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「そういえば健達は何処に住んでるの?」

比良根神社へと向かう道の途中で広大がふと疑問に思ったことを口にした。それを聞いた健は何か思い出すような仕草で視線をよそに外した。

「え・・と、みんな大抵はここの研究者の人たちと暮らしてるよ。コウと同じようにね。」

それを聞いて広大はまた新たな疑問が浮かんだ。

「え、って研究者の人たちってことは、みんな親とかは・・・」

と、広大はここまで口にしてふいに以前健が口にしたコーメイ村チルドレンという言葉を思い出した。もし、これ以上に深追いして質問したらソレを知ってしまう事になるだろうか。そんな気持ちが渦巻いて次の言葉が中々思いつかず黙っていると、健が広大に視線を戻し微笑んだ。

「やっぱり、まだ知ろうとはしないんだね。」

黙ったまま恐る恐る健に顔を向けると、健はまた視線を広大からそらし笑顔の口元からふぅ、と息を漏らして、いいよ、まだ時間はたっぷりあるからね。と言ってまた口を開いた。

「一応状況だけ言っとくよ。有希は武田研究員。ジョンは並木研究員ともう一人の学生。そして恭一は今は水野研究員と二人暮らし。因みに僕は研究員無しの一人暮らし。」

ま、そういう事。と健が言い終わると、やはり所々疑問に思うところが見つかる。ジョンともう一人って誰だろう。恭一郎は今はって事は以前誰かいたのか。そして何故健には研究員が付いていないのか。広大はこの次から次へと浮かぶ疑問をぐっと堪えて飲み込み、そうなんだ。と一言だけ健に返した。その言葉に健がニコリと笑いかける。

「ほら、見えてきた。」

健のその声に広大は顔を上げて前を見ると、遠くに長い石段とその上の赤い鳥居が小さく見えた。

あれが、比良根神社。


 「今日は朝からラーメンだったンダ。お陰でお腹がもたれぎみダヨ。」

「そりゃ災難。可哀想だこと。」

もっとボクをイタワッテェ!なんて会話をしながら比良根神社へと向かっていたのはジョンと有希だった。足早に向かう有希を追うようにジョンが後ろから調子の悪いお腹を抱えて小走りで追いつく。その時ジョンの肩にかけていたバッグがドサっと落ちて中の物が地面に散らかってしまい、ジョンはビックリして急いであちこちに転がったものを拾い集めだした。

「ユキちゃんも手伝ってヨ〜!」

「残念だけど私は一刻も早く健に会いたいの。じゃ。お先!」

有希はそう言うと駆け足でその場を去っていった。ジョンはその背中に手を伸ばしながらカムバァック!と喚いたが、見る見るうちに有希の姿は見えなくなり、ジョンは諦めたように肩を落としてまた散らかったもの達を拾い出した。そして離れた所に一つ飛ばされたマスコットのような小さな人形に目をやり、それを拾おうと手を伸ばした、その時だった。その人形と伸ばした手の上にいきなり大きな影がかぶさって上から降りてきた手によってその人形が持ち上げれた。その人形の行方を追うようにジョンの顔が上を向く。 逆光が、眩しい。


 鳴り響く電話を止めるように純が急いで受話器を手に取った。そして受話器の向こうから聞こえてくる言葉に静かに耳を貸す。

「ともが、見つかったんですか!・・・それで無事、村には連れて帰って・・・・。」

一瞬の沈黙が走る。

「村の中で、逃げてる?・・・・。」

直後、純の脳裏に広大たちの神社へと向かう様子が浮かんだ。


もし、会ってしまったら。


 逆光の先、ジョンの視線の先にはその人形を手にした、少し目にかかるくらいの黒い髪をしたキレのある顔の子がいて、ジョンを見下ろしていた。そして人形を持つ手が硬く握られ、手の中の人形が歪んだ。


「オレは、死ななくちゃ、いけない。」


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