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乗客達


 他の客室に来た未緒は、この銀河鉄道にこれだけの客が乗っている事に驚いた。そういえば、『機械の星』で降りた時大勢の客が休憩所で休んでいるのが見えた。未緒はその乗客一人ひとりを見ながら、客室を移動していく。



 銀河鉄道の乗客達は千差万別だった。未緒達のように一人で乗ってきた者、家族を連れている者、それから大きな荷物を抱えている者も居た。また、長い旅の退屈を紛らわす為に楽器を持ち出して奏でている客が居る。その客の周りには人が集まっていた。



 だが、そこに近づかない客が居た。その客は男の人で、和服を着ているが、頭には牛の骨を被っていた。彼はずっと腕を組んで、俯いている。未緒はその人に近づいて声を掛けた。

「どうして、近づいて聞かないんですか?」

彼は未緒の方を向かずにこう答えた。

「ここからでも聞こえるから、いい」

未緒はしばらくその客の事を見ていたが、やがて、音楽を奏でている客の方へと向かっていった。



 どうやら、音楽を奏でている客は旅芸人だそうだった。その客はポンチョを羽織っていて、手にはギターを持っている。その客の周りには自然と人が集まっていた。久々に聞いた楽しい音楽に、未緒の心は自然に沸き立つ。


 そして、その客が音楽を奏で終わると、大きな拍手と歓声が舞起こった。そして、それぞれの客室に戻って行く。

 だが、未緒が帰らずにしばらくじっとその客の事を見ていた。すると、彼がそれに気付いて声を掛ける。

「子供の君にはこれをプレゼントするよ。この旅が少しでも楽しくなるようにね。」

そう言ってその客は、未緒に笛を手渡した。どうやら、彼が昔使っていたものらしい。

「お兄さんも『終着駅』に向かうんですか?」

「僕は『終着駅』までは行かないよ。次の『秘宝の星』で降りるつもりなんだ。」

「そうなんですか?」

「その星の人に呼ばれているからね」

そして、その客はギターをしまって席に戻ってしまった。



 未緒は、貰った笛を吹きながら類達が居る客室に戻って来た。

「ただいま、二人とも」

「お帰りなさい、未緒さん。」

未緒は笛をしまって類の膝に座った。

「『秘宝の星』、楽しみですね。」

「秘宝ってなんだろう、綺麗なのかな…。」

「けれども僕は、どんな秘宝よりも人との繋がりが何よりも大切だと思ってますがね。そして、失ったら取り返しがつかない」

類は未緒を抱えたまま、俯いた。

「僕は、『神の落とし子』ですから。」

「それってどういう事?」

「そりゃそうですよ、分からないように僕がそう言ったのですから。」

類は未緒を膝から降ろして、窓の外を見た。もうすぐその『秘宝の星』に着くのだろうか、一つの惑星が近づいているのが見える。


 次の星ではどんなものに出会えるのだろうか、未緒はわくわくしていた。

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