二十六.行方不明
正月も終わり。
ゆったりとした日常に戻った。
より一層、坐禅に集中し。
身体を作るために栄養のあるものを食べた。
そんなある日の夜、えんじいにお客さんが来た。
「ごめん下さい。炎蔵はいるかな?」
玄関にやってきたのは。
えんじいと同じくらいの年に見える。
白髪混じりのお爺さんであった。
「はい。今呼んできますね」
奥に行くとえんじいが部屋で休んでいる。
「えんじい。お客さんだよ」
「ん? ワシにか……今行くのじゃ」
立ち上がりリビングに向かう。
お客さんを見ると。
「なんじゃ。玄じゃないか」
「なんだとは酷い奴だ。ちと噂を聞いたもんで来たんだがな」
「噂……じゃと?」
「なんでも、色々と話を聞いて貰えるとか?」
「あぁ。その噂ならリエルじゃな」
「ん? そこの色男か?」
首を傾げながらリエルを見る。
玄は怪訝な表情をしている。
得体の知れないものを見るように。
「相談というかお願いなんだが……」
「お願い……ですか?」
「昨日からうちの孫が行方不明なんじゃ」
「玄、リエルが噂を流したのはそういう相談を受ける為では無いぞ? それは、警察の仕事じゃろうが」
「まぁ、そうだろうとは思ってたんだが……もう1つ噂を聞いてな」
「なんじゃ?」
えんじいが今度は怪訝な顔をする。
「神の使いの者がいると聞いてな……」
「!?」
「一体誰から聞いたんじゃ!?」
玄にえんじいが詰め寄る。
「な、なんだ? 眉唾だと思ってた噂だったが、本当なのか?」
慌てて取り繕うえんじい。
「炎蔵……その慌てよう。なんか心当たりが有るんだろう?」
「い、いや……」
しばらく沈黙の時間が流れる。
口を開いたのは。
「あまり言いふらさないで貰えると助かります。変な目で見られたくないので」
「やはり、お前さんが関わっているんだな?」
キリリとした目でリエルを見る。
一拍ため息をつくと話し出した。
「リエル、良かったのかい?」
「うん。力を使ってしまったのは僕だから。仕方がないよ。それで、お願いというのはお孫さんを探して欲しいということですか?」
「そう。できるかな? 身代金目的で何者かに拐われたかもしれないと思っていてね」
リエルは眉をひそめた。
なぜそう思うかが分からなかったからだ。
「リエルや。玄は医者なんじゃ。ここらでは1番大きい病院の医院長をしておった」
「では、今は息子さんが?」
「あぁ。息子が継いでおるが、なんとも人間味の無い男でのぉ。息子が居なくなったのになんとも思っとらん。金の方が大事だと思っとる」
「それは、何故なんでしょう? 自分の子供でしょ?」
「自分の子供ってもんが分かってないんだろうな。一緒に遊んだりもせん」
「なるほど……では、子供の命が掛かっていてもお金を渡すことはしそうにない……と?」
「そうだ。孫が殺されてしまうかもしれん。幸い警察が影で動いてくれているが、いつまでもつか」
「でも、警察が動いてるなら大丈夫なんじゃないですか?」
「それがな、昨日の夕方から捜索して、まだ手掛かりが見つかってないんだ。もう二日目の夜だぞ?」
居なくなってからもう丸一日たっている。
犯人からの連絡が来ないのもおかしい。
「身代金の要求は来たのかのぉ?」
「いや、なにも来ていないらしい」
「なんだか不気味ですね。探せるかどうか聞いてみます」
そう言うと目を瞑る。
月の神よ。
闇の中から子供を探すのに力を貸してください。
その子が殺されてしまう前に。
『あなた名前はなんというの?』
リエルです。
『あなたが噂のリエルですのね』
噂のと言いますと?
『神の間で噂になっているのよ? 可愛い子を助けてあげたとか良い奴に力を貸したとか、ゴミを片付けてくれたとか。そんな話だったかしら』
ゴミはたしかに最近片付けました。
神々で交流があるんですか?
『リエル。あなたの行いで交流が出来ているわ』
そうなんですね。
いいこと……ですよね?
『そうね。実際に心を通わせてみて分かったわ。綺麗な澄んだ心をしているのね……力を貸すわ。私の名は月読』
ありがとうございます。
力をお借りします。
目をあける。
「力をお借りできました。何かお孫さんが特定出来るものはありますか? 写真とか」
「ほ、本当か!? これが写真だ!」
その写真には玄と一緒に小学生低学年位の男の子が写っていた。
「ツクヨミの名において願う。この男の子を闇の中から探して欲しい。きっと暗い所にいるはず……」
ザワザワザワ…………
闇の波動が広がっていく。
神社を越え。
住宅街も越え。
ビル街にかかった時。
『闇がその子を見つけたわよ』
「この地図で何処になりますか?」
「こやつ誰と話してるんだ?」
玄が疑問を口にするが。
えんじいにシィーッと言われて黙る。
指をさしながら探っていく。
『もう少し右……その下よ』
「ここ……ですか?」
『そのようね』
「ここの様子って分かりますか?」
『闇に入りその中から覗けばみえるわよ』
「じゃあ、入ります」
床に闇が広がり、ズブズブと入っていく。
闇の中に入ると窓のようなところから、少年がガムテープで手をグルグルにされているのが見える。
見張りのような金髪で長い髪の男がいる。
奥からスーツの男がやってきて。
何やら指示を出している。
「戻してください」
ズブズブと床から出てくる。
「何をしておったんじゃ!? 大丈夫何じゃろうな!?」
えんじいが突然のことに狼狽えている。
「うん。見えたよ。見張りと支持してる人がいる。子供を助けるにはみんなをどこかに集めないと」
「リエル。ここがその捕まってる場所で間違いねぇな?」
ずっと話を聞いていた渉が聞いてきた。
「うん。間違いなくここのビルだね。地下かどうかはわかんないけど」
「リエルは、どの程度時間があれば救出できる?」
「5分もあれば闇に入って逃げれるよ」
「わかった。借りを返す」
「できるの?」
「任せろ。お師匠、携帯1回返してもらっても良いですか?」
「あぁ。良いじゃろう」
奥に行くと携帯を持ってきた。
渉に渡す。
「ありがとうございます」
携帯を受け取ると電話をかけ始めた。
「おう。俺だ。ちょっと手伝って欲しいことがあんだけどよ……悪ぃな。いつもの所に行くからよ……あぁ。じゃあ、また」
すると、奥に消えた。
再び現れた渉は出会った頃の黒ずくめであった。
「渉?」
「なんにも言わねぇでくれ。お師匠に連絡するからそしたら様子みて救助してくれ。後、俺が連絡したら警察にも通報してくれ」
「わかったよ。信じる」
「言われた通りにするから安心するんじゃ」
家から出ていく渉。
一体どこに行き、何をするというのか。
リエルは渉を信じて待つのみである。
玄は不安そうな顔でこちらを見ている。
「なぁ、本当に拓人は助かるんだろうな?」
「はい。大丈夫です。信じて待っていてください」
「信じるぞ?」
「はい。……あっ! 警察にはまだ、言わないでくださいね?」
「言っても信じられないだろうからな」
「ならいいです。とにかく合図を待ちましょう」
そういうと、静かに待つ。
その間に心の中で捕まっている所の動向を聞いて待っているのであった。
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