十七.隠れた感謝
土砂崩れから数日。
一日は体力の回復の為に寝ていたリエル。
その後は再び仕事を始めた。
そんなある日。
「しつれーしまーす!」
「失礼します!」
玄関で呼ぶ声が聞こえる。
「えんじい! お客さーん!」
えんじいは奥からやってきた。
「何じゃ?」
玄関に出て行くえんじい。
「あっ! 神楽炎蔵さんですね? この前の土砂崩れの時は、ご協力ありがとうございました!」
「は、はぁ。おたくらは誰なんじゃ?」
「あ、すみません。あの時救助隊で来ていた小林と言います!」
「同じく小田です!」
2人はビッと敬礼する。
「ほう。その、救助隊の隊員さんがどうしたんじゃ?」
「はい。その……謝りに来たのと……感謝を伝えに来ました」
「謝りに? どういう事じゃ?」
えんじいの表情が曇る。
言っている意味が分からなかったのだ。
「あの時の青年は居ますか? 銀髪の」
「あぁ。リエルのことかの?」
「えぇ」
「奥におるぞ? リエルー! こっちに来るんじゃ!」
奥で掃除をしていたリエルがやって来る。
「どうしたの?」
「この人達がリエルに用がある様なんじゃ」
「そうなの? どうしたんですか?」
「あの、土砂崩れの時に救助にあたってた救助隊の隊員なんです」
驚くリエル。
「あの時の? どうしたんですか?」
「いやぁ、あの時土砂の中から神様のように人を救ってくれたじゃないですか? それを言っても信じて貰えないと思ったんです。だから、救急隊が救助したことにしてしまいました! ホントにすみません!」
「あ、良いですよ? むしろ、あれを話されたら大変なことになってたと思うんで……」
「えっ!? 自分の活躍を取られたんですよ? 普通怒りませんか?」
「それを言われたら僕が普通じゃないみたいですね。ふふふっ。」
「い、いや、そういう訳では」
小林隊員は焦っている。
それを助けたのは小田隊員であった。
「今回の土砂崩れ、規模があまりにも大きく、私達では1人も助けられなかったかもしれませんでした。リエルさんのおかげです! 本当に、有難う御座いました!」
「有難う御座いました!」
照れたように頬をポリポリとかいている。
しかし、少し暗い顔になる。
「でも、2人を助けられなかったんですよね。それが悔やまれます」
「それは……私達も悔しいです。救急隊といいながら、あの時はリエルさんが助け出した人達の治療をするしか無かった」
小田隊員が顔を歪めながら話す。
下を向きその時のことを思い出している。
「私達は、色々な現場に行って救助を行っていますが、全ての人を助けられるわけではありません。その度にどうすれば良かったのか、改善点があれば改善しています。しかし、やはり助けられない人はいるのです。リエルさん1人で背負うことでは無いですよ!」
「そうです! 1人で背負わないでください! 助けられなかった2人のことは救急隊全員も背負います! あんなに沢山助けられた! 最善だったんです!」
小林隊員と小田隊員が必死にリエルに訴える。
「有難う御座います。少し気が楽になった気がします。勝手に1人で背負ってました……」
ニコッと笑顔で話すリエル。
それをみて少し安心した小林隊員。
「マスコミにバレたらきっと、リエルさんが食い物にされます! それを防ぐ為に今回嘘をつきました。幸い、目撃者は私達救急隊のみ。世間にはバレないようにしてくださいね?」
忠告を口にする。
「はい。有難う御座います。気をつけます……でも、人が助けを求めていたら……そんなこと考えていられないと思います」
困ったような顔をしながら答える。
「その気持ちはわかります。私達で力になれることがあったら力になります!」
「はい! その時は助けてください!」
お互い笑いながら握手をする。
小林隊員の手はゴツゴツしていた。
この手でいくつもの人を助けてきたのだろう。
「では、私達はこれで」
「わざわざ、すまんのぉ。ワシらが言ってもリエルは1人で背負っておった。少し軽くなったようじゃ。感謝するのじゃ」
「いえ、お力になれたのであれば良かった!」
「リエルのことはあまり公にせんでくれ」
「それは、わかっています……この前のことも奇跡が起きたと、この地には守り神が居るようだと……そんな感じで誤魔化してるんで」
「手を煩わせて悪いのぉ」
「いえ! その位しか出来ませんから……」
2人は深々と頭を下げる。
「私達に代わり、人命救助して頂き、本当に有難う御座いました! このことは、救急隊一同一生忘れることはありません! 神に感謝の気持ちを忘れず! 精進していきます!」
「有難う御座いました!」
公には出来ない感謝の気持ちを言いに来てくれた。
それだけで、十分嬉しい。
自分のした事が間違いではなかった。
あれが最善だった。
そう思えたのは、この2人が来てくれてからだ。
僕自身もこの人達に助けられた。
「こちらこそ、有難う御座いました!」
リエルも礼をし。
隊員達は去っていく。
「リエルや、良かったのぉ。あの人達が来てくれて」
「うん。良かった。こっちも救われたよ」
「まだまだ、精進が必要じゃな?」
「そうだね。やっぱり救助隊の人達って凄いね? 色んな救えなかった人のことを背負って、尚、次々と人を助けてるんだもん。僕なんかより、よっぽど神様みたいだよね」
「ホッホッホッ。そうじゃなぁ。凄い人達じゃ」
奥に戻っていく。
そこには、話を聞きながら待っていた渉がいた。
渉はリエルの表情を見て安心したのだった。
「リエル、表情が元に戻ったじゃねぇか。良かった。俺も感謝を伝えればよかったぜ」
「いいって! 恥ずかしい!」
「なんでだよ! ここ数日、リエルの顔がずっと暗かったのを気にしてたんだぞ!? それが、あの人達が来てくれた事で表情が戻った! 感謝しかないね!」
「分かったって! もう大丈夫だよ。ありがとう」
「なら、良いけどよ。飯にしようぜ?」
渉が準備してくれたご飯を盛り付けていく。
渉は自分が料理を作れるくらいまで成長していた。
これは、一重に渉の努力の賜物であった。
今では野菜を切るのもお手の物である。
食卓を囲むと、食事を始める。
「「「いただきます!」」」
「そういえば、マスコミには救急隊が救助した事にしたんだろう? どう説明したんだろうな?」
「んー。それは聞かなかったなぁ」
「ワシは聞いたぞ。何やら土地の守り神じゃとかそんなことを言って誤魔化したようじゃのぉ。まぁ、大勢助かったからのぉ。そこまで問題ないじゃろう」
えんじいが聞いた事を教える。
それを聞いた渉は笑った。
「あっははは! 土地の守り神か! 間違っちゃいねぇな! リエルはこの土地を守る神様みたいなもんだ!」
「それは、大袈裟だよ! 神様なんかじゃないんだからさ!」
「けどさ、似たようなもんじゃねぇか? 神の力を借りて人を助けられるんだからよ?」
「まだまだ、精進が必要だよ」
「そうか?」
「そうだよ……まだまだだよ」
そう言った後は黙々とご飯を食べる。
食べ終わると。
口を開いた。
「えんじい? 坐禅って呼吸法を頑張ったらもっと力使えるようになるかな?」
「そうじゃのぉ。更に使えるようになるじゃろうな」
「うん! もっと頑張ろう!」
いい表情になったリエル。
今回の災害はリエルを成長させた。
救急隊との出会いもいい出会いになった。
これからさらに成長していくことだろう。
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