3/9
3
「改めてお聞きしたいのですが、お相手はディーセン嬢と言う方でお間違えないでしょうか?」
「ああ、タイムース子爵家のディーセン嬢だ。ほかに聞きたいことはあるか?」
なるほど、あの方でしたか。まあ、いいでしょう。オクトフィル様とディーセン様ならある意味お似合いのお二人です。
「いえ、とくにはございません。とりあえずですが、婚約解消の件、承りました。それでは失礼いたします。」
わたしは、オクトフィル様に一礼して伯爵家から立ち去りました。
馬車に乗り込むと、わたしは一息つきました。
「ああ、本当にあのバカの相手は疲れましたね。」
あら、いけません。つい本音が口からこぼれてしまいました。まあ、あのあほくさい会話はすべて録音していますので、何かあっても私が不利になることはないでしょう。
「ただいま戻りました。」
「お嬢様、お帰りなさいませ。旦那様方がリビングでお待ちです。」
大方、今日の婚約破棄のことでしょう。本当に我が家の情報網は素晴らしですね。
「わかりました、今から行きます。」
さあ、家族への事情説明に行きましょうか。