第4話 訓練
映画撮影の合間に私と明花でバッティングセンターに行った。わたしは左打席に入り、明花は右打席に入って対面しながら打っていた。
「真子、調子悪い?」
「そんなことはないよ。私にスランプなんてものは無いから。」
「抱え込みすぎなんだよ。自分に厳しすぎ。」
私は空振りしてばかり。
「ママがね、恋愛しないと恋愛ドラマはできないよって言ってた。」
「あながち間違いではないと思うよ。」
「でも私、恋愛する気はないよ。」
やっとボールがバットに当たった。
「てか彼氏いない歴何年?」
「20年。残念な女でしょ。」
バッティングが終わって私たちはバッティングセンターを出た。
その後は2人で撮影現場に戻った。次のシーンは私が抱きしめるシーンだった。
「真子ちゃん、気持ち入った?」
「何でだろう?気持ちが入らない。」
上米良くんは撮影でもないのに私の唇にキスをした。
「な...何?」
「これで気持ちが入るでしょ?」
私の体の中が熱くなった。初恋の時を思い出したようだ。
「あ...ありがとう。」
しばらくして撮影が始まった。
[ちょっと待って。]
抱きしめる。
[あなたが好き。ずっと傍にいて欲しいの。]
[ごめん。お前の傍にはいられない。]
カットがかかった。何でか分からないけどフラれた気分だった。
「どうした?」
「フラれるってこんな感じなんだね。」
「分かってくれた?」
その日は大きな収穫だった。
夜、事務所で涼子さんとスケジュール調整をしていた。
「真子ちゃん、今日の演技良かったんじゃない?」
「今日は良い収穫が出来ました。反省もありましたけど…。」
「そっか。」
私は、ふと思い出した。
「涼子さん、これ。」
「何それ?」
私は写真を出した。
「お見合い写真です。涼子さん、結婚も考えてください。」
「余計なお世話。原田さんから?」
「パパが渡せって。」
「写真の人、案外カッコいいね。」
「確かに。まあ考えておいてくださいよ。」 続く