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あるミステリ作家の苦悩

作者: 月の三月兎

 ミステリ作家である私のもとへ、また原稿の依頼が舞い込んできた。

仕事なので仕方ないのだが、毎度ひどく悩むことになるのだ。

 とにかくミステリ小説というのは頭を使う。小説を一本書くだけでも大変だというのに、そこにトリックや伏線、そして解決を入れ込まなければならない。それがどれほど大変か、一作でもミステリ小説をお読みになった方はおわかりだろう。

トリック一つとっても、アリバイトリック、時刻表トリック、叙述トリックなど多岐に渡り、それらもそのジャンルの大家がいるほどだ。

他のジャンルでもそうかもしれないが、年々増えていく作品に比例して、新しいネタはどんどん減っていく。まるで鉱山が枯渇していくようだ。今や、いかにして他の作品とかぶらないようにごまかすかに腐心している。私も死に物狂いの鉱夫の一人というわけだ。


 数日経って、私はとびきりのトリックを思いついた。

これは我ながら大傑作なので、読者諸兄にも公表することができないことをご了承願いたい。

そしてそのトリックに欠陥が無いか、さらに数日かけて熟考した末、私はそれを完璧なものとした。

用心深い私は最後に、トリックに本当に穴が無いかの実験のため、さらに数日をかけて準備をし、実行に移した。


 結果、大成功に終わった。

事件は新聞の一面で大々的に報じられ、ニュースでも方法がまったく不明な事件として連日大きく取り上げられた。

これでやっと執筆にとりかかれる。私の最高傑作になる予感さえする。今回死んでもらった方も、きっと草葉の陰で喜んでくれるだろう。

 しかし、実験に使った費用もまた莫大なものになってしまった。これでは印税が追いつくかもわからない。

私は、出版社にどうやったら経費で落ちるかを考えるため、一層ひどく悩むこととなった。

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