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調査その1

大変長い間お待たせしました。ごめんなさい。また、少しずつ続けていきます。

 青空の下を白い巨大な気球がふわふわと進む。

 そこに乗っているのは、レッドとホワイト。

 レッドは床に寝っころがり、毛布を被っている。ホワイトは、パソコンで何かをしている。

「レッド、お休みのところすみませんが、病気のことについて詳しく教えていただけますか?」

「ん?そのことか。ちょっと待ってくれ。」

 ポケットから端末を取り出したレッドは、何かを探す。

「読むのは面倒なので、大事なところだけを読み上げてください。」

「そうだなぁ……初期症状は風邪とよく似ている。2、3日後くらいに40度を超える熱が出る。あと、咳と全身の筋肉痛が酷いらしい。」

「なるほど……。」

 カタカタとキーを打っていく。

「聞いた感じだと結核というよりはインフルエンザに近いようですが……」

「どこまでが本当か分からねぇからな……。インターネットの掲示板から拾ってきたからさ。ただ、話題になるってことは何かはあるだろうし。」

「何もなければいいのですが……」

 モニターが目的地に着いたことを示す。

「行くか。」

 2人の少年少女は、森へとダイブした。



 ニューヨーク州ハーキマー群某小さな村。

 かつては客で賑わっていた観光名所の1つ、メインストリートも今はただの寂れた道路でしかない。

 ネット掲示板で謎の病についての噂が広がり、客が全く来なくなったのだ。おまけに、村の住人まで出て行ってしまっている。


「随分と荒れ果ててるな。こんなところに、人なんているのか? ってか、変装してきた意味ねぇな。」

 茶髪の少年––––変装したレッドが、スーツを着たホワイトに話しかける。

「以前来た時は、このようではなかったのですが……」

「ん?来たことあんの?」

「えぇ、以前、気球の試運転の時に通ったのですよ。ちょうどお祭りの時期だったのでしょうか、とっても賑わっていましたよ。」

「あぁ、あれか、確か、ここで有名な年に一度の感謝祭みたいなやつか。」

「はい。今の時期だと、準備期間でかなり人が集まっているはずなのですが……まさに、もぬけの殻ですね。」

 メインストリートを通り抜けると、古い民家が立ち並ぶ住宅街、やはり、人の気配はない。

「……人が居なさすぎて逆に怖いな……。ジョーカーじゃねぇけど、幽霊出てきてもおかしくねぇな……」

「怖いなら、気球に戻っても構いませんよ。」

 怯えもせず、でも、笑顔も見せず、真剣な面持ちで半歩前を歩いて行く。

 レッドは知っている。ホワイトがこんな顔をしている時は、何かまずいことが、やばいことがあるということを。

「いや、大丈夫だ、オレは。……ただ、なんと言うか……不気味だなと……」

「もし、ローズがここに居たらきっと、『よくない気を感じる』と、言うのでしょうね。」


 住宅街を抜けると、開けた広場に出た。そしてその奥には、クリーグラン氏の別荘がそびえ立つ。

「城って言うよりも、洞穴って言った方が、しっくりくる気がするな。」

「もともとここは教会で、この村特有の崇拝のシンボルでした。だから、この自然の形を生かして、教会の人たちが暮らして居ました。ですが––––」

 目の前の城は今、大規模な工事中らしい。重機が大きな音を立てて動いている。

「おかしくないか?クリーグラン氏は無理矢理奪ったんだろ?そんなことが、許されるのか?」

「賄賂でも渡したんでしょう。」

 城へ向け足を進めようとした時だった。

「ホワイト。誰かいる。」

 レッドが警戒し、あたりを見渡す。

 ペタペタという足音が近づいてくる。

 別の道から影が現れ、足音の正体が姿を現した。

 金髪碧眼で、毛布を被った赤い顔をした少女。

「あ、あの––––」

 彼女はレッド達に気付いて声をかけてきた。

「この辺りで、私と同じくらいの男の子、見かけませんでしたか?私と同じ、金髪の男の子なのですが……」

 彼女は咳き込みながら、そう尋ねてきた。

「ごめんなさい。見ていません。ところで、大丈夫ですか?熱があるように見えますが––––」

「5日前からちょっと……でも、ティルが、2日前からいなくなっちゃって……」

(レッド、おそらく彼女は、この辺りで流行っている病の感染者です。すぐに、機材の準備をお願いします。)

「とにかく、家に帰りましょう。そのままだと、倒れてしまいます。」

「でも––––」

「このまま行き倒れては、誰も助けてくれませんよ。」

 少女を連れて、小屋まで行くことにした。


 少女の名前はソフィというらしい。以前、あの教会で暮らしていたのだが、追い出されてしまい、そのまま病にかかってしまったそうだ。神父さんが今、都会の医者を捜しているのだが、なかなか見つからないらしい。

 彼女が捜している少年はティルといい、彼女と同じく、教会で暮らしており、追い出された後も一緒に過ごし、ソフィの面倒も見てくれていたが、2日前、買い物に行くと言って出て行ったきり、帰って来ないのだ。

「あの、あなた達は……?」

「私は、アメリカ疾病管理予防センターの研究員、ハクア・ホシゾラと、助手のフレイです。今回、この辺りで病が流行していると聞き、調査に参りました。」

 彼女をベッドに寝かせ、レッドに持たせているバッグから機材を取り出す。

「よければ、少し協力していただけませんか?」

 彼女は戸惑いつつも、頷いた。

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