高明村
それからしばらく歩いた頃に、今度こそしっかりとした人が歩くための道へと二人は出てきた。その間二人に会話は無く、ただただここまで足を動かしやってきていたが、突然健は足を止め、俯きがちに歩いていた広大はあともう少しのところでぶつかりそうになった。
「広大、ホラ。あれが僕らの村、高明村だよ。」
その声に広大は前に数歩進んで健の横に並んだ。ここは村を囲む山の一つのようで、ちょうど村を一望できる開けた場所だった。そこで広大は大きく目を見開いてそのムラを見た。
広大の見たそれは、『村』というよりもむしろ『組織の抱える基地の一部』のような科学が生み出した近代都市の風景だった。建物はもちろん道路や公共物の全てが、この山の風景とは思えないほどの科学の結集物のようだった。
広大は、目の前に広がるものがあまりに予想外で言葉を失い体も固まってしまって混乱の渦にに飲まれた。健がひょいと広大の顔を覗くと、広大はその顔に驚き思わず、わっと叫んで後ずさりをした。健は広大のその様子に目をパチクリさせると、突然吹いて笑い出した。
「広大さ。もしかして知らなかったの?ここの事。」
健は笑いながらそう言うと今度は爽やかな笑顔を見せて村の方を見渡した。
「ここは特別な子供の住む場所。故にこのように立派な施設が多く用意されているんだ。」
広大は体制を整えると今の言動に対してゆっくりと聞き返した。
「あの、その・・特別なこどもって、何?」
健はまた広大の方へ振り返ると、落ち着いた声で答えた。
「選ばれた子供。コーメイ村チルドレンだよ。」
健の口がまた、笑う。
「僕や、君のようなね。」