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七.火事の後

「なぜ、あんな無茶をしたんじゃ?」


家に戻るとテーブルを挟んで向かい合っていた。

えんじいは腕を組んでジッとこちらを見ている。


「あの時……何かできないかと考えていた時……火の神が呼び掛けてくれたんだ」


「なんじゃと? 火の神と通じ合えたというのか?」


「うん。助けてくれるっていうから力を借りたんだ。名前を教えてもらって、その名前の元に火に避けてもらったりしたんだ。だから、助けてこれた。できるという確信があったから、火の中に行ったんだよ」


「なるほどのぉ。そこまで強い神通力じんつうりきが備わるとはのぉ……」


「じんつう……りき?」


「そうじゃ。神に通ずる力とかくのぉ。神から助言をもらったり、何かあるという虫の知らせをもらったりのぉ。ワシは虫の知らせを貰うくらいじゃが……。リエルは相当神に気に入られておるようじゃ」


「そうなのかな? 良いことだよね?」


「あぁ。日頃から本殿の掃除等している所を見てくださっているんじゃろう」


「そっか。これからもしっかりやらないとね」


「そうじゃのう。神通力が備わり、しかも名を教えて貰うなんぞ歴代で初めてではないかのぉ。これからも精進するんじゃぞ?」


「はい!」


笑顔で元気に返事をする。

えんじいには心配かけてしまった。

でも、僕はやらなきゃいけないと思ったんだ。

火の神と通じ合える神通力が僕には備わったらしいけど。

いまいち実感ないんだよね。

強く呼び掛けないといけないみたいだし。


「全然寝ておらんから、寝るとするかのぉ」


「そうだね」


少し明るくなり始めた頃。

布団に入り、再び眠りにつくのであった。


2人とも起きたのは、正午を回ったあたり。

突然の訪問者により、起こされたのであった。


「すみませーん! ごめんくださぁーい!」


玄関で読んでいる声が聞こえる。


「なんじゃ? うるさいのぉ」


「誰だろう? 僕が行こうか?」


「いや。ワシが行って文句の一つでも言ってやるわい」


2人で起き上がると玄関に向かった。


「なんじゃ? ワシらは夜中の火事騒動で寝てないんじゃぞ!? 何事じゃ!」


「お休みになられてましたか。すみません」


そう返事をしたのは、制服を着た消防士と警察官であった。

深々とお辞儀をし、申し訳なさそうにしている。


「その火事について、調査しているんですが、どうも火災の原因が放火のようなんですよ」


「なるほどのぉ。だから、連続して火事が起きておったのか?」


「はい。そういうことのようで、何か怪しい人物とか見ていませんでしょうか?」


「この辺では見てないのぉ。リエルは何か見たかの?」


えんじいはリエルにも聞く。


「僕もこの辺りで怪しいような人は見てないよ?」


「失礼ですが、お孫さんですか?」


質問したのは、警察官であった。

リエルは目立つ容姿をしている。

ふっと疑問に思ったのだろう。


「孫のようなもんじゃ。この子を疑うのは筋違いじゃぞ!? 昨日命懸けで火災に巻き込まれた子供を助けたんじゃからな!?」


疑われたと思ったえんじいが唾を飛ばしながら激怒した。

まぁまぁとリエルは宥める。


「確かに、そのように報告があがっておりました。申し訳ありません。疑問に思うとつい口に出てしまう質でして」


ペコリと警察官は頭を下げた。


「何か怪しい人物を見かけたりしたら最寄りの交番にお報せ下さい」


「見かけたらのぉ」

「何か気になる事があれば、お知らせしますよ」


えんじいは不機嫌そうにそう返事をする。

かわりにリエルが笑顔で対応する。

その言葉に再び2人がお辞儀をする。


「よろしくお願いします。では、失礼します」


そういうと去っていった。


すっかり目が覚めてしまった。

着替えて本殿の掃除でもしようかな。


「目が覚めてしまったのぉ。飯でも作るかのぉ」


そういえば、お腹空いてた。

えんじいの後を追う。


「手伝うよ」


そうして、朝だか昼だかわからないご飯を作る。

今はお昼だが起きたばかりの朝ご飯なので漬け物や焼き魚、卵焼きといったメニューだ。


「この辺で放火とは怖いもんじゃのぉ。人様の家に火をつけるなんぞ正気の沙汰ではないわ」


「そうだね。僕もそう思う。犯人は近くにいるのかな?」


「しかし、いたとしても放火犯かどうかなんぞわからんじゃろう?」


「たしかにそうだよねぇ。わかっちゃうぐらい怪しかったらすぐ捕まっちゃうもんね」


ご飯を食べながら談笑する。


「食べ終わったら少しでも掃除するかのぉ」


「僕、本殿の掃除するよ」


「そうか? じゃあ、お願いするかのぉ」


いつも通り本殿を掃除する。

ホコリを落として。

床を拭き、棚を拭く。


ピカピカになった頃。

もう夜になるところであった。


「そろそろ夕飯の時間じゃぞ」


「はぁい!」


夕飯の準備をする。

すると、不意に声が聞こえる。


『人為的な火の気配がするぞよ?』


「ん? 火の神様? 何ですか?」


『何やら人がつける火の気配が近くにあるぞよ』


「そうなの!? えんじい! 放火犯が近くにいるかも!」


「なんじゃと!? 探すぞぉ!」


玄関を出て本殿の方へ行く。

黒い影がサッと去っていく。

その後には炎が立ち上っていた。


近くに蛇口があったので、そこから水を汲んでかける。

バシャバシャかけていたら、なんとかきえる。

残った匂いが灯油臭い。


「えんじい! 近くの交番行ってくる!」


「気をつけるんじゃぞ!」


「うん!」


交番に向かって階段を降りる。

向かっていると、ポリタンクを持ったおじさんが歩いていた。

すれ違うと、焦げ臭かった。


この人、火をつけたから焦げ臭いんじゃないの!?

めちゃくちゃ怪しい!?


「ねぇ! そのタンク何に使うのぉ?」


そう聞くと。

直後に走り始めた。


「ちょっと! 待って!」


リエルもダッシュで追いかける。

持っているものは、恐らく灯油だ!

怪しい人は意外と早い。


路地に入った。


やばい!

見失っちゃう!


路地を曲がると。

人の姿がなかった。


「はぁ。はぁ。はぁ。逃げられた……」


その後、トボトボと交番に向かう。

交番に着くと警察官が待機していた。


「すみません。さっき怪しい人を見て……放火犯じゃないかと思うんですが」


「どこに居ました?」


「あっちです。声を掛けたら逃げられちゃって……追いかけたんですけど見失っちゃいました」


「そうですか。貴重な情報ありがとうございます! もうちょっと聞かせてもらっていいかな?」


「はい!」


「身長はどのくらいだった?」


「僕より少し大きかったです」


リエルは165cmくらいである。

それよりは大きかったように見えた。


「なるほど。私くらいかな?」


「そうですね。あと小さなタンクを持ってました」


「なるほど。分かりやすいね。どんな服装だった?」


「全身真っ黒でした」


「ふむふむ。これで配備してる警官に情報を与えられるよ。ありがとう」


「いえ」


「あっ。君の住所と名前を教えて貰っていいかな?」


「えっと……住所は分からないですけど、神社の所の神楽炎蔵さんと住んでます。リエルと言います」


「あぁ! 炎さんの所ね! わかった。どうもありがとう」


リエルは立ち上がってペコリとお辞儀をする。


「では、よろしくお願いします」


「うん。全力で探すよ」


交番を後にする。

帰りもまた居ないか見ながら帰ったが、居なかった。


「リエル! 犯人は!?」


「逃げられちゃった。交番には伝えてきたけど」


「そうじゃったか。今度現れたらとっちめてやる!」


「そうだね!」


2人で拳を握り気合を入れる。

果たして犯人は現れるのか。

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