十九.切ないクリスマス
「普段は仏教ではやらんが、クリスマスじゃからパーティーをするのじゃ」
「ん? パーティー?」
「そうじゃ。クリスマスじゃから」
「クリスマスって何?」
「んー。プレゼント交換とかをする日じゃ!」
「へぇ」
そのやり取りを見ていた渉は若干呆れていた。
「お師匠、そんな説明でいいんですか?」
「良いじゃろ」
「説明したってわかるまい?」
「まぁ、確かにそうですね……」
この頃、渉はえんじいをお師匠と呼んでいる。
リエルはえんじいのままだが。
「そこでじゃ、リエルと渉と日向も連れて買い出しに行ってくれんか?」
「わかった」
「わかりました」
この日は2人とも私服で出掛けることにした。
神社を出ると住宅街に入る。
凄い視線を感じる。
前に出かけた時と同じだ。
日向にはこれには慣れないとダメだと。
そう言われていたのだ。
日向の家に着く。
呼び鈴を押すと日向がでてきた。
「っ!……リエル……あんた相変わらずね」
「んー? 何か変?」
「変ではないわ。むしろ似合いすぎているわ。今出るから、ちょっと待ってて?」
若干顔が赤かった気がするが。
渉も十分顔面偏差値は高いと思うが。
リエルが強烈なため余り目立たない。
しばらくすると日向が出てきた。
「ゴメン! おまたせ!」
パーカーに上着を着て、ショートパンツにスニーカーというボーイッシュなコーデであった。
日向は綺麗めというより、どちらかといえは可愛い顔をしている。
リエルから見ても似合っていた。
3人で歩き出す。
前にも行ったショッピングモールで買い物だ。
そこまでは30分ほど歩く。
日向は渉の普通の私服姿を初めて見たのだ。
何故か頭を抱えている。
「日向? どうしたの?」
「い、いや、この2人と歩かなきゃ行けない私。目をつけられそう……」
「ん?……どういう事?」
「リエル、あなた自分の顔どう思う?」
「えっ? 何も思わない」
「でしょうね。渉は?」
「えっ? おれ? んー。悪くは無いと思うけど?」
「はい! その程度!」
日向はこのイケメン2人と歩いていると妬みの矛先が自分に来るのが分かっているから嫌なのだ。
「何したのさ? 顔なんてどうでもいいじゃん! 今日パーティーなんだって! お肉買ってきてって頼まれたんだよ!? 骨付いてるやつだって!」
「どうでもいいなんて……頼まれたのローストチキンね。他には?」
「んーと、ケーキとジュース!」
「私荷物持ち要員でしょ?」
「そうなの? 一緒に買い物できるからいいじゃ?」
ニカッと日向に笑顔を振りまく。
顔を赤くする日向。
単純である。
それを見ていた渉は呆れる。
「もう、お前らだけで行きゃいいのに。何で俺も行かされるのか……」
「あんたねぇ! こっちの苦労も知りなさいよね!」
何故か怒られた渉。
そうこうしているうちにショッピングモールにたどり着いた。
今回は食品売り場に行く。
みんな買い物に来ているようで前来た時の倍以上人がいた。
「わぁぁぁ。こんなに人がいるの初めて見た」
「ふふふっ。そうね。こんなに人がいるのはそうそうないかもね」
リエルの驚いた表情が可愛く。
笑ってしまう日向。
人混みをかき分け目的のローストチキンをカゴに入れる。
「ジュースってこれでいいんだっけ?」
「炭酸のサイダー?」
「なんかこの前結局飲まなかったからさ」
「そうだっけ? なら買って飲みましょ? あと、飲めなかった時のためにオレンジジュースも買いましょう」
「そうだね。渉はなんかある?」
「俺はそれでいいよ」
「そっ。じゃあ、買っていこうか」
会計を済ませるとケーキ屋さんへ向かう。
「えんじいはなんて言ってた?」
日向がリエルに聞く。
「んー? 丸いの買ってきたら? って言ってた」
「ホールで買うのねぇ。何ケーキがいいの?」
「あのさ、ケーキって何?」
「……そっか……リエルはそこからか」
「お前そんなんで良くお使い頼まれたな?」
呆れながら渉が苦言を言う。
「渉がいるから大丈夫だと思ったんじゃなぁい?」
「頭が痛いわ……」
手を頭に置きながらはぁというため息をついている。
「ま、なんでもいいんでしょ? 私はチョコレートケーキがいいわ!」
「甘すぎないか? 普通のイチゴのケーキでいいんじゃねぇの?」
「なんでよ!? ビターなチョコレートケーキにすればいいじゃない!?」
「ビターかどうかわかんのかよ!?」
言い合う2人の間に入る。
「まぁまぁ。じゃあさ、このちっちゃいのを好きなやつ買えばいいんじゃない? そしたらお金も足りるだろうしさ」
「うー。いいのかしら?」
「それっていいのか?」
「喧嘩するよりいいでしょ? 僕が言って買ったことにするからさ! ねっ?」
「「わかった」」
それぞれ好きな物を選んで買う。
ちなみにえんじいは普通のショートケーキである。
もちろん、日向が選んだ。
リエルは定番も何もわからないからだ。
「よしっ! じゃあ、帰ろう!」
ショッピングモールを出て神社に向かう。
街は恋人やグループの人達で賑わっている。
ビル街に差し掛かった。
最初はリエルが余りの高さに驚いたものである。
「キャーーーーッ!」
声がする方を見る。
すると、指さして叫んでいる。
指している方を見るとビルの上に今にも飛びそうな人がいる。
「あれ? 人?」
リエルが言うと日向と渉も見上げる。
「あれ! 自殺しようとしてるわ!」
「でも、今からだと止めようがねぇぞ!?」
2人とも狼狽えている。
風がなびいている。
風でクッションを創れば助かるか!?
風の神よ!
どうか、僕の声を聞いて!
人を助けたいんだ!
力を貸してください!
『風は自由なんだよ? 誰の言うことも聞かないよぉ』
応答があった。
ここからだ!
僕も自由は好き。
縛られるの嫌だよね?
でもさ、人が死ぬのは見たくなくない?
『死んだら自由にできないもんねぇ。僕は死にたくない』
あの人も助かったら未来がある。
なんとか自由を味あわせてあげたいんだ!
『そうだね! みんな自由を満喫したらいいよねぇ! わかった! 力を貸して仲間を増やそう! 僕の名前は志那都! さぁ、自由仲間を増やそう!』
よしっ!
力を借りれた!
その瞬間、男が落ちてきた。
「やべぇ! 飛び降りちまった!」
「キャーーー!」
2人は絶叫する。
「シツナの名において、あの人を風邪で受け止めて!」
ブワァァァァ
上昇気流が発生する。
男は徐々に速度を緩め。
ボスッと、地面に落ちた。
「よかった」
安堵したリエルだったが。
「俺は死ぬことも出来ねぇのかよ!? 何でだよ!? 死にたかったんだよ!? もう生きていたくねぇよ!」
地面を叩きながら悔しがっている。
通報を受けた警官が来て。
その男を抱えあげて事情を聞いている。
男は飛び降りたが、何故か助かったと説明していて。
落ち着くまで連行されたのであった。
居なくなると、呆然とするリエル。
「あいつ、助かったのに悔しがってたな?」
「なんなの? 助かったのに……」
「……」
リエルは無言であった。
日向と渉が顔を覗き込む。
顔色が悪い。
「リエル? お前が助けてくれたんだよな?」
「リエルどうしたの? あの人助かったわよ?」
それからは、無言であった。
パーティーも何も台無しである。
家に戻って2人が盛り上げようとしても無言であった。
えんじいとも口を聞かずボーッとしている。
2人がえんじいには事情を話した。
なんとなくそうなった理由がわかったようだ。
2人にはまた明日来るように言って帰す。
「リエルや、今日はまず寝る事じゃ」
そう言って声をかけると無言で寝る準備をする。
リエルはその日寝ることが出来なかった。
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