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八人

「それから僕達はお昼の時間になったからと学食を食べに行って、その後は教室に戻って、まぁ何というわけでもない会話をして午後の時間を過ごして一日を終えたんです。」

だけどやっぱり恭一郎君は戻っては来なかったんですけど。と、広大がここまでを純に話すと、ふと純の様子が静かな事に気がついて口を止めてそっと純の顔を覗きこむように体を前に倒した。

「あ、え?あ、ごめんね。ちょっとボーっとしちゃって。うん、ちゃんと話し聞いてたよ。」

純は広大に向けて笑顔を見せると、勢いよく次から次へと広大の話した内容に対してそれは大変だったわね、怪我とかしてない?などと返し始めた。広大はそれらの勢いに押されながらも少し強引にその間を割って入って初めに訊ねた質問をまた訊ねた。

「で、あの。結局どうなんですか?二年生が僕たち五人であとの四人は一年と三年にいるんですか?」

その質問に対し純は一呼吸置くと、少しゆがんだ笑顔を広大に向けた。

「いいえ、二年に八人、一年に一人よ。」

その返答に広大が疑問を返そうとするよりも早く純が口を開いた。

「皆ね、ちょっと事情があって中々学校に来れなかったりするの。でも大丈夫、きっとすぐに会えるわ。」

その言葉に、広大はただそうですか。としか返事が出来ず、何か、あまり聞いてはいけないような気がしてこれ以上は何も言うまいと、また紅茶を少しすすった。そして広大は思い出したように壁にかけてある時計に目をやると、じゃあ僕はこれで。と朝食の食器を台所へと持って行こうとすると、純が不思議そうな目をして広大を見つめた。

「何かもう用事でもあるの?」

「ええ、10時から健と有希とジョンとで村巡りをしようって約束したんです。」

それを聞くと純は安心したように微笑むと、それはいい事ね。と言って自分の分の食器を片付け始めた。

「どこに行くのかしらね。」

純が食器を台所へ持ってきて、自分の分の食器を洗う広大の横に置いた。

「なんでもこの村に似合わないような古めかしい神社があるらしく、まずはそこに行ってみようって事になったんです。」

それを聞くと純は視線を上に向けて少し考えてからまた口を開いた。

「って、ことは比良根神社ね。」

「ヒラネ神社、ですか?」

「そう、あの神社はこの村がこんな風になるずっと前からあるみたいなの。でもあそこの空間は気分が落ち着いて大好きよ。」


 それから準備を整えた広大は迎えに来た健と一緒に家を出て行った。それを見送ると純は小さく息を吐き出し、リビングのソファーに腰を下ろした。

純の顔色が段々と重く、沈んだ表情へと変わっていく。そして純の口から微かな声が漏れ出す。

「もう、歩と会ったのね。」

重く冷たい空気の中に、電話の音が響いた。


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