十四.BBQ 続
「肉。もっと食べないの?」
渉の傍にやってきてリエルが聞く。
「遠慮してそんなに食べれねぇよ」
「そんなに遠慮してたら一緒に住んだら疲れるよ?」
覗き込んでくるリエル。
その整った顔に思わず目をそらす。
「そうだな。その内慣れると思う」
「そうだよ? 修行しだしたら遠慮とか、そういうの吹っ飛ぶと思うけどね」
「そんなもんなのか?」
「忙しくなると思うよ」
そんな話を2人でしていると。
間に日向がやってくる。
「何よぉ? 2人で話してぇ。私も入れてよ」
「ん? 2人で修行の身としてえんじいの所で暮らそうとしてるんだ」
「えぇーっ!? えんじいそうなの!?」
「うるさいのぉ。まだ、決まっておらん。渉くんの親の許可が必要じゃ」
「許可を得れたら一緒に住むんじゃん! 何よ! ズルい!」
興奮のあまり、口を滑らせた日向。
顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「ん? 日向も一緒に修行したいの?」
「ズルいとはなんじゃ? そんなお泊り気分では困るんじゃ!」
えんじいに怒られてしまった。
シュンとなって下を向いたまま椅子に座る。
「いつも日向が来る日あるでしょ? あの日は泊まったらどう?」
隣にそっと近づいて問いかけるリエル。
一緒に泊まりたいと言っているとバレてしまい。
さらに顔が赤くなる。
「えんじい? 日向が来た時に泊まるのはいいよね? いつもみたいに掃除は一緒にするからさ」
「勤めを果たすならよいじゃろう」
日向には厳しいがリエルに甘いえんじい。
あっさりとお泊りの許可が出た。
「ほら? えんじいもそう言ってるよ? そうしよ?」
下を向いたままコクッと頷く。
よしっ! と言って頭をポンポンッとする。
そうして再び肉を焼きに行く。
日向の頭から湯気か出ているように見える。
幻覚だろうか。
網の元へ戻ってきたリエルに。
「おまえさ、あれ素でやってるの?」
「す? って何?」
「うーんと、いや、なんでもない。リエルには愚問だったわ」
「? あっ! 焼けた! これもおいしぃぃぃ。これなんだっけ?」
「それは、ハラミだな」
「んーーーっ! 肉最っ高!」
リエルの心が綺麗すぎて恐い。
そう思ってしまうのは渉だけだろうか。
「リエル、野菜も食べんと、バランスが悪いぞ?」
「はぁい」
ピーマン、キャペツ、人参、玉ねぎ。
一通りを食べるリエル。
野菜が嫌いとかそういうのはないようである。
ただ、肉が好きなのだろう。
再び肉を食べ始めた。
「うーーーーん。おいひぃ」
「リエル見てると遠慮してるのが馬鹿らしくなるわ。食おう」
「うん! 食べよう!」
2人でバクバク食べ始めた。
そこに迫る影。
「私も食べる―!」
突撃してきて肉をぶんどる。
なんとか復活したようである。
3人で網の上の肉争奪戦が始まった。
ジューと焼いている肉を見つめてジッと待つ。
サッと肉をかっさらったのは日向。
「日向? それまだ焼けてないよ? お腹痛くしちゃうよ?」
日向を覗き込んで見つめるリエル。
「うっ。そ、そうかしら。たしかに赤いかも……」
言われた通り網に戻す。
すると、スッととりパクッと食べられた。
「ちょっとぉー! 何で食べちゃうのよーー!」
「おいし!」
ニコッと笑って食べているのは、リエル。
こいつ、知恵をつけているようだ。
それなのに、悪気なく笑顔なものだから、日向は何も言えない。
「ねぇ! 自分の肉決めよう! 人のは取らないこと!」
「あはは! いいよ? そうしよう」
自分のは自分ので焼いて食べることに決めた。
渉は端の方で焼いている。
それを見たリエル。
悪戯心という物がでてきたのだ。
渉はじっと見て、真剣に見ていた。
その肉が突如消え去った。
「なっ!」
バッと見上げると、箸に挟まれた肉が。
持っているのは、リエルであった。
「おい! 食べんなよ!? 俺のだぞ!」
ニヤリと笑う。
あーんと口に運ぼうとする。
「あーーーっ!」
一緒に口を開けてしまう渉。
「はい!」
渉の口にポイッと放り込む。
「ふふふっ。おいしい?」
ふふふと笑う顔が可愛すぎる。
モグモグしながらも、顔が赤くなる渉。
肉の味が分からない。
「う、うまいよ」
「良かった!」
ニカッと笑い野菜を食べ始める。
「はぁ。心臓に悪いわ」
その様子を見ていた日向。
若干のヤキモチを妬いていた。
モヤモヤした気持ちを抱きながら肉を食べていた。
「もう肉はないのじゃ」
「えぇぇーーー!! もっと買ってくればよかったぁーーー!!」
リエルが絶叫する。
「充分食べたじゃろ? 日向もそろそろ帰らねば、彼奴が心配するじゃろう」
「あの人は心配なんてしないわよ。まぁ、でも今日のところは帰るわ」
「じゃあ、渉! 一緒に送っていこう!」
リエルが提案する。
「おう。行くか!」
同意して行く気な渉。
神社を出て階段を下りる。
渉は気を使って後ろを歩いている。
「楽しかったなぁーー。 またやろ?」
「そうだね。また、皆でやろう!」
楽しかったという日向。
リエルも同意すると渉の方を見る。
「ね? 渉?」
「お、俺かよ!? まぁ、楽しかったよ」
「すなおーーーっ!」
「素直じゃわりぃかよ!」
「あはは! 柄じゃないのよ渉は!」
「「「あははは!」」」
薄暗い住宅街に笑い声が木霊する。
楽しそうに帰る3人。
日向の家に着いた。
「じゃあ、またねぇー!」
「じゃあな」
2人に別れの挨拶をされる。
照れくさそうに答える。
「うん! またね! 今度は泊まるんだから!」
「次ね!」
「また今度な!」
別れる日向。
振り返って神社に帰る。
「日向、良い奴だったな?」
「ふふっ。でしょー? 日向は良い人だよ」
「リエルはさ……どこから来たんだ?」
渉はあえて踏み込む質問をする。
聞くかどうか考えていた。
この際、思い切って聞いてみることにしたのであった。
「うーーーーん。難しいねぇ。正直、わかんないっていうのが本音かなぁ」
「自分でも分かんねぇのか」
「うん。なんか、全然違うところから来た気がしてる。言葉も通じたかったから。今言葉が話せるのは、えんじいと日向のおかげなんだ」
「ふーん。日向とは長い付き合いなのか?」
「ここに来た時からかな? この神社の下の辺りに気がついたらいて、それで階段登ったらえんじいにあったんだ」
「へぇ。ほんとに突然居たのか?」
「そう。本当に突然だった。えんじいは神隠しじゃないかって言ってたんだけど……」
神社のある階段上を見上げる2人。
木々のざわめく音が聞こえる。
「僕さ、神様と話ができるんだ」
「はっ? ホントの話?」
「うん。神通力っていうんだって、えんじいが言ってた」
「はぁぁ。すげぇことできんだな?」
「僕はさ、神の力を借りてみんなを助けられたらいいなと思ってるんだ」
「なんか、神みてぇだな?」
「神様なんて烏滸がましいけど、人助けがしたいってことなんだ」
「ふぅーん。いいんじゃねぇ? 俺は助けられたと思ってる。すげぇ感謝してるよ」
「そうなの? 話聞いただけだよ?」
「俺はな、今までまともに話を聞いてくれる人がいなかった。流されたり、適当な返事されたり。リエルほどちゃんと聞いてくれる人なんていなかった……だから…………ありがとな」
涙声になる渉。
「おれさ……今日みたいな楽しいと思ったの初めてだった…………えんじいとリエルと住めるかと思うと、ワクワクしてる。絶対親を説得するから……」
「うん! 無理だったら僕とえんじいが行くから」
渉は天を見て。
涙を堪えた。
「ありがとな」
2人は神社に戻るのであった。
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