目が覚めて
ゴトゴトと揺れる空間の中で、未緒は目を覚ました。先程まで眠っていたであろう場所は、ソファーになっていて、跡が付いている。天井は、古ぼけたシャンデリアが付いていて、埃を被ったまま車内を照らしていた。
窓の外を見ると夜、ではなく上下左右何処迄も続く星空が広がっていた。それは恐らく宇宙。どうやら未緒は、銀河鉄道に乗せられていたようだ。
だが、未緒はそれに気づかない。何故なら、未緒は眠る前までの記憶が、頭の中からすっぽりと抜けてしまっていたからだ。自分の名前も、簡単な言葉も、未緒の口からは出てこない。
「どうされましたか?」
そんな未緒の前に一人の青年が現れた。青年は未緒に向かって優しく手を伸ばす。
未緒はソファーに置いていたウサギのぬいぐるみに手を伸ばして握り締めた。記憶を失っているので、未緒はそれがぬいぐるみという事も、ウサギを型どっている事も分からない。だが、どういう訳か、それが自分にとって大切なものだというのか分かった。
「もしかして、記憶を失っているのですか?」
青年は未緒くらいの少女が、俯いたまま喋らない事を不思議に思い、こう聞いた。だが、未緒は俯いたまま、何も喋らない。
青年は、未緒がカバンを持っていることに気付いて、その中を開けた。カバンの中には、奇遇にも未緒の事が書いてあるタグが入っていた。だが、記憶を失った未緒は文字も忘れているので、それに自分の事が書いてあるのか分からない。
「なるほど、『辻本未緒』、年齢は11歳、ですか…。初めまして未緒さん、僕の名前は新堂類と申します。よろしくおねがいしますね」
未緒は、頷く事もなくじっと類の事を見つめた。類は、未緒が記憶を失っている事に驚く事なく、淡々と話し続ける。
「何も話せないのは不便でしょう、僕が色々教えてあげますからね。」
未緒は、そう言う類の手を掴んだ。そして、類の隣に立つ。
何もかも失った未緒は、何も分からなかったが、類が自分の為に色々してくれているのを見て、身体の真ん中辺りが温かくなっている事に気づいた。




