四十四.ヘブンツリー
「おぉーーー! たっけぇなぁ!」
上を見上げながら言う渉の顔は少年のようだ。
こんなにはしゃぐ渉は滅多に見ない。
「早く上に行こうぜ!」
ホントに珍しく興奮しているようだ。
速足というか、ほぼ小走りでヘブンツリーに向かっていく。
「はははっ! 渉、待ってよ」
リエルは笑いながら追いかけるが、日向とえんじいは走る気がなく。
ダラダラと歩いて付いて行っている。
日向には理解ができなかったのだ。
こんな高い所に行って何が楽しいのか。
ま、ただ恐いだけなのだが。
「何よ……はしゃいじゃって」
「ほっほっほっ。たまにはいいじゃないか。あんまり渉が騒ぐことはないんでのぉ。珍しく楽しそうにしておる」
「リエルも付いて行っちゃって!」
「そう怒るくらいなら、日向も行けばよかろう?」
「子供みたいじゃない」
頬を膨らましながら言うと、えんじいが噴き出した。
「はっはっはっ! 何を今更言うのじゃ! 日向は子供ではないか!」
「もう大人です!」
より一層に頬を膨らましながら、渉とリエルの後を付いて行く。
ツリーの下はお土産などが売ってあったら、食事処が入っていたり、店が沢山ある。
その店には目もくれず、一目散に上に行くチケット売り場に行っていた。
渉は人数分買うと日向とえんじいを手招きする。
「お師匠とお前! 早く来てくださいやがれ!」
興奮のあまり変な言葉使いになっている。
「はははっ! 渉、何それ!」
お腹を抱えて泣きながら笑っているリエル。
「そんなに笑ってんじゃねぇ! 俺は早く上りてぇんだ!」
「だからって、来てくださいやがれってなに! あはははっ! あぁー面白い」
ツボにはまった様でずっと笑っている。
「そんなに大きい声出さないでよ! 恥ずかしい!」
「ほら! 早くいくぞ!」
エレベーターの方に向かい歩き出す。
乗り降りを案内するガイドさんがいる。
扉が開くと入るように案内される。
10人程乗ったところで扉が閉まる。
すると、先程まで無機質に見えていた壁が外の風景に代わる。
『このエレベーターは外の映像をそのまま映しております。天に上る気分になるように作られております。是非、お楽しみください』
ガイドさんの案内が天井から聞こえる。
「キャッ!」
日向がリエルにしがみつく。
「日向、もしかして高い所苦手?」
「ぅん」
目をぎゅっと瞑ってリエルにしがみつく。
エレベーターが上っていく感覚と共に外の風景も徐々に上に上っていく。
「「「おおおおぉぉぉぉ」」」
渉と同じようにこのヘブンツリーに上りたかった人がいたのだろう。
歓声が上がる。
高くなっていく風景の映像を見ていると本当に天に上って行っているように錯覚する。
「綺麗だなぁ」
リエルも思わず映像に見とれる。
横にはガッチリと掴んでいる日向。
速度が遅くなる感覚がしてきた。
チーンと音がなり、扉が開く。
目の前に青空とビルが飛び込んできた。
「おぉーー! すっげぇ!」
降りると一目散に窓に駆け寄ったのは渉だ。
後を追いかけるリエルと日向。
えんじいは1番最後だ。
「日向、大丈夫?」
「う、うん。何とか。ありがとう」
「うん。顔色悪いよ? 無理しないで具合悪いなら一緒に降りよ?」
「だ、大丈夫。せっかく来たから景色見て帰りたいんだ」
「じゃあ、一緒に行こう」
「うん。ありがと」
窓の方へ歩いていく2人。
見えてきた絶景に目が見開く。
「これは……」
「凄いねぇ……」
一面に広がる街並み。
そして、空が近い。
「あぁ。本当に天国に近い感じがするな?」
「んー。天には近いよね? でも、前に日向に習ったけど、空の先は宇宙って言うんでしょ?」
「……あのなぁ。いや、確かにそうだ! そうだけど、気分的に天に上ってきたら、天国に近づいてる感覚になるだろ!」
「なった?」
リエルが日向に聞く。
「うーん。なったかも……死にそうって思ったし……」
「だ、そうだ」
「そういう事じゃねぇんだけどなぁ」
頭をガシガシかきながらイライラしている。
「まぁ、綺麗だからいいんじゃない? この景色が見たくて渉はここを選んだんでしょ?」
「あぁ。そうだな」
リエルに宥められ、落ち着いたようだ。
「おっ! 下が見える所があるぞ!」
渉を追う3人。
「はっはぁっ! すげぇ! 下の人がちいせぇ! おい! リエル! 見てみろよ!」
そばに寄ってみる。
足がすくむ感覚がする。
背中がムズムズする。
「僕……あんまり得意じゃないかも……」
そう言うと、一歩下がる。
「えぇ!? リエルダメ?」
「う、うん。たぶん、ダメ?っていうより、ちょっと苦手かな」
日向がずっと袖を掴んでいる。
「日向、あっちに行って外の景色を見よう?」
「ぅん」
端の方に行き、景色を見る。
「見て? 高層ビルでさえこのツリーより低いね?」
「ホントだぁ」
ようやく目をキラキラさせ始めた日向。
「ほら! 虹が出てる! 近いよ!?」
「ホントだぁ! ちかぁーい!」
周りからもわぁ!すごい!と言う声が聞こえてくる。
一生に感動している人達が居るようだ。
「おぉ! 騒がしいと思ったら虹が出てんじゃねぇか! すげぇなぁ!」
渉があとからやって来て外の景色に興奮している。
「あそこも人が小さく見えて凄かったぞ?」
「僕と日向は下を見るのはちょっと無理だったから……ごめんね。渉」
「いや、いいよ。俺は楽しかったし! 無理はすんな!」
そう言うとぐるっと展望台を見るように動き回る。
「綺麗だったなぁ! 下に行くか!」
「うん」
「行こう!」
日向は力なく答え。
リエルは早く下に降りたくてしょうがないようだ。
えんじいは黙って付いてくる。
エレベーターに乗る。
再び目を閉じる日向は、またリエルの腕を掴んでいる。
下がり始めたが、エレベーターの壁が変わることは無かった。
「日向。目を開けてご覧? 外の映像は流れてないから大丈夫だよ?」
「ホント?」
目を開ける。
「あっ、降りる時は普通なのね……良かった」
ほっとした様子の日向。
エレベーターの扉が開くと、一目散に降りる日向。
「あぁ。地面だぁーーー」
ガックリと膝に手を当てはぁはぁ言っている。
「日向、大丈夫? 気分転換になんか食べよう?」
「食べる〜!」
渉とえんじいは呆れている。
「あっ! あそこのカフェにパンケーキあるみたいだよ?」
リエルが指さして言うと、日向は一目散に走っていった。
「あれ? 行っちゃった」
「あやつは、全く……周りが見えなくなるのは昔からじゃ」
「まぁ、良いじゃない? 行こうか」
3人は後についていく。
「ねぇ! ねぇ! このパンケーキ食べようよ!?」
「僕はいいよ? 渉とえんじいは?」
「ワシはコーヒーにするからいいぞ」
「俺は、別の頼むからいい」
店に入って席に着く。
「僕もパンケーキ? 食べてみたいな」
「ホント!? 一緒に食べよう! 私は、このベリーソースがけにする!」
「僕は、チョコバナナにしようかなぁ」
「ワシは、コーヒーにするのじゃ」
「俺は、カフェモカにする」
店員さんに声を掛けてそれぞれの注文をする。
「今、期間限定で、ヘブンパフェをだしておりますがいかがですか?」
日向にはすごく美味しそうなパフェに見えた。
「それもください!」
よく食べる日向なのであった。
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