三十四.お花見会 中編
「ワシの太巻きはどうじゃ?」
お重の中でも際立っている太巻きは色鮮やかで。
とても美味しそうに目を引いていた。
「えんじい、これ何入れたの? 凄く綺麗だね? ピンクと緑と茶色と黄色? あっ! あと赤もあるね!」
「ほっほっほっ! 綺麗じゃろう? それはのぉ、きゅうりとかんぴょうと卵焼きにピンクはサクラデンブ、赤は紅生姜じゃ!」
パクッと食べてみる。
紅生姜がきいててシャキシャキカリカリ食感。
甘さもあって。
「色々入ってるのに美味しい! 凄いね! えんじい!」
「ワシはこれが好きでなぁ。紅生姜を入れるのがワシは好きなんじゃよ」
「ホントだぁ! これ美味しい!」
「うん。美味い。お師匠、これ海苔もいいの使ってませんか?」
「わかったか!? 渉はグルメじゃなぁ」
「あぁ! なんかいい磯の香りがすると思ったら、そういう事かぁ!」
リエルも感じでいたようだが海苔が良い海苔かまでは分からなかったのだ。
「私はわかんなかったなぁ」
「お前はいつもいい海苔食ってんじゃねぇか? だから、違いがわかんねぇんじゃね?」
「うー。どういう海苔を食べてるかはたしかに分からないわ」
日向がガクッと肩を落とした。
リエルはポンッと日向の肩を叩く。
「別に分かんなくてもいいんじゃない? 美味しいものは美味しいんだからさ!」
「そうよね! 美味しいって言ってんだから良いじゃない!?」
渉に食って掛かる日向。
「日向、落ち着いて。仲良くお花見て食べようよ! せっかく綺麗な花が咲いてるんだからさ」
ふっと顔を見上げると広がる桜の花が見える。
なんて綺麗なんだろう。
視界に入ったのは妖の姿。
しかし、その妖は砂のようなものを撒いている。
撒いた先から花の蕾が出る。
あんな花を咲かせる妖もいるんだ。
まだまだ見たことないのが居そうだなぁ。
そう思いながら花を見ていると。
「桜、綺麗?」
花見は日向が言い出したことだ。
リエルが楽しんでるか気になったんだろう。
「うん! 楽しいよ! 皆で外でご飯食べるのってこんなにワクワクする物なんだね? 花も綺麗だし……ここに来るまで僕は爺ちゃんが亡くなってからずっと1人だったから……」
「そうよね……。楽しんでくれてるならよかったよ……」
「うん! ありがとね! 日向!」
「うん! どういたしまして!」
ワイワイご飯を食べていると、声をかけてきた人がいた。
「おぉ! 炎蔵じゃないか!」
その声に振り返ると、玄さんがいた。
「あっ! 玄さん!」
「おぉ! リエルくん達も一緒か! 拓人よ、ここの隣にするか?」
玄さんの後ろには拓人くんがいた。
ヒョコッと顔を出すと。
いきなり頭を下げた。
「えっ!? 拓人くん、どうしたの?」
慌てて聞いてみると。
「あの……前は…………お姉ちゃんって言ってごめんなさい! 綺麗だったから間違えちゃって……」
「すまんかったな! あの後説明したんじゃが、中々会いにも行けなくてな」
「ふふっ。いいですよ。全然気にしてません! よく間違われますし、正直どっちでもいいかなって。だから、拓くん、謝ることないよ?」
「う、うん! ありがとう! お姉ちゃん!」
「うん! どういたしまして!」
「隣にシート敷いていい?」
「うん! 皆で楽しもう!」
「やったー!」
飛び跳ねて喜ぶ拓人くん。
リエルは微笑ましく見ているのであった。
「すまんな! リエルくん。しかし、本当に良かったのかい? ちゃんと男だと言えば……」
「玄さん、ありがとうございます。でも、本当にどっちでもいいというか、自分に性別はない気がしてるので、いいんです!」
「そ、それなら良いが……」
「玄よ、気にするでない。リエルはもう神の域に達しておる。ワシらが気にしてもしょうがないのじゃ!」
「えんじい……それもなんか違う気が……まぁいっか!」
リエルが微妙な顔をしていると、横にいた日向が身を乗り出してきた。
「拓人くんっていうの? こんにちは! この唐揚げ私が作ったのよ? 食べてみない?」
「えっ!? 食べていいの?」
「もちろん! いいわよ!」
パクッと食べて目を見開く。
「すっごい美味しいよ!」
「そう! 良かったわ!」
「ねぇねぇ! これも食べてみて? 僕が作った稲荷寿司だよ?」
「お姉ちゃんが作ったの?」
パクッと食べて目が垂れる。
「これ凄く美味しいね!」
拓人くんに褒められてニッコリするリエル。
それを見た拓人くんは呟く。
「やっぱりお姉ちゃん綺麗……」
その後ろから玄さんが顔を出してくる。
「ワシも食べていいかの?」
「いいですよ?」
食べた後に頷く。
「うむ。こりゃ、後藤豆腐店の揚げだな? 流石に分かっとるな! 美味いわい!」
「私が選んだんですよ!?」
「あなたは……」
「炎蔵の孫の日向です!」
「おぉ! こんなに可愛いお孫さんがいたとは!」
「可愛いだなんて!」
両手を頬に当て、照れている日向。
すると、グループが近づいてきた。
「あっ! あんた! こんなとこにいて! 連絡しなさいよね!」
やって来たのは、玄さんと同じ年頃の女性だった。
その後ろには控えめそうな若めの女性もいる。
「おぉ! お前か! 連絡忘れとったわい! ここの炎蔵達の隣にしたからな!」
「お知り合いなの?」
「コイツは儂の幼馴染みたいなもんだ」
「ふーん。すみません! お隣お邪魔して良かったんですか?」
「あぁ、良いのじゃ。拓人くんも知っておるしのぉ。ワシは炎蔵という。近くの神社で神主をしておるものじゃ」
「あぁ! 神の使いが居ると噂の?」
玄さんの奥さんがそう言うと目線がリエルに集まる。
「ん? 綺麗な人ね? この人が何か関係あるの?」
「ぶっ! はっはっはっ! やはり、リエルくんは女性に見えるようだ!」
玄さんが笑うと奥さんが戸惑いを見せる。
「な、何よ!? こんなに綺麗な人に綺麗って言って何が悪いのよ!?」
「コイツァ、男の人だぞ?」
「えっ!?」
奥さんが驚くと。
「僕は気にしてませんから大丈夫ですよ?」
「これは、失礼しました」
深々と謝罪する 。
「拓人くんにも言ったんですけど、どっちでも気にしませんから!」
「拓人は、この人を知ってるの?」
「うん! 綺麗なお姉ちゃん!」
何故、こんなに懐いているのか彼女は不思議がっている。
「前にあった事件の時だ。実は解決してくれたのは、リエルくんを初めとして、炎蔵と渉くんのお陰なんだ」
「お義父さん! それは、本当ですか!?」
後ろから出てきたのは若い女性だった。
「詩織さん、この方達があの時の協力者だ」
玄さんは、あの時は多くを語らず、解決した協力者がいると言う事だけを伝えていたのだ。
「皆さん! 拓人のこと、誠にありがとうございました!」
「ワシは何もしていない。リエルと渉くんが動いてくれたんじゃ」
「お師匠、俺こそ何もしてないっすよ! ただビルの入口で騒いだだけで! やったのは、リエルっす!」
「詩織さん、何も気にする事はないですよ? ちょっとお手伝いしただけです。玄さんが動いて、少し力を貸しただけですよ?」
リエルがそう言うと、玄さんが顔をずいっと出す。
「いいや! リエルくんがいなきゃ、解決出来なかった! これは、確かだ!」
「本当にありがとうございました!」
地面に頭が付きそうなくらい頭を下げる詩織さん。
「いいですよ! ほらっ! 皆で食べません?」
お重を進めるリエル。
玄さんの奥さんも持ってきたものを広げた。
「これも食べてちょうだいな!」
美味しそうなサンドイッチや、こちらにも唐揚げや、稲荷寿司や、おにぎりがある。
「すごぉい! 食べていいんですか!?」
出てきたのは日向だ。
「はしたないのじゃ! 日向!」
「良いじゃない! 食べていいって言ってるんだから!」
賑やかな花見はまだ続く。
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