秘宝をこの身体に
そして、未緒達はノアと共に銀河鉄道に辿り着いた。銀河鉄道に乗り込んだノアはまず、ゼットを探す為に客室を渡り歩いていたが、見つからなかったようだ。
「ゼットさんは見つかりませんでした…」
「どうしてその人を探しているの?」
「私はその方の手術を受けて、そのお礼をしようと思ったのですが、見つからないなら仕方がないですね…。」
ノアは未緒達と同じ席に座った。そして、持っている荷物を取り出す。
ノアが持っている荷物は最小限だった。リュックの中には着替えと日用品と、最低限の食べ物とお金だけだ。『秘宝の星』の者だというのに、秘宝は一つも持ち合わせていない。一つでも持っていれば、別の星で大金に変えられたかもしれないのに、それらしきものは荷物の中に入っていなかった。
「秘宝は持っていかなくて大丈夫なの?今だったら大事なものがあったら取りに戻れるけど。」
「いいんです、父上も母上もそんな秘宝よりも私の命の方が大切だとおっしゃるので…。」
「そうなの?」
「実を言うと、私はこの『秘宝の星』の王女です。」
ノアが『秘宝の星』の王女と聞いて三人は驚いた。そういえば、城に入ったが王族らしき人は一人も見なかった。働いているのは家来ばかりで、王族の人間は一人も居ない。奥の方で働いているのだろうか。
それにしても、王族の、しかも王の娘であるノアがここで旅をしていいのだろうか、萌香は不思議に思う。
「国のことは大丈夫なの?」
「父上も母上も私が無事ならそれでいいみたいです…。」
ノアはそう言って悲しそうな目をした。
これ以上この話は出来ないと思った萌香は、先程類が言っていた話を思い出して話した。
「そういえば、ノアちゃんは『秘宝の星』最大の『秘宝』の事は知ってる?」
すると、ノアはこう答えた。
「はい、王家に伝わる最大の秘宝、『蘇りの結晶』ですね。秘術によって造られた秘宝で、人を蘇らせる力があります。」
「でも、その話はお城の人は話してなかったし、中にもなかったんだけど…」
「お城にはありませんよ、何故なら私の身体の中ですから」
「身体の中?」
「秘宝は身体にとっては異物です。ですが、『宇宙の虚』を克服した王族の私なら身体の中に取り込めるだろうと考えたゼットさんは、私に『蘇りの結晶』を身体の中に埋め込みました。」
ノアはそう言って胸を抑えた。どうやらその中に『蘇りの結晶』が埋め込まれているようだった。秘宝を身体に埋め込んで大丈夫なのだろうか、手術をしたゼットという技術者はそれに躊躇いはなかったのだろうか。私は疑問だった。
それよりも、萌香は先程ノアが言っていた『宇宙の虚』について気になっていた。
「『宇宙の虚』って何?」
すると、ノアの代わりに類がそれに答えた。
「宇宙に蔓延る生命体です。奴らは身体を持たず、他の生命体、非生命体を侵食します。そうなったものは死ぬか、生き残っても後遺症が残ると言われています。」
類は相変わらず機嫌を悪くしていた。ノアや萌香、それから未緒が何を話しても、聞く耳を持たない。
「類、さっきから機嫌悪いね、何があったの?」
「僕はなんともないですよ」
本人はそう言っているが、そうでもなさそうだった。類は先程から何かをずっと考えているようだったが、それが何かを三人には教えてくれない。
萌香は再びノアと話し始めた。
「『蘇りの結晶』が悪用されないようにと、ノアちゃんの命を守る為に、王様達はノアちゃんを旅に出したの?」
「そうみたいですね…。この『秘宝の星』も『宇宙の虚』にだいぶ侵食されています。父上も母上もいつ亡くなるか分からない状況です。だから、せめて私だけでもここから逃げてほしいとの思いなのでしょうね…。」
ノアはリュックの中のポケットに手を入れた。その中には、ノアの両親、国王と王妃の顔が彫られたレリーフが入っている。秘宝のような輝きは無いが、二人の事を忘れないように、これだけ持ち出したのだろうか。
「萌香さんは、心細くないですか?」
「私は、何ともないわよ」
「未緒ちゃんは…」
ノアはそう言って未緒の事を見た。
「私はまだ分からない…。でも、一人じゃないから」
「そっか…」
ノアはそう呟いてリュックを抱え上げた。ここからやっと逃げたが、やはり故郷を離れるのが心細いのだろうか。
そして、列車は『秘宝の星』を離れていった。その間、ノアはずっと窓の外を眺めていた。次に向かうのは『天文の星』R-15-110、天文学が進んだ星だ。ここから『機械の星』までよりは近いが、それでも初めての旅であるノアにとっては心細かった。




