幸か不幸か…
『リディちゃんですが、5歳にも関わらず、成長が遅く感じられます。また、髪質や肉付きからも栄養が不足していると思うのですが、特別手当が支給されていたにも関わらず何故でしょうか?』
先ほどの口調から一変し、女性はリディの両親へ詰め寄った。
『あ、あのこの子はへ、偏食で、、出してもあまり食べないんです!!よ…』
『そ、そ、そうです…好きなものばかり与えていたらえい、ようが偏っちまったみたいで…はは』
リディの両親はしどろもどろしながらも女性に弁明した。
そんな両親をみてリディはただただその空間に取り残されるように『ポカン』とするだけだった。
リディの両親の話を大方聞いた後、女性は、そうですか。と呆れたようにつぶやき、
また、リディの目線まで腰を落とした。
『リディちゃん、お姉さんと少しだけお話しましょうか?』
女性はリディの頭を撫で立ち上がると『これから面談を行いますので、しばらく待合室でお待ちください』と両親へ告げた。
リディの両親は嘘がばれることを恐れ、慌ててリディの手を掴み自分たちの方へと引き戻した。
『ま、待ってください!!!そ、そういやぁ家を出てからトイレに行かせてなかった…な、お前?』
リディの父に急に話を合わせろと言わんばかりの目くばせをされた母親もまた、大きく頷き、
『そ、そうだね!トイレにも、、、あと!水も飲ませてやりたいしね~!!』なんて言いながら慌てふためいている。
両親側へ移動したリディを優しく引き戻しながら女性は
『御心配には及びません。面談前にお手洗いに寄り、面談中にはこちらでお飲み物のご用意をいたします。』と話し、両親の弁明も空しく面談室へとリディを連れて行ってしまった。
カウンター前に取り残されたリディの両親は自分たちから離れていくリディの背をみながら、この嘘がどうかばれませんようにと願うことしかできなかった。
そしてリディの姿が見えなくなると一度、待合室へと戻り、ソファに深く腰掛け項垂れた。
ドサッ―『はぁぁぁ、、、大丈夫かね…もし嘘がばれたら・・どうなるんだい??』
『心配ねぇ、嘘をついてもちょっと注意されるくれぇで買い取られねぇわけじゃないさ…』
『そうかもしんないけどさ、あんた…これまでの特別手当を返せなんて言われたら…って思うと心配でなならないよ…』
『…ば、ばか言え!!あれは借りた金じゃねー言われたところで返す義理なんて俺らにねぇ』と自分に言い聞かせるように呟いた。
―その頃、リディの移動した面談室では、白い服を纏った40代くらいの優しそうな男性がリディの前に目線を合わせてしゃがんでいた。
『リディちゃん、こんにちは。おしゃべりはできるかな?』
そう優しく男性は声をかけてきた。
普段、家族とも会話をしないリディは急に声を出すことができず、
口だけがぱくぱくとしてしまった。
それをみた男性は女性の方を向き『しゃべられないのかい?』と確認を入れる。
女性は『欠陥があるとは報告を受けておりませんでので、それはないと思いますが…』と不安げにリディをみながら男性へ答えた。
男性はもう一度、リディの方を見て『ゆっくりでいいから…ほら、すぅーっと息を吸って…ふぅーっと吐いてー』と言いながらリディの背中をさすりはじめた。
男性に合わせて呼吸をするうちに次第に喉の緊張も解れ声が出始めた、『あ、、あ、、、』
背中をさすっていた男性はリディの発声を確認すると『お、やっと声が出たね。こんにちは。』とまた優しくしゃべりかける。