虚の反乱
『宇宙の虚』は窓から入ってくるだけでなく、乗客達の身体から抜け出して、未緒達の前に現れた。デネブ達は戦おうと構える。
「やるしかないようだね」
デネブ達は未緒の前に出て、『宇宙の虚』達を倒しに向かった。まず、ベガとデネブは身体を変化させる。その背後で、アルタイルは『宇宙の虚』達を操り、窓の外へ出していた。その一方、ゼットは今回は攻撃をしていなかった。デネブ達の背後で何かをしている。ベガは剣を振るい、デネブは髪の毛を込めた矢を放った。
その時だった。未緒のすぐ前に『宇宙の虚』が迫ってきた。それに気づいたデネブは慌てて駆け寄り、未緒を庇うと、目の前の『宇宙の虚』を倒した。
「大丈夫?」
「うん…」
デネブは未緒の無事を確認と、妹達の元へ戻っていった。
「カッコイイなぁ…」
未緒がそれに見惚れていると、類達の周囲にも『宇宙の虚』が現れていた。それをゼットが一瞬で倒す。
そして、客車に居た『宇宙の虚』は消えてしまった。何故突然乗客の中に入っていた『宇宙の虚』が抜け出したのだろう。未緒達は疑問に思う。
「それにしてもどうして急に現れたの?」
「それは分からないけど」
デネブは、髪の毛を元に戻して弓をしまった。
「乗客に侵食していた『宇宙の虚』が抜け出したのだろう」
ゼットは先程の様子を見てそう言った。そして、床に落ちていた『宇宙の虚』が暴れた残骸を拾う。
「今後も同じような事が起こるかもしれない」
「それはどういうことですか?」
「『宇宙の虚』は一生同じ宿主に寄生するとは限らない。自分の身体に値しないと考えた場合には、抜け出して別の宿主を探すこともある。宿主が死んでしまえば虚も死んでしまう。そうなる前に別の宿主を探そうとしているのだろう。」
ゼットによると、未緒達を含む乗客達は『宇宙の虚』の侵食を克服しているが、『宇宙の虚』自体は未だ体内に残っているのだそうだ。そうなると、未緒達は『宇宙の虚』を宿しながら旅していることになる。他の乗客達はそれを知っているのだろうか。
「俺は研究に戻る。今回のことを詳しく調べなければならないからな」
ゼットはそう言って、一人未緒達から離れていった。
研究室に一人戻ったゼットは、埃を被ったトランクを開けた。その中には、銀色の王冠と杖が入っていた。二つには、宙に浮かぶ緑の石が付いている。どうやらそれはゼットの故郷である『覇王の星』の王の証なのだそうだ。
「これを使う時が来たようだな。俺の故郷にも近づいている、そろそろあの星にも近くなるな」
ゼットは窓の外を見ながら、先ほど拾った残骸をカプセルの中に入れた。




