生まれたときから
ふと小説を書いてみようと思い書き始めました。
結末はだいたい決まっていますが、途中どうなるかわかりません。
素人の書く小説だと思ってみていただけると嬉しいです。
『私は何故生まれてきたんだろう…』
成長しても、昔の記憶が蘇り「ふ、」とそう思うことがある。
あの時、私は一度死んでいるのではないか?
これはずっと続いている夢なのではないか?目を覚ましたら、
また、あの時のつらい日々に戻ってしまうと不安になることが続くのは、
それだけ、自分にとってあの5年間が暗く闇に染まった時間であったことを物語っている。
それでも今、置かれている環境は紛れもない現実で傍から見たら幸せな人間と言えるのだろうが…。
隣に眠る彼をみつめ不安にも幸せにもみえる不安定な表情で彼女は自分に言い聞かせた―…
『自分は今とても幸せである』と。
-------------------------------------------------
自然豊かな世界的にも栄えているアストリア国の海に面した領地。
マゼラン領の端にある小さな村で祝福とは程遠い雰囲気の中で彼女は産声を上げた。
『オギャァー…オギャァーオギャァー…』
『どうするんだいこの子…産まれちまったよ』
産まれたばかりの胎盤をまとった赤子を抱え不安気にそう問う女性は、
出産後の疲れか、普段の生活下の影響か、とても老け込んで見えた。
『女か…仕方ねぇだろ、産まれちまったもんは―…でもうちにはもう3人、それも男児がいる。
おめぇには申し訳ねぇが家族のためだ、5歳になるまでは親の責で育てるが、そのあとは…』
不安気な女性とは反対に意外にも冷静に事を考えていた男性もまた、
老け込むにはまだ早い年であろうに白髪が多く、痩せ細っていた。
この世に祝福されずに産まれる子供はいるのだろうか、産まれてすぐに売られることが決まる子供がいるのだろうかと、何の苦労もなく育った人間なら思うだろう。
ただこの国のこの領地では貧困家庭の身売りは当たり前であり、自然の摂理なのである。
リディと名付けられたその子もまた、産まれたときから、身売りされることが決まった人間の一人である。
このマゼラン領は海に面していることもあり、漁業、貿易の栄えた領地である。
港町は昼夜問わず栄えており、まさに活気に溢れていると表現するにはふさわしいところである。
しかし、栄えているのはこの港町だけであり、広い領地の海から離れたところは
言わば部落と呼ばれる貧困地域。
漁業には恵まれているが潮風の影響と栄養価の低い土壌のせいで農業には向かない土地であった。
そのため、港から追いやられた人間はこの地に流されてきても生きていくのがやっとの生活をしている。
働くにも仕事がなく、運よく見つかっても使い捨てに近い環境下での労働。
そんな土地で産声を上げたところで祝福なんてされるはずがない。
働き手になる男児ならまだしも女児は嫌煙される存在である。
しかし、女児にも唯一役に立つことがある。
それが身売りだ―…。
とはいえ平和と平等を掲げているアストリア国で表立って身売りをすれば
領地は別の領の統治下に置かれてしまう。
この領地を治めているマゼラン領の領事、ザックス公爵家は強欲でずる賢い性格の人間である。
そんな彼の裏資金源になっているのが人身売買である。
対象はすべて女児に限られており、
貧困下で産まれたこの村に10歳以上の女児が少ないのはそのせいだ。
制度は至ってシンプルで、女児が産まれたら領地に出生届けを提出する。
その時点で身売りを決めていたらならば、生活保護申請として、裏で契約を結ぶ。
産まれてすぐに売られるわけではなく、
価値の付く5歳~10歳の間まではその家庭で最低限人として育てられる。
そこで生活保護という名目で身売り金とは別のお金が支払われるのだ。
――――マゼラン領事館
『出生届と…生活保護の申請をしたいのですが。』
『出生届と生活保護申請ですね。では、こちらの用紙に記載をお願いいたします。』
領事館に勤める人間は淡泊である。
身売り申請とわかっていながら無表情にも笑みにもとれる無機質な表情で
淡々と作業を進める。
差し出された用紙には両親の名前、出生児の生年月日の記載欄の他に
その子供の容姿を記載する欄がある。【目の色/髪の色/欠陥がないか】
欠陥というのは四肢欠損もあるが痣や出生時に付いた傷も含まれる。
身売りをしない家もこの欄だけは記載を求められる。
何のためにこんなことをと思うが、これは、珍しい容姿のものがあればスカウトするためだったり、領民管理のためっだたりする。
リディもまた、髪色が珍しいため身売り予定がなければ、その容姿からスカウトされていただろう。
だが、出生届とは別に今回、リディの家は生活保護申請も申し出ているため、
スカウトの必要はない。
*髪色:緑を帯びた青
*瞳色:薄紫
*欠損:なし
*申請期間:5年
この申請期間とは身売りする年を意味している。
リディは5歳までこの家で育てられるが同時に5歳になると売られることがここで決まったことになる。
10歳までにすれば生活保護を受けられる期間は伸びるがその分、身売金は安くなる。
逆に5歳までにすれば生活保護期間は短いが身売金は10歳の倍もらえる。
直ぐにでもまとまったお金のほしい夫婦はリディを5歳で売ることを即決していた。
『あの、書き終わりました』
提出された申請書に目を通し、不備がないことを確認すると
申請書を受け取った女性は直ぐに奥へと向かった。
数分後に戻ってくると生活保護特別手当と書かれた用紙を前に
女性は話し始めた。
今日はここまで~早く人生の分岐点書きたい~~