あけまして
おおみそかの2人のはなしです。拙い文章ですが、よろしくお願いします。
「ふいー、ただいまですよっと。」
「おかえりなさいしっぷ。」
「いや嫁ちゃんも今帰ってきたとこな」
「それは知ってる。ていうかもう9時じゃん歌合戦始まってんじゃんどうしてくれんのJPNワンハンドレッドミリオン終わってたら旦那くんのせいなんだけどいいのアイス旦那くんの分も食うけどいいの」
「それはよくない…けど嫁ちゃんも悪いと思うんだよね!確かに俺も海老天をねだって海老天で粘ったけどさ、嫁ちゃんもイカ天をねだってイカ天で粘ったよね」
「いやでもあたしはいって30分だよ旦那くんは1時間はいたな」
「いやそれはなんか言いすぎじゃない…?もういいやテレビ点けて早く。JPNワンハンドレッドミリオン終わっちゃうよ」
「あ。逃げた」
「逃げてはねえな」
▶▶▶
「っあー、寒寒寒えっまっちょっ寒い寒い寒い」
「こら足バタバタしないで奥さん。布団跳ね上がって余計温まるのが遅くなるよ」
「もとから遅い。買い換えよう、金なら腐るほどあるぜ」
「自分で生み出せるものに対しては豪気だな」
「うっせー。…あぁ!!AKIKOのカブトガニだ!!やべーかわいー…」
「蕎麦出来た。はい箸並べて」
「うっす。…ちょえあー、マジでかわいーわまってもうあたしこーいう子と結婚したい」
「最後になかなかぶち込んでくるよね、堂々浮気宣言?」
「ちげーわ。あいしてるよ夫くん。つーかさみぃ」
「もちろん俺も愛してるよ奥さん。はい、熱いから気をつけて」
「さんきゅ。んあぁ…海老さんがぷりぷりしとる…マジで海の幸…」
「なんか献上された特産品食べる気分なんだけど」
「うっせえ。あー、このぷりぷりの海老さんが夫くんの産物なのはおかしい。こんなに美味しいの絶対人為じゃない」
「いやまあ『じんい』ではある」
「上手いこと言えとは言ってない。ねー、七味」
「ご自分でどうぞ」
「えー……………チッ」
「そこ聞こえるように舌打ちしない。…あ、JPNワンハンドレッドミリオンだ。奥さ──」
「見えてる聞こえてる感じてる夫くんマジでねーわ。アイス処刑決定だわ」
「ごめんて。いやでも七味を求めるのが悪いよね」
「それはもっとねーわ!頭から蕎麦かけっぞ」
「やめてーやめてくださーい」
「黙れ莉子ちゃんの歌声が聞こえねーだろうが」
「すいませんでしたかっこわらい」
「何か言った?にっこり」
「なんでもありません」
「……………」
「……………」
「ところでだけどJPNワンハンドレッドミリオンってさ、メンバーほんとに1億人いんの?」
「それは知らねえ」
▶▶▶
「あー、ビールビールっと」
「あ、俺にももう一本頂戴」
「じゃあアイス頂戴」
「それとこれとは別問題すぎて絶句」
「冗談だって」
「冗談には聞こえなかったぜ」
「しつけえ」
「あー、だいぶあったけえコタツさいこー!」
「…でもまあ、今までいろいろあれだったけど、人間もよく頑張ったよね」
「んまあそれはそうだな。…っぷは、ここ数十年ずっと夜みたいに真っ暗だったってのに、なんだかんだくじけないし、歌合戦やっちまうくらいには平常運転だし」
「陽の光が見えないってのもけっこうキツいと思ったけどね。太陽が見えないわけだから寒くもあるし」
「それだけ順応力が高いってことじゃね?まあまあ、とにかく人間が栄えればあたしもいーくんもこうして上手いビールにありつけるわけだし、ウィンウィンよウィンウィン」
「いやウィンウィンではないけどね。俺たちは何もしてないわけだし」
「んで、我が娘は何でもう何十年も篭ってんのかね」
「いやー、なんでもね、1日かけてめちゃくちゃ進めたRPGのデータを、すーくんに消されたんだって」
「すーくんやべーな。あたしだったら1回殺してるわ」
「過激派ー」
「そんで第2次岩戸開きってわけか。…んや?まだ開いてねーわけだから、岩戸籠もりか。んまあ、どっちでもいーけど」
「そーゆーことらしいね」
「あれ、つっきーは?こーゆーときは大体つっきーがなんとかするじゃん」
「もちろん月くんは事態を聞いて駆けつけたらしいんだけど、天ちゃんの要求がすーくんを殺すことだったらしくて」
「過激派ー」
「いやー人のこと言えるかなー?…まあそれで、さすがにそれはできないってなって、何十年かけて天ちゃんを宥めてって、怒り自体は治まったらしい」
「やるじゃんつっきー。っはー、カシューナッツうめえ」
「でも最近、岩戸から出ようって話になった時に、岩戸から出て今度すーくんを見たら私なにするかわかんねーわってなって」
「やべー」
「すーくんに詫び入れるように月くんが呼び出したって」
「それがいいな。…んぁ、フィナーレじゃん」
「あ、ほんとだ。…で、まあ岩戸開きって宴開いたら岩から出てきたじゃん?だから、今回も趣向を凝らしたエンターテインメントな宴でスポンサーの心もバッチリですって月くんが」
「なんか月くんすげえ」
「この世界きてからこっち、月くんバリバリ商社マンだからね」
「やべー息子がすげー」
「ちなみに今回は、とりあえず岩戸の前でプロのダンサーが踊って、サクラにわざとらしく歓声をあげさせる」
「わざとらしくしてバレるんじゃね」
「いやまあサクラもプロだからねー。んで、その歓声で『何が始まるの!?』感をだして期待させつつ、プロのシンガーが絶唱、スポットライトの光は岩戸の奥にまで差し込むように…との指示だと」
「ははっ、月くんやる気あんな」
「そうなんだよなー。で、多分そこらへんで我慢できなくなって岩戸から覗くだろうから、そのタイミングを血縁の勘で見極めて、すーくんを土下座させて、その背後に人間ピラミッドをつくって圧巻のフィナーレだと」
「ピラミッドはすげーわ。いつのまにか歌合戦終わってるし」
「…あ」
「あ?どうしたいーくん」
「天ちゃんが出てきたって」
「おお!よかったじゃん」
「で、許されたって。すーくん」
「ようやくかー。何十年ぶりよ、陽の光」
「それこそ何十年だよね。眩しくて目が潰れるとか無ければいいけど」
「あぶねー、それは無いとは言えねーな」
「…あ、0時」
「……………」
「……………」
「んにゃ、まあとりあえず、年も、それから長い夜も」
「あけましておめでとう」
「ってとこだな。よかったよかった」
拙い文章でしたが、お読み頂きありがとうございました。おおみそかの独特の雰囲気を感じていただければ幸いです。