表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

外界への扉

 みんなは魔法や、死人との再会なんて信じるか?

 俺は信じなかった。少なくとも、今日までは・・・。


 序章 外界への扉

 俺は屋上で暖かな日差しを浴びながら、昼休みになり少し騒がしい校庭を見下ろしていた。

「おーい、月島!」

クラスメートに呼ばれた。こいつは、村上。

「俺になんか用か。」

思い当たる節がないので、不機嫌そうに聞き返す。村上は俺の前に一枚のポスターらしき物を差し出し、

「これ、お前の妹じゃないか?」

そう聞いてきた。そのポスターらしき物を見て、俺の中の思考回路は止まった。俺の妹に瓜二つだからだ。

(バカな・・・。妹は三年前の事故で死んだはずなのに・・・!)

そのポスターには地図だけが描いてあった。

「お前、こんなものをどうして持ってる。」

疑問に思ったことを口にした。

「ど、どうしてって、そこにいる女の人に渡されたんだ・・・って・・・あれ?いない。」

村上の指差す場所には、女の人はおろか人影すら見当たらない。

「すまん、月島。見失ったみたいだ。」

謝ってくるが、こいつに非はない。

「いや、気にするな。むしろ、感謝する。」

そう答え、また校庭を見下ろす。そうして、ポスターの地図を見つめる。

(この場所は確か、学校の裏にある・・・。)

「なぁ、村上。ここに何かがあると思うか?」

俺は妹にそっくりな絵の真相が何なのかを知りたくなり、つい訊ねてしまう。

「どうだろうな。警戒はしておいた方が良いと思う。つい先日も行方不明者が出たばかりだしな。」

そう言われ、止められたが気になる。ただの絵と地図ならここまで気にはならなかったのだろうが、何せ絵は妹に似すぎている。

「村上、一緒に行ってみないか?」

行かなければ気が済まなくなっていた。

「そう言うと思ってたよ。放課後、学校裏に集合な。」

そう言い残し、校舎内へと姿を消す。

「授業だし、戻るか・・・。」

誰もいない屋上でポツリと呟き、教室へ戻る。


全く聞かなかったせいか、授業はほんの数分のように感じるほど早く終わった。

 放課後になり、学校裏へ向かうと村上はまだ来ていない。一人で地図を見直し、鞄へしまう。ちょうど遠くから走ってくる村上の姿が見えた。

「じゃ、行くか。」

二人で頷き、目的の場所へ向かう。

この時平凡な日々が崩れるとは、予想もしていなかった。


ようやく着いた場所には何もなかった。少し失望感はあったが、当然だろうと諦めもついた。

「本当に何もないな。」

そう聞かれ、

「ああ。」

と、気の抜けたような返事をする。

「ガサガサ・・・。」

唐突に草村から物音がした。

「・・・・!」

二人で固まった。物音のした方をひたすら見続ける。一向に動きはない。意を決して、そっと近づいてみる。

「ごめんなさぁぁぁい!」

草村から目の前に髪の長い、背の低い女が現れた。

クラスメートだ。

「牧原、そこにずっと伏せていたのか?それ以前に、こんなとこで何をしてるんだ?」

明らかに不審なクラスメートを問いただす。

「あなたが走って学校裏に向かうところを見かけたから、付いてきたのよ!」

と、堂々と尾行を自白。

「何もしねぇよ。ただ来てみただけだ。」

適当にやり過ごすつもりが、

「うそを言わない!何か企んでることは分かってるのよ!」

疑われてしまった。仕方がないので追い返そうとした瞬間、視界に人影が映った。

「誰だお前。」

思わず口にする。

「あ、さっきの・・・。」

村上がそう言い、指を指す。

その女は、真っ黒なフード付きのマントを羽織り、顔はハッキリ見えない。

「レイラを救いたいか。」

そう問われた。妹のことだとすぐに理解した。俺の妹の名前は鈴蘭と書いてレイラと読む。

「鈴蘭は死んだんだ。何のつもりか知らないが、そんな話に俺は乗らな」

「助けたければここに貴様の名をかけ。」

途中で遮られた。渡された紙には契約書のように文字が書かれているが読めない。こんな文字が存在するのかすら分からない文字だ。

「こんな物に名前なんか書けるか。」

女に返そうとしたが、紙を見直して手が止まる。

文字が読めるようになっていた。

「甦戦争 エントリー・・・?」

そう呟いた俺の隣から、牧原と村上が顔を出して

「何言ってんだ?」

「何を言ってるの?」

と声をそろえて聞いてくる。

「お前たちには読めないのか?」

二人の前に紙を差し出すが、首を左右に振られた。

なぜか、俺にしか読めない文字。おそらく意味があるのだろう。そう思い、月島 麗音と名前を書いた。

「契約は成立した。」

そう女が言い、手をかざすと空間が裂け始めた。

「麗音、この中に入れ。」

そう言われ、自然と体は空間の割れた暗闇へと動く。

「待て月島、俺も行く。」

「レオ君、私も。」

二人が同時に言った言葉は、女により否定された。

「一人までなら認めよう。選べ、麗音。」

選択権を委ねられる。最も信頼を置ける村上を連れて行きたいが、残って欲しいと思った。

「村上、俺を信じて待っていてくれないか?」

俺は村上を残し、牧原と行くことを決めた。

「わかったよ、月島。明日の朝には戻れよ。」

村上なりの冗談に見送られ、

「どう考えても無理だろ。」

と、笑って手を振り牧原と暗闇へ向かう。

「良いんだな、牧原。」

最後に確認をするが、

「レオ君といたいから・・・。」

と、赤くなり、小声で何かを言う牧原。

「いま、なんて・・・。」

と、聞こうとしたが手を引かれ暗闇に二人で引きずり込まれる。


これが全ての元凶だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ