6月11日、曇り
最近家にいる虫たちと格闘中です。
空は今日も汚い色をしている
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「屋根の上に乗るな!」
64はまだ朝だというのに元気そうに声を張り上げた。一体どうして朝から声を出せるのだろう。僕は声を作っているから朝調子が悪いと感じるのだろうか。そんなことはさておき、まだ屋根の上に乗っているとまた怒られてしまうので屋根から降りることにした。
「丁度窓の下にあって乗りやすいのがいけないんだ」
「屁理屈を言うな」「大体マスクもつけずに外に出るやつが居るか」「病気になったらどうするんだ」
言葉攻めにあってしまった。僕にそんな趣味はないのにひどい奴め。
「僕はメンタルが雑魚なんだぞ。傷ついてしまったらどうするんだ」
「何得意げに言ってんだ。てかさっきの言葉の3分の2は心配の意をこめて言ったんだが。まぁいいや、そろそろ飯の時間だからな。早く着替えて下にこいよ」
64は僕の頭をたたくとそう言って部屋から出て行った。
「藪から棒にでかい声を出すから驚いてしまった。64め後でいじめてやる」
寝巻のボタンをはずしながら僕は呟いた。
「窓は閉めて来いよ!!!」
下から64の大声が聞こえて心臓が止まったかと思った。あいつは出し抜きに大音量で叫び不意を突くのが得意なようだ。
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「やっと来たか。遅いで。64が呼びに行ってから5分かかった!もうみんな食いおわっとるで」
「せっかちな奴・・・」
「お前は五月蝿いやつやなあ!!」
21は僕の悪態に悪態で返した。
「なぁ、」
64が僕に話しかけた
「唐突だけど92、なぜ屋根に乗ってたんだ?」
「なんでって・・・晴れてないかなぁって」
「晴れてるわけねえだろ・・・馬鹿か?」
「なんとなく何言うか分かってたけどひどい!」
今日はよく64に責められる。朝からあまりいい気分ではない。僕だって空が本当に曇っていないと思わなかったわけではない。ほんの少し期待を抱いただけなのだ。窓からだと上の屋根が邪魔で空が見えないので上がったのだが、そこを運悪く64に見つかってしまったのだ。
「無駄話はええからさっさと食えや。俺が美味しくいただいてまうぞ。」
「はいはい」
僕は適当に答えると椅子に腰を掛け朝食を口へと運んだ。
ここはチコローテ西、工業発達街。人呼んで蒸気の町である。
僕たちのいる建物は工場人員確保用の教育施設。地上から5600Mの高さがあり向かいには高さ約6000Mの工場、横には延々と広がる建物の影が広がっている。
出ていくことは容易ではない。だが僕はいつか出て行って見たいものがあるのだ。
みんなは夢見がちだとは笑うが、僕はいつか■■■■■■■■■■■が見たいのだ。