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考える

 歯に目玉焼きの焦げが挟まっている。僕はしばらくそのお焦げと静かに格闘していたが、ピンポンというチャイムの音がして、僕は玄関の方へ向いた。純さんはそのチャイムに応対して一人ハイハイ、と言いながら玄関へ駆けていった。その様子を見ると、僕はとりあえず忌まわしい異物を喉の奥へ流し込もうと横に置かれた麦茶に手を伸ばしてそれを一気に飲みほした。

 その流れにのってその異物は見事に僕の喉の奥へと消えていった。ひと段落を終え、さっきのチャイムは一体誰だろうとまた振り返ると、すぐ鼻の先に誰かが立っていて僕は思わず体を大きくのけぞってしまった。

「おはよう。やっと熱下がったんだって?」

そこに悠々と立っていたのは健だった。

「ああ、うん。おはよう。」

芯の無い声だと自分でも思うような気の抜けた返事だった。

 健は僕を学校へさそいに来てくれたらしく、ちゃんと黒のズボンに白いシャツという中学生らしい格好をして、ショルダーバックを下げていた。

「本当は始業式に広大をつれてくつもりだったんだけど、まさか来てすぐに熱を出すと思わなかったからさ。さっき純さんに電話もらって今日迎えに来たってわけ。」

健はそういうと僕を急かしていつの間にか家の外に出ていた。その間際に純さんが玄関さきで手を振りながらいってらっしゃいと言ったのが聞こえ、僕もそれに行って来ますと答えようとしたが口がうまく動かなかったのと健の勢いに流されたのとで結局それはいえなかった。

 

 それから僕は必要最低限の荷物を入れたショルダーバックを肩に健の後をただおとなしくついていった。その間僕の顔と目は忙しなく当たりをキョロキョロと見渡して周りの風景にひたすらため息をついていた。やはり現実離れした場所だ。ここがさっき純さんの言っていた実験的な村・・・。では一体何の実験のためなのだろう。それに――。

 僕は先を行く健の背中をじっと見つめた。そして初めてここに来た時に見せたあの不思議な笑顔を思い出した。選ばれた子供、コーメイ村チルドレンとは一体何なのか。それについては純さんはなにも言ってなかった。なら、健に聞くか?

 そう考えて健の背中に向けて口を開いたその時だった。目の前を歩く健がその場でピタッと足を止めると顔だけこちらに向けて今度は顔全体でニコリと微笑んだ。

「学校、着いたよ。」

そう言われて道の横に目をやると、そこにはあのデパートと並ぶほどの高層ビルが堂々と建っていた。ゆうに二十階ほどは越しているだろう。

 さて、学校ってのはこんな大規模な会社めいた風貌をしていただろうか。


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