魔王ちゃんの冒険章3
ウィルに拾われた私は勇者一行の部屋へと連れられて行った。
「どうだった。魔王はいたか?」
黒髪の勇者はウィルに気付くと直ぐ様そう問い掛けて来た。
ソファーに寝ている勇者は、勿論こちらを見ているわけではないので私の存在には気付いていない。
ローブを着た私はウィルにお姫様抱っこをされながら入室した為に未だに気付かれていないのだ。
「どうやら僕の勘違いだったみたいだね」
「だろう。王様から戴くもの頂いてさっさとここからずらかろうぜ。さっきから、どこぞの令嬢やらが押し掛けて来てもううんざりだ」
勇者は溜め息を吐く。
「まぁ、それは想定内だろう」
ウィルはそう言いながら自分の部屋へと移動して行く。
勿論私の存在には一切気付いていない。
何故?
パタンと扉が閉まり私はベッドの上にと置かれた。
「今ティナが着れそうな服を探してみるね」
ウィルはそう言うと亜空間から大きなトランクを取り出す。
まさか亜空間魔法も使えるとは、驚きである。
どれだけ魔力のキャパがあるのか……。
「あ~あったあった。ティナ、これなんかどうかな?」
そう言って私に寄越したのはどう見ても男の子の服である。
「僕が昔着ていた物だけど」
そう言って服を私に合わせて来る。
「うん。違和感ないね」
とてもご満悦のウィルはそう言いながら私に服を渡して来る。
「この服の素材は結構伸縮性があってね。無茶な着方をしなければ一生着ていられる優れものなんだ」
ウィルはそう言うと「早く着てごらん」と私を促す。
勿論、何も着る物がない私は素早くそれを着た。
上着はお尻の所まで来る長さで、ズボンはスキニーパンツで動きやすい。
確かに着ていて一切の違和感がない。
そして、軽い。
「それ一枚で寒さも暑さも防げる優れものなんだ」
おおー!そんな優れものなのか。
私は自分の着ている服をじっくり観察した。
「ただ、少し大きくなると、色々問題点があってね」
コテっと頭を傾けてしまう。
「ティナは女の子だから気にしないと思うけど、男ならきっと分かると思うんだ」
何の事やら?
「まぁ、それは良い。取り敢えず今日から君の保護者は僕だから宜しくね」
そう言って頭を撫でられた。
「そうそう。大事な事を忘れていたよ」
ウィルはそう言うと私の左の指に指輪を填めて来る。
「これも伸縮性のある魔法が施されているんだ」
私はそれをジッと見つめていた。
「飼い主が誰かちゃんと書いてあるから、はぐれても大丈夫」
「は?」
そう言ってウィルは再び私の頭を撫でる。
これって……私もしかしてペット?
お読み頂きありがとうございます。
本年も色々バタバタとしておりましたが、何とか一年過ごせました。これも、全て読者様のお陰です。やる気を頂きありがとうございます。皆様若い年を取って下さい。
私も若い年取れるように願うばかりです。
新しい年も末永く宜しくお願い致します。
また読んで頂けたら幸いです。