体育祭への熱量が異常なのってお決まりなのかな?まぁ、どうでもいいけど。


 「瀬戸、足縛るぞ」


 「あ、うん」


 ヨシダンから配られたバンドで夏旗君が僕達の足首を固定する。その動作は丁寧で、優しさを感じる。


 「‥よし、結び終わったぞ」


 「ありがとう、夏旗君。えっと‥‥」


 今僕達はお互いの右足首と左足首が固定されている状態。


 そうすると必然的に身体がくっつくわけで。


 「?なんだ、瀬戸」


 ち、近い。夏旗君の顔が、身体が!いや、身体に至ってはくっついている状態だから近いとかそういう次元じゃない!


 「あ、いや、なんでもない。それじゃ、一旦走ってみようか」


 内心の動揺を隠して、無理やり話題を変える。少し不自然だったかもしれないが、このまま意識し続けるよりずっとマシだ。


 「そうだな。まずは歩幅を合わせるところから始めよう」


 夏旗君がそう言って、僕達は練習を始めた。



 ◇◇◇◇◇



 「‥‥な、夏旗君、ちょっと休憩‥」


 「うわっ、悪い瀬戸!完全に俺のペースで振り回してしまった。大丈夫か!?」

  

 「‥‥‥大丈夫だから、あんま大きい声出さないで‥近いから耳が痛くなる‥」


 そう、夏旗君の言う通り、練習が始まってからの僕は完全に振り回されていた。

 

 夏旗君、持久力が半端じゃない。練習が始まってから二十分ちょい、ずっと休み無しで走らされた。


 耐えかねた僕が休憩って言わなければまだ走っていたはずだ。恐ろしい。


 「本当に悪い。瀬戸、一回端の方に行こう。此処じゃ邪魔になる」


 「うん、そうしよっか」


 一回バンドを外して、体育館の端の方まで移動する。


 体育館の端からだとどの人が早いのかすぐ分かる。


 あ、あのチーム早い。女子が運動系だから男子も走りやすいのかな?


 あのチームは遅いな‥、歩幅が合ってないから一歩踏み出すのも一苦労そうだ。

 

 「うおっ、七星さんのペア早ぇ!」


 何処からか男子の声が聞こえてきた。


 声の主の方を向くと、美少女と男子のペアが完璧になコンビネーションで他のペアを圧倒してる光景が見えた。


 美少女の名前は七星玲奈(しちせいれいな)


 他のクラスとの交流が皆無に等しい僕でも知ってる天才美少女だ。


 噂には、試験では常に成績優秀、部活は陸上部で、都大会には出るだけで優勝が決まるだとか。


 多分、その噂の殆どが合っていると思う。


 実際、試験の成績張り出しの時は、一位に彼女の名前があるし、何度か都大会優勝で表彰されてるのも見たことある。


 話したことが無いから分からないけど、遠くから見たイメージは、クールな優等生ぽい感じがする。


 「瀬戸?‥‥あぁ、七星見てたのか。凄いよな、あいつ。いつも正解を直ぐに導き出して、自信に溢れてて。自分で悩んだことは無いって言ってるんだ」

 

 「‥‥そうなんだ。ちょっと羨ましいな。七星さんは、話したことないけど、凄い人だって分かるよ」


 なんでも正解を導き出せて、悩んだことのない七星さんと、正解が見つからない中で苦しんでる僕。


 なんだか酷く正反対に見える。


 ‥‥いや、実際正反対なんだろう。


 だって僕は×で、彼女は‥‥‥


 ピピーッ


 暗い思考に飲まれそうになった僕を、ヨシダンの笛の音が引き戻す。


 「おーい、集合しろ!もう授業終わるぞ!」


 「ヨシダンが呼んでんな。瀬戸、行こうぜ」


 「‥‥うん、行こっか」


 ‥‥何を考えてるんだ、僕。


 七星さんは、僕とは関わることの無い人じゃないか。


 ただの夏旗君のクラスメイト。学校の超優等生。


 それが七星さんだ。


 そう自分に言い聞かせるようにして、ヨシダンの元へ向かった。



 「よし、お前ら!相手のクラスの力量は分かったか!?んじゃ、号令!」


 「気をつけー、礼」


 「「ありがとうございましたー」」


 最後まで微妙にやる気のない返事をして、体育館を後にしようとしたその時。


 肩に手をかけられて、透き通った声が僕の名前を呼んだ。


 「瀬戸柚月ね。ちょっといい?」

 

 ‥どうして、なんで彼女が。


 振り返ると、そこには絶対に関わることの無い彼女、‥‥七星玲奈が立っていた。

 

 

 

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