三十三.お花見会 前編
「これは、このお重に詰めていいの!?」
「あぁ。それで良い。それ詰めたらこっちで渉と稲荷寿司作っとくれ!」
「わかった!」
前日に仕込みを終わらせていたおかげで準備が捗っている。
えんじいは漬け込んでいた肉を揚げ。
リエルは稲荷寿司を作る。
しかし、リエルは作り方を知らないため、渉が一緒に作る。
「今から俺が作るから見てろよ?」
そういうと上げを取り出す。
「まず、揚げを開いて」
箸で器用にパッと開く。
「で、酢飯を入れる」
手で軽く握った酢飯を揚げの中へ入れる。
「で、あとは閉じるだけ。なっ? 簡単だろ?」
「おぉ。すごぉい! わかった!」
同じようにやってみるリエル。
「やっぱりお前、覚えるのはえぇな!」
「そう? 教え方がいいんだよ」
「ま、まぁな」
そこで照れてしまうのが渉である。
2人で仲良く稲荷寿司を作っていると。
「おはよーーー!」
玄関から声がする。
ちゃんと準備する為に早起きしてきたようだ。
「あっ! 日向! おはよー!」
「おはよ! 何すればいい?」
「日向、お前は唐揚げを揚げるんじゃ!」
「えぇ? 私に出来る?」
「ぶち込むだけじゃ! 時間は測るから大丈夫じゃ!」
「わかったわよぉ!」
日向に付いていた妖を滅したが。
あまり影響がないようで安心した。
リエルは黙々と稲荷寿司を作る。
えんじいは見てみると。
太巻きを作っている。
きゅうり、卵、ツナ。
それは、ほんの一種類であった。
色々な種類の太巻きをえんじいが作っていた。
「えんじい! できたよぉ」
「できたか。後は太巻きを切って詰めとくれ」
「わかった!」
太巻きを切って詰めていく。
入り切りそうにない。
「えんじい? 全部入らないよ?」
「それでいいのじゃ。残りは朝ご飯にするんじゃよ」
「やった! 食べよぉ!」
お重に詰め終えると。
入り切らなかったものは皆で朝ご飯にした。
「そろそろお花見行きましょ? 手分けしてお重を持ちましょ?」
「それはいいけどよぉ、花見っていったら花咲公園だろう? あそこ場所取れんのか?」
「だから、早くから準備したんじゃない! 今から行けば大丈夫よ!」
日向に急かされ急いで家を出る。
花咲公園は歩いて30分くらいで着くのだ。
「ねぇ、見る花は綺麗なの?」
「沢山桜の木があって、一斉に咲いてるのよ! すっごい綺麗なんだから!」
「そうなんだ! 楽しみぃ!」
雑談しながら歩いていると。
あっという間に公園に着いた。
かなり人で賑わっている。
日向は小走りに中に入っていく。
何やら空いてる場所を取ろうとしているようだ。
「ここにしましょ!」
まばらに空いていた場所の一つを取る。
大きめのピクニックシートを敷き。
輪になって座る。
ふっと上を見たリエル。
これまで見たことがない光景に。
絶句した。
固まっているリエルに日向が声をかける。
「綺麗でしょ?」
「……うん…………凄く綺麗……こんなの見たことないよ」
「良かった! 喜んでもらえて!」
「それじゃ、お重を広げて食べるとするかのぉ」
「食べましょ! 私の唐揚げ美味しいわよ! 2度揚げしたんだから!」
「全部お師匠が指示してその通りにやっただけだろ? お前は揚げただけ」
「でも、私が作ったの!」
「うん! 唐揚げすっごく美味しいよ?」
リエルがパクッと食べて褒めると。
顔を赤くして照れでした。
「いいお嫁さんになるかな?」
「ん? お嫁って何だっけ?」
「えっ? えっと……男の人と一生一緒にいる女の人……かな?」
「あぁ! 番の事ね! それなら日向はいいお嫁さんになるね!」
ボンッと頭から湯気を出す。
プシューッと煙を吐いているようだ。
「リエルはすげえストレートに言うな?」
「えっ? 思ったこと言っただけだよ?」
「そりゃそうだけどよ」
リエル達の周りも賑わい出してきた。
チラチラ見られているようで気になるが。
出掛けた時はいつもなので。
最近は慣れてきたのだ。
「人が増えてきたな……その、リエルは大丈夫か? こんなに人多いの初めてだろ?」
「んー。確かに」
周りをグルっと見回すと。
一気に情報が流れ込んできた。
妖が沢山いる。
クラッとするリエル。
「おい! 大丈夫か?」
「どうしたんじゃ!?」
「いや、ちょっと情報を多く取り込みすぎた見たい……妖が沢山いる……滅した方がいいのかな?」
それにはえんじいも驚いた。
そんなに日常でいるとは思ってなかったからだ。
「でものぉ、リエル。皆が皆、悪い妖では無いはずじゃよ? 良く感じてみるんじゃ」
再びゆっくりと周りを見る。
たしかに、負のオーラを感じない妖が沢山いる。
「うん。いいオーラの妖が沢山いるね」
「そうであろう。助けられている人も居るんじゃ。それとのぉ、妖に憑かれているからと言って、全てリエルが滅さなければいけないわけではないぞ?」
「そうだね。全部は無理そうだね」
「助けを求められた時に出来る範囲で助ければ良い。でないとリエルはずっと気にすることになってしまうじゃろ?」
「うん」
「いいんじゃねぇの? 知らない人のことまで背負ってたらキリがねぇぞ? まぁ、助けられた俺が言う事じゃないかもしれねぇけどな」
「ううん。たしかに全員は助けられないと思う」
「リエルが皆を気にすることないんじゃない?」
「リエルや、力があると思うと全員救いたくなるじゃろうが力も使い過ぎれば毒になるぞい? みーんなリエルなしでは生きていけなくなってしまうわい」
それもそうだ。
押し寄せられても困る。
しかし、もっと力があれば皆を助けることが出来るのか。
そう思ってしまう。
「それでも、リエルは僕に力があればとか、そう思うんだろうな?」
「な、なんでわかるの?」
「そんなこったろうと思ったぜ! お人好し過ぎるんだよ! お前は!」
「うーん。でも、やっぱり出来ることならみんなを救いたいとおもっちゃうんだ」
「まぁ、できる範囲で助けるのがいいのじゃ。見つけ次第助ける必要は無いわい」
「そうだね」
「ねぇー! 早く食べよう?」
日向は我慢できなかったようだ。
お重を開いた後に放ったらかしにしていた為、ずっと待っていたのだろう。
「そうじゃのぉ。頂くとしようか」
「「「「いただきます!」」」」
リエルは初めての稲荷寿司を取る。
パクッと食べると。
目を見開いた。
「す……凄く美味しい。甘いけど出汁と醤油の香りがして……これ、美味しい!」
「ねぇ!? これ美味しいでしょ!?」
日向の方を向くと、顔がすぐ近くにあった。
マジマジと見てしまい恥ずかしくなる。
バッと稲荷寿司に視線を戻し、顔を隠す。
「えっ? 美味しくなかった?」
「ううん。美味しい!」
リエルは胸がドキドキしていた。
この感覚がなんなのかわからないリエルには不思議な感覚であった。
「よかった! ねぇ、これも食べてみて! 私が揚げたのよ?」
「味付けと時間測ったのはお師匠だけどな?」
「いいの! 私が揚げたんだから!」
2人を後目にパクっと唐揚げを食べる。
味付けの生姜とニンニクの効いたタレの香りがフワッと鼻を抜ける。
カリッとした食感とジュワーッと出てくる肉汁。
「!?…………これ……凄く美味しいよ! 日向!」
日向の方を向くと再び顔が接近する。
凄くいい笑顔で笑うリエルを間近に見た日向。
今度は日向が顔を赤くする番だった。
「う、うん……よかった!」
この2人は花より隣の子が気になるであった。
面白いと思って頂けた方、ブックマークと下の☆での評価を して頂ければ、大変励みになります!
よろしくお願いします!




