やっぱり
神社に風が通る、その風にふとジョンが村へと視線を向けた。村は依然と静かに存在する。このどこかにともはいるのだろう。風に吹かれて瞳を狭める。
「ジョン、ほら手を休めず作る!」
その有希の声にジョンは慌てて返事を返すと手に持った笹の葉を急いで笹舟の形に変え始めた。有希はジョンを水溜りの傍に置いて先ほどの笹舟パラダイスを実行に移していた。そこから少し離れた場所から広大がいくつか出来上がった笹舟を持ってきて有希に渡すと、有希はそれをしげしげと見つめて、これら失格。と半分程をそこらに捨ててしまった。その行動に広大は驚きを見せるも何も言い返せずくるりと有希に背を向けてその場を去ろうとすると、ふと広大の視線の先に神社をじっと見つめる健の姿が入ってきた。その健の表情はこの村に来て見てきた健のものとはどこか違っていた。ただ、真剣に。その不思議な感じに広大も自然と健の視線を追って神社へと目を向けた。やはり、古い神社だ。何年もずっとここに在った事を思わせる木の色、鈴を結ぶ綱。全てが堂々とここに存在している。ここの村とも言えないような空間に、ポツリと存在する自然だ。やっぱり、落ち着く。
「コウは、この神社をどう思う。」
突然健の方からそんな言葉が聞こえてきた。広大は少しビックリして健の方を向いたが健は依然と神社に視線を向けたままだった。広大は焦って唸るように少し悩むと、ゆっくりと口を開いた。何て言うのか、
「人間やっぱり自然があると安心するなぁ・・・と。」
広大はそう言って頭を軽く掻きながら笑って健に顔を向けると、その笑いは次第に消えて広大の目は不思議そうに健を見つめた。一体どういう事なのか、健は腕を上げ右腕で目を隠すようにして、黙っていた。健のその様子に広大は何か声をかけようと半歩前に体を乗り出したが、一体そこからどうすればいいのか全く検討がつかず、その場に立ち尽くしてしまった。再び健から声が聞こえる。
「そう。やっぱり、そう。」
健の表情が、見えない。
歩の去った後の静かな部屋に一人、純は広い空間の真ん中に立っていた。体が動こうとしない。何か、すぐにでも行動しなくちゃいけないはずなのに。純の憤りが腹の底で鈍い唸り声になって出てきた。薄暗い、部屋の真ん中。
村の歩道をスタスタと歩く足、その人物から聞こえる鼻歌。童謡のシャボン玉だ。軽く、滑らかに聞こえるそのメロディーを奏でながら行くのは歩だった。一本に結ばれた金髪が左右に大きく揺れている。すると歩は途中その場で足を止め、鼻歌も止めると頭をくるりと後ろに向けて遠くの神社を見つめた。そして小さく首を傾げて微笑む。
「失敗しちゃったね。ゴメン。」