番外編(オクトフィル視点)
俺はどこで道をたがえてしまったのだろうか…。
サフィシルとは生まれながらにして婚約者だった。幼いころはよく遊んでいたし、領地も近かったので互いの領地に遊びに行ったりもしていた。だが、思春期になると幼かったころのように無邪気に遊んだり、話したりすることができなくなってしまった。その上、通っていた学院では同級生の男子たちにからかわれ気恥ずかしくなってしまって、疎遠になっていたのがなおさら疎遠になってしまった。
今思い返してみると、そのことが間違えだったのだろう。気恥ずかしいからという理由だけで婚約者だった彼女を遠ざけて、なおかつ、ほかの女に現を抜かしてしまったのだから…。
加えて、伯爵家の当主である父に相談することもなく彼女との婚約を破棄してしまったし、彼女に非はないにもかかわらず婚約の破棄と言ってしまったのだ。これは俺の失態であり、婚約は解消してくれと頼むのが筋だったのだ。
その後、俺は屋敷に閉じ込められ、真実を聞かされた。どうやらディーセンは俺が伯爵家の次期当主であり、サフィシルとの仲があまりよくないことを知っていて近づいてきたとのことだった。最初は信じられなかった。しかし、閉じ込められている間、ディーセンの言動を思い返してみると俺の立場や資産を機にしたような言動が多かったように思える。一度疑いだすと様々なことが怪しく思えるようになってきた。
そのように過ごしているとある日俺は父上に呼ばれた。
「オクトフィル、お前を伯爵家から追放する。これからは一平民として生きていけ。だたし、住む場所と仕事だけは紹介してやる。これがわたしからお前に対する最後の親としての務めだ。」
父上から最後にそう伝えられて俺は伯爵家から追放された。この処罰は父上からの最後の恩情であると思えた。
追放されてから俺は、必死に働き自分のことを自分でするという貴族ではないものが当たり前に行っていることがどれだけ大変できついことなのかがよく分かった。俺は今まで本当に恵まれた環境に居たのだと思うことも今の生活ですらも恵まれているのだと思い知らされた。
婚約破棄をサフィシルに伝えた時の俺は間違いなく救いようのない馬鹿だったのだろう。考えも足りず、サフィシルの経歴に傷をつけてしまうのだということも考えられずに自分の考えだけで行動に移してしまったのは取り返しのつかない失態だったのだ。
こんなことを思うのは迷惑かもしれないし、独りよがりなのかもしれないが、サフィシル、すまなかった。そして、幸せで過ごしてくれることを心から祈っている。
オクトフィルは馬鹿でしたが、平民としての生活をしていくうちに自分がどれほど愚かだったのかを気づきました。多分、オクトフィルには、貴族の生活は向いていなかったのでしょう。その後、オクトフィルは一平民として穏やかに一生を終えました。
ざまあを期待してくれていた方には申し訳ないのですが、私としては、オクトフィルがなぜ婚約破棄ということをしでかしてしまったのかが書きたかったのでこのような形となってしまいました。
明日の更新で最後とさせていただきます。最後までお付き合いください。