幸か不幸か…
『ですから、何度もご説明したとおり、お子様の栄養状態から通常の金額をお支払いすることはできません。そもそも特別手当支給の際にこの手当は引き取り時に健康であるためにと支給していたものです。お子様の成長と面談時の様子からきちんと育てていなかったようにみうけられますが???』
面談室から戻ってきた女性に引取り金額の減額を説明と共に告げられた夫婦は『なんでだ!』と何度説明しても納得しない。
これではらちが明かないと女性は『では、この取引を取り下げ、これまでに支給した生活保護90万Jと生活保護特別手当300万Jを返金いただけますか?』と取引をなかったことにすることも可能である旨を夫婦に伝える。
もちろん、390万Jも夫婦に払えるわけもなく、減額されたとしてもリディの身売金がほしい。
夫婦は相談することもなく減額に承諾し、手続きを進めてほしいと力なく女性に告げ、席へと着いた。
『ご理解いただきありがとうございます。それでは、このまま手続きを進めさせていただきます。』席に着きながら女性は説明を始める。
・取引完了後、リディの所在・状況については一切情報開示をしない
・行方についての詮索も一切禁止とす。違反した場合は、違約金としてこれまでの支給額を支払うこと
簡単にまとめるとこんな感じだ…つまりはリディを売ったらその後、リディをどうしようとどうなろうと聞くな探るな!と忠告を受ける。
もちろん夫婦も身売り金さえ支払われればこれ以上、手間をかけてリディについて追うことなどする必要がない。
『取引内容についてわかりました。それで…身売り金が減額させていくらになるんですか?』
リディの父親は、とにかく減額された金額が気になって仕方ない。
通常の子であっても400万…リディは珍しい髪色と判断されたので追加で100万はされているであろう算段でこの5年過ごしてきたのだから。
女性は目を合わせることなく計算しはじめる『…カタカタ …カタカタッ …そうですね…お子さんの体調面からしばらくはこちらで価値がでるまで管理しなければいけないので…支給額は400万前後となります。…最終的には領事長にこの後確認を取りますが。』とやっと顔を上げリディの父親を見た。