第8話 主演
私が主演のドラマは仙台がロケ地だった。なので私は当分仙台で暮らすことにした。パパと涼子さんは仕事で仙台に来られないので代わりにママが来てくれた。前とは違う私がいた。クランクインしてから今日は初めての休日だった。折角の休みなのでママと一緒にパパの小学校に行った。
「私ね、涼子さんのお見合いの時に分かったの。人としての価値観だったり、変な言い方だけど身分だったり。」
「ようするに真子が言いたいのは芸能人と一般人が結婚するのはおかしいということ?」
「そう思わない?パパと熊谷麻美がいい例だよ。実際にパパと熊谷麻美において、恋愛の立場が逆転していた。そうでしょ?」
「確かにね。良く映画とかでも恋愛の身分とかあるもんね。でも愛し合えばそれでいいと思うんだよね。私と優希の立ち位置は殆んど変わらないから分からないけど。時には我慢も大事よ。」
私は否定をしたかった。
「そうしたら熊谷麻美は死ななかったはず。それだけパパが強い人間だったんでしょ?パパは頑張ったんでしょ?熊谷麻美が生きていたら私は許さない。」
「もしかして結婚しないつもり?」
「うん。無理なものは無理なんだからさ。パパと涼子さんが証明してくれた。」
ママは残念そうな顔をしていた。
「1つ聞いて良い?真子を本当に好きになってくれた人の気持ちは?」
「有り得ないから。」
私のことを好きになる人がいるなんて100%ないな。
ホテルに戻り携帯電話を見たらメールがあった。上米良くんからだ。
“今俺も仙台にいるんだ。会わないか?”
“いいよ。なら東北の松っていう所に来て。”
私も東北の松に向かった。
東北の松に先に上米良くんが待っていた。
「仙台に来てたんだね。仕事?」
「まあね。真子ちゃん、少し話があるんだけど…。」
何?
「真子ちゃんと一緒にいるときだけ何でか緊張するんだ。信じてもらえないかもしれないけど、俺チャラくないし、女で遊ぼうとか思ってない。俺は真子が好きだ。本気で好きなんだ。」
しばらく空白の時間が流れた。
「………無理だから。本当に無理だから。私は恋愛なんてする気はないし、上米良くんも友達としか見られない。だから諦めて。私を思っているのなら諦めて。」
急に涙が出た。
「そんなことして傷つきたくないの。」
私は走ってホテルに帰った。
ホテルに戻り、シャワーを浴び終えて携帯電話を確認した。上米良くんからメールがきていた。
“さっきはごめん。真子の気持ちを考えないで。諦めるから今までみたいに普通にしてよな。”
私はどうすればよいのか分からなかった。仕事に専念するだけと自分自身に言い聞かせた。正直に言って私は告白への感謝など微塵にも感じなかった。 続く