機械の身体
未緒達が機械の星に居る頃、車掌も同じように機械の星にやってきていた。車掌は監視の目を小さな身体で掻い潜り、壊れてスクラップ行き寸前になった機械を持って帰っていた。
そして、銀河鉄道の運転室に戻った車掌は、同じような風貌の機関士と話していた。
「壊れていますが、使えそうですよ」
機関士はその機械を見てこう言った。
「“あのお方”の実験の役に立てばいいんだが…」
「ですがね」
車掌は、その機械を倉庫の中にしまった。そして、天上を見上げてこう言った。
「あいつの身体も戻ればいいんですがね。」
「いいさ、あいつにとっては、この身体で夜空を旅するのが楽しいだろうからな」
機関士は、そう言って運転室の奥の方へ向かっていった。
車掌達は何かの目的を持ちながら旅しているのだそうだ。
「みんなの身体が取り戻せるのならいいですけどね」
「“あの方”もそれを望んでいるはずだ」
倉庫の中には、これまでの旅で拾った様々なものが押し込まれていた。どうやら、車掌達は“あの方”の目的の為に様々な惑星を旅しながらものを集めているそうだ。
車掌は倉庫の中に入って保存食のパンを取って食べた。機関士の方にもあげようと思ったが、機関士は忙しそうにしていた。恐らく、次の出発の準備をしているのだろう。
機械の身体があれば、未緒に会って一緒に旅する事が出来るかもしれない。そう考えた私はないはずの首を振った。もし、今未緒に会ったとしても未緒は私の事を忘れているはずだ。それに、機械の身体なら未緒は私の事を不審がるかもしれない。
私は未緒の事をずっと見守っているが、本来、未緒のこの旅には私は必要ないはずだ。そのうち私も未緒の事を忘れ、意識を失い宇宙の塵になるであろう。私よりも、未緒には出会うべき存在がきっと居る。
車掌も、自分の仕事に戻っていったようだった。未緒達もそろそろ客室に戻るはず。私は、運転室を離れ、未緒達の様子を見ることにした。




