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二十二.怒涛の年末年始

「今週末は年末年始じゃ! 忙しくなるぞ! 大晦日には甘酒を毎年配っておってのぉ。元旦にはお守りを売ったり御札を売ったり忙しいのじゃ!  気合い入れるんじゃぞ!」


急に言われたその言葉にリエルは困惑する。

日向に教えられていたが。

まさかそんなに忙しいとは。


「今週は準備で忙しいぞ!」


「「はい!」」


お守りを箱に並べ。

箱におみくじを入れ。

札を並べ。


日々クタクタになりながら。

2人は働いた。

ラストスパートがやってくる。


「今日は今から甘酒を仕込むのじゃ! 外で大きい鍋に作るからのぉ! 大きいコンロの準備と鍋を運ぶんじゃ!」


「「はい!」」


今年は若者が2人いるから運ぶのが楽であった。

それまでは、えんじいが近所の人に手伝ってもらっていたのだ。


その近所の人がやってきた。


「えんさん! 若いのがいるから助かったんじゃないかい?」


「ホッホッホッ。そうじゃのぉ。それまでは正男まさおさんに手伝ってもらってたからのぉ」


「そうじゃぞ! こんな年寄りをこき使いおって! 腰も悪くてな。若いのに頼めて良かったわい」


「あぁ。今年からは大丈夫じゃと思う。安心せい」


「じゃあ、また、夜来るからの!」


「おう! 待っとるわい!」


手を挙げて去っていく。


2人でなんとかセットする。


「できたよぉ」


「うむ。良いな。では水を入れるんじゃ」


蛇口からホースで水を入れる。

半分位まで入れた。


「そしたら、後はこの酒粕をたっぷり入れるんじゃ」


ドボドボドボと酒粕を入れていく。

砂糖もドボドボ入れる。

長い棒を取り出してきた。


「これで酒粕を潰しながら混ぜるんじゃ」


「へぇぇ。なんか凄い匂いだね。鼻に来る」


「それは酒の匂いじゃろうな」


「なんかクラクラしそう」


「ホッホッホッ。匂いで酔いそうか? そのうち匂いは無くなるじゃろう」


鼻をつまみながらかき混ぜている。

渉は平気なようで、普通にかき混ぜている。


「渉は? なんで平気なの?」


「んー。うちの親酒臭いから……」


「そっかぁ。嫌だねぇこの匂いさせてんの」


「だろぉ? 毎日地獄だぜ」


「ここにこれて良かったね!」


また不意打ちのニッコリ笑顔。

しかし、渉はもう慣れたのだ。

ときめかないのだ。


グツグツなってきた。

匂いでクラクラするリエル。

外は暗くなってきた。


街灯がつくと明るくなる。

一旦リエル達も夕ご飯だ。


食べ終わるとすぐさま準備を再開する。

紙コップなど、大量に置いておかなければならない。


「そろそろ、人が来る頃じゃからな? 挨拶はしっかりのぉ」


「はぁい」

「はい!」


後30分ほどで年を越すというくらいの時間。

人が来始めた。


「こんばんわぁ」


「若いの! 頑張っとるなぁ!?」


「はい!」


えんじいのお友達の正男さんであった。

甘酒を入れて渡す。


ズズッと飲むと。


「うん! ここの甘酒は上手い!」


「良かった」


ニコッと笑いかけるリエル。


「君は可愛いのぉ。えんさんの孫かい?」


「そんなとこですね」

「こいつ男ですよ? こんな顔ですけど」


「なんと! こんなに可愛い男が居るんじゃのぉ。ははは!」


いいものを見たと言ってどっかへ行ってしまった。


「楽しいお爺さんだね?」


「だな」


それからは続々と来始めた。

次々と配っていく。


「あのー。甘酒貰えます?」


「はい! 今入れますね!」


にこやかにカップに入れる。


「お兄さん? ですか?」


「そうですね。よく間違われますけど、男です」


「えぇー! 綺麗な人! ねぇねぇ! レイン教えて貰えません!? 今度遊びましょうよ!」


「ごめんなさい! 僕、携帯持ってないんですよ」


「いやいやー。またそんな嘘を。今どき持ってない人居ないでしょ! そんなに私に教えたくないですか?」


詰め寄る女の人に困っていると。

横から渉がやってきた。


「すみません。こいつこの前海外から帰ってきたばかりで向こうに携帯忘れたらしいんですよ。今はホントに持ってないんです。新しいの早く買えって言ってるんですけどね!」


「そうなのぉー? おっちょこちょいねぇ。でもさ、お兄さんもイケメーン! レイン交換しましょ?」


「ごめんなさい。修行中の身なのでお師匠に携帯取られてて……」


「そっかぁ。ざんねーん。今度遊びに来るね!」


そう言うと去っていく。


「ありがと! 渉!」


「あぁいうのは適当にあしらえばいいんだぞ? リエルは声かけられると思うから慣れとかねぇとな?」


「えぇー! 面倒だなぁ」


「っつっても、まだ来ると思うぜ?」


その言葉通り、同じやり取りを10回以上はする事になる。


そんな中、日向が来た。


「やっほー! 頑張ってる!?」


「おっ! 日向きたなぁ! 日向も甘酒飲むの?」


「飲もっかなぁ」


「美味しいの? これ?」


苦々しい顔をしながらリエルが聞く。


「ここのは美味しいんだよ?」


「そうなんだ。余ったら飲んでみようかな。はい。どうぞ」


「ありがと! もうすぐ年越しだね!」


「そうだねぇ。そういえば僕が来てから大体1年経つんだよね?」


「そうだね! あの時は、言葉も喋れなくてねぇ?」


「そうだったね……」


「ふふふっ。なんか懐かしいなぁ」


「あっという間だったね」


「出会った今年が終わるね」


少しして声が上がる。


「「「ハッピーニューイヤー!」」」


「ふふっ。あけましておめでとう!」


「おめでとう?」


リエルが首を傾げていると。


「年を明けておめでたいってことよ」


「そっか。あけましておめでとう!」


少し離れていた渉が戻ってきた。


「おう。日向来てたのか。リエル、今度は御札とお守りの売り場で売り子さんだぞぉ。働くぞ?」


「ふぁぁぁ。眠いけど頑張るかぁ」


「リエル、渉。頑張って!」


「うん! 頑張るね!」

「おう」


売り子も忙しかった。

金額のやり取りがあるだけに慎重にお釣りを渡す。

中々神経を使う。

朝になる頃には疲弊していた。


「あーー。疲れたぁ」


しゃがんでため息をつく。

ずっと立ちっぱなしだった為。

足にも疲労が溜まっている。


「リエル、渉。良く朝まで耐えたのじゃ。後はバイトに頼むから休んでいいぞい」


「ホント!? やった!」


「バイトなんて雇ってたんですか?」


「毎年恒例で雇ってるんじゃ。ワシ1人じゃ無理じゃからのぉ」


ガッツポーズをして家に帰っていくリエル。

その後を追う。

入れ違いでバイトがやってきた。


リエルを見てガヤガヤしていたが。

当の本人のリエルは疲れすぎて素通りである。

家に入ると。


「あーーーーーー! 疲れたぁぁぁぁ」


畳に大の字になって寝っ転がる。


「お前、そのまま寝るなよ!?」


「……」


時すでに遅し。

もう寝始めていた。


「ったく。しょうがねぇやつだなぁ」


毛布と羽毛布団を上からかける。


「俺は、飯食って風呂入って寝よう」


渉はキチッとしてから寝るようだ。

外は人で賑わっている。

外が騒がしくても疲れ果てたリエルには関係なかった。


スヤスヤと眠るリエル。

いい夢を見ているのだろうか。


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