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トンネル

作者: 悠姫

不思議な感じの物語を書いてみたかったんです。

消化不良で終わるのがいいかなと思ったんですが、人それぞれなので…。

どうぞ、夢のような世界へ。

こつ、こつ、こつ…。


遠くから聞こえてくる。


こつ、こつ、こつ…。


ゆっくり、ゆっくり、こちらに寄ってくる。


こつ、こつ、こつ。


不意に音が止まった。

同時に後ろから凄まじい風が吹いてくる。

飛ばされぬように近くの手すりにつかまった。

しかし、かぶっていた黒い帽子だけが遠くへ飛ばされてしまう。

それを眺めながら、ゆっくりと腰を下ろす。

風が止み、足音も消えた。


静寂。


耳が痛くなる。その痛みが耳から頭に移り、頭から全身に。

伝わるはずのない痛みが駆け巡る。

時間がとてもゆったりと流れていく。

反対に全身に巡る血が速くなる。どんどん加速する。心臓が弾け飛びそうな勢いで動く。息が荒くなり、意識がはっきりし始める。


ふっと、痛みが引いた。

それはまた、突然に。

じわりじわりと、体が元に戻る。

苦しかった息は整い始め、また、静寂が訪れる。


こつこつこつ…。


さっきとは違って近く早い足音。


こつこつこつ…。


徐々に大きく近く。


こつこつこつ。


また、ピタリとやむ。

ふと顔を上げる。そこには何もいない。誰も立っていない。

後ろを振り返っても何もない。


恐怖。


ただただ何もないという恐怖。


立ち上がり、服を整えまた、歩き始める。


ぺた、ぺた、ぺた…。


別の足音。

自分の足音とは全く違う。さっきまで聞いていた足音とも違う。

裸足で何かが歩いている。


ぺた、ぺた、ぺた…。


…。


ぺた、ぺた、ぺた。


刹那、足に何かがしがみつく。

少し冷えていて、細く小さい腕。

足が止まる。足の感覚が少しづつ敏感になり、意識が下へ下へと降りていく。


足を動かそうとしても動かない。


こつ、こつ、こつ…。


もう一つの足音が近寄ってくる。


こつ、こつ、こつ…。


意識がはっきりするのに、考えがまとまらない。


こつ、こつ、こつ。


すぐ真後ろで音が止まった。

背中に何かがペタリとくっつく。

何かの腕は私の首あたりに絡みついてくる。

何か温かいものとひんやり冷たいものが混ざり合って伝わって脳に直接流れ込む。

じわりじわり。

ぎゅうぎゅうと。




まっすぐ前から眩しいほどの白い光が輝き始める。目がくらみおもわず目を閉じた。


目を開けると、トンネルの入り口に立っていた。

何が起きたかよく思い出せず、トンネルの中へ入っていく。


こつ、こつ、こつ…。


ぺた、ぺた、ぺた…。


こつ、こつ、こつ…。


ぺた、ぺた、ぺた…。


体が重くなる。

進むペースが徐々に遅くなり、長い長いトンネルの途中で足が止まる。


こつ、こつ、こつ…。


ぺた、ぺた、ぺた…。


足に何かがしがみつかれたような、首に何かが巻きついているような感覚に襲われる。

風はなく、呼吸の音と足音だけが響く。


刹那、目の前が真っ白になる。

ゆっくりと後ろに倒れ込み、そのまま沈んでいく。

朦朧とする意識の中で、何を考えるでもなく、何を思うでもなく、ひたすらに音だけを聞き続けた。



目を覚ますとトンネルのちょうど真ん中あたりに立っていた。

どうでしょう。

主人公は何があったここにいたんですかね。

また、夢なのか、現実なのか、異世界に迷い込んでしまったのか。

ご想像にお任せします。


では、気が向いたらまた現れます。

その時にまた、お会いしましょう。

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